空調機(AHU)と外調機(OHU)の違いを紹介

こんにちは。

設備設計を始めたばかりの方もしくは大学院などでの研究にあたり空調に携わっている方。
特に空調の基礎がわからないような方にとってまず最初の難関となる点が以下だろう。

・空調機と外調機の違い

空調機と外調機はどちらも空調を行うための機器だ。
一見似通った空調機と外調機の何が異なるのかが理解できていない方が多いかと思う。

筆者も学生の頃に散々苦労して空調機と外調機の違いについて学んだ経験がある。
ある建物解析(建物の使われ方の解析運用実態)を行うことを研究材料として学んでいた。

その建物には空調機と外調機のどちらも見込まれていた。
ただ空調機と外調機の役割がどのように異なるのかが全く分からなかった。
どちらも機器も同じようにダクトで室内へ空気を供給している点が同じだったからだ。
当時お世話になっていた先生を含め色々な方に助けてもらいながら最終的に空調機と外調機の違いを理解できた。

自分と同じように困っている方がたくさんいるかと思う。
そのため本記事で空調機と外調機の違いを伝えられたらと思う。

今回は空調機と外調機のそれぞれの役割とその違いについて紹介する。

(参考)筆者が初めて設備設計を行ったときに最も活用した書籍を以下で紹介している。
気になる方は以下のリンクを確認頂ければと思う。

空調機と外調機の概要

最初に空調機と外調機の意味について紹介する。

略称正式名称英語の名称
空調機(AHU)空気調和機Air Handling Unit
外調機(OHU)外気処理空気調和機Outdoor Air Handling Unit

空調機の正式名称は空気調和機。
一方で外調機の正式名称は外気処理空気調和機だ。

空調機と外調機をそれぞれ比較するとどちらにも正式名称に空気調和機が含まれる。
一方で外調機のみに対して「外気処理」と記載される。

つまり外調機は外気を処理するための空調機を示す。
イメージとしては以下の通りだ。

名称説明
空調機室内の空気をぐるぐると循環させる。
循環させる過程で空気を冷やしたり暖めたりして空調を行う機械。
外調機外からの空気を室内へ取り込む。
室内へ取り込む過程で空気を冷やしたり暖めたりして空調を行う機械。

次項以降でさらに詳しく紹介する。

空調機のイメージと構成

空調機のイメージ

まずは空調機について紹介する。
図に空調機の断面イメージを示す。

空調機に接続されるダクト

空調機入口側には以下のダクトがそれぞれ接続されている。

空調機に接続されるダクト
OAダクトOutdoor Duct外気を取り込むダクト
RAダクトReturn Duct室内から空調機へ返ってくる(還気する)ダクト
SAダクトSupply Duct冷却加熱後の空気を空調機から室内へ供給するダクト

室内側の空気であるRA(還気)から戻ってきた空気を冷やしたり暖め、SA(給気)として室内へ供給することが大きな役割だ。

RAとSAがあることで空調が可能

SAとRAの関係性はいわゆるエアコンのようなものだ。
エアコンは室内の空気を吸い込んで冷却、加熱した空気を室内へ吐き出す。
つまり室内の空気を空調を行う機器を空調機と呼ぶ。

空調機の冷却、加熱プロセス

空調機の場合は以下の順番で空気を冷やしたり暖めたりする。

空調機により冷やしたり暖めたりするプロセス
1.室内からRA(還気)が空調機へ戻ってくる。
2.外部からOA(外気)を空調機へ取り入れる。
3.OAとRAがミックスされる。
4.OAとRAの混合空気を必要に応じ暖めたり冷やしたりする。
5.SA(給気)の空気が出来上がる。
6.SAを室内へ供給する。

空調機にOAダクトが接続される理由

一方でOAダクトで外気を取り入れている理由は何ぞや?となる方も多いだろう。
それもそのはずで空調だけを行うのであれば本来はRAとSAだけでよいはずだ。

それなのにもかかわらず空調機にOAを接続する理由を以下に紹介する。

空調機にOAダクトが接続される理由は大きく以下の2点だ。

空調機にOAダクトが接続される理由
1.シックハウス症候群防止のため
2.二酸化炭素濃度上昇抑止のため

シックハウス症候群防止のため

最近の建物では気密性が依然と比べより性能が向上している。
つまり気密性が高いことにより以下が成り立つ。

気密性が高い⇒室内の空気が壁等を通じて屋外へ逃げづらい

次に気密性が高いことで問題となることを以下に紹介する。

建物は様々な材料から成る。
その様々な建材からは有害物質が発生する。
それら建材からの有害物質を人が吸い込むことでシックハウス症候群を引き起こす。
(聞いたことがある方もいるだろう。)

シックハウスを予防するために

シックハウスを予防するためには換気を行う必要がある。
建築基準法に遵守した換気を行うことでシックハウスを予防することが可能だ。

また換気を行う必要がある要因はシックハウスだけではない。
室内の二酸化炭素濃度を下げるためにも外気の取入れが重要だ。
外気を定常的に取り入れないと室内の二酸化炭素濃度が上昇する。
人の健康上の理由から二酸化炭素濃度を以下の濃度以下とするような基準もある。
(建築物衛生法(ビル管法)で定められている)

室内の二酸化炭素濃度を下げるため

建築物衛生法(ビル管法)では居室の二酸化炭素濃度は1,000ppm以下とするよう定められている。

居室の二酸化炭素濃度
建築物衛生法(ビル管法)1,000ppm以下

外調機のイメージと構成

続いて外調機について紹介する。

外調機に接続されるダクト

空調機の時は3種類のダクト(OA(外気),RA(還気),SA(給気))が接続されていた。
一方で外調機の場合は以下のダクトが接続される。

外調機に接続されるダクト
OAダクトOutdoor Duct外気を取り込むダクト
SAダクトSupply Duct冷却加熱後の空気を外調機から室内へ供給するダクト

外調機の最も簡単な見分け方としてはダクトの接続本数だ。

外調機の冷却、加熱プロセス

外調機の場合は以下の順番で空気を冷やしたり暖めたりする。

外調機により冷やしたり暖めたりするプロセス
1.外部からOA(外気)を空調機へ取り入れる。
2.OAを必要に応じ暖めたり冷やしたりする。
3.SA(給気)の空気が出来上がる。
4.SAを室内へ供給する。

外調機の特徴

外調機の場合は必要な換気量のみの空気の処理しか行わない>場合がほとんどだ。

つまり必要最小限の空気(外気)しか冷やしたり暖めたりしない機器ということになる。

恐らく既に気付かれた方もいらっしゃるだろうか。

実は外調機は室内空気の空調を全く行わない。

外調機を導入する場合は必ずと言っていいほど室内の空気を冷やしたり暖めたりする機器を併せて見込む。
(一部例外もあるが)
そのため通常は
・ファンコイルユニット(通称FCU)が外調機とセットで見込まれることが多い。

FCUは室内を26℃にしたり22℃にしたりといった温度にするために使われる。
一方で外調機は外気を少しでも室内の環境に近づけるために空気を冷やしたり暖めたりして室内へ送風する。

(参考)ファンコイルがよくわからない方は以下を参照頂ければと思う。

空調機と外調機を空気線図で比較

空調機の場合の空気線図

空調機の場合の冷却プロセスを示す。

上図は夏期における空調機の冷却プロセス(冷却までの流れ)について示している。
前項でも少し紹介したが主なプロセスは以下の通り。

空調機により冷却するプロセス
1.室内からRA(還気)が空調機へ戻ってくる。
2.外部から①OA(外気)を空調機へ取り入れる。
3.OAとRAがミックスされる。(②)
4.OAとRAの混合空気を冷却する。
5.③SA(給気)の空気が出来上がる。
6.③SAを室内へ供給する。

空気線図にでわかる空調機の一つの特徴としては以下だろう。

冷房時空調機から供給されるSA(供給空気)は室内のエンタルピーよりも必ず低くなる

(暖房時の場合は室内エンタルピーよりも必ず高くなる。)

室内と同じ温度で吹き出していたら目標温度には絶対に近づかないからだ。

外調機の場合の空気線図

外調機の場合の冷却プロセスを示す。

前項でも紹介したが空調機とは異なりRA(還気)が存在しない。
そのため外調機の冷房の流れは以下の通りとなる。

外調機により冷却するプロセス
1.外部から①OA(外気)を空調機へ取り入れる。
2.①OAを冷却する。
3.②SA(給気)の空気が出来上がる。
4.②SAを室内へ供給する。

空調機と異なる部分としてRA(還気)がないことはすでに説明した通りだ。
だがそれだけではなく外調機からの供給空気も実は空調機と異なる。

外調機の場合は室内のエンタルピーと同一のエンタルピーで室内へ供給する。

外調機の空気線図が空調機の場合と異なるわけ

外調機の空気線図が空調機の空気線図と異なる理由は外調機はあくまでも外気しか処理しないからだ。
つまり室内の温度制御はさらに別の機器を用いる。
具体的にはファンコイルユニット(FCU)で行う。

例えば空調機同様に外調機からのSA(供給)の温度を室内エンタルピー以下にしたとする。

すると何が起こるかというとファンコイルがない場合でも室内が冷房されてしまう。
外調機側にはSA(供給)の温度を一定にする制御しかない。
そのため例え室内の温度が低下したとしても外調機は室内の温度を無視して運転を続ける。
もしこの時にファンコイルユニットを運転するとファンコイルユニットは現状の室内温度を室内の設定温度に近づけようとする。
結果ファンコイルユニットは暖房で運転、外調機は冷房運転を行うといった状況が発生する。

同一室内で冷房運転と暖房運転が混在するということはエネルギーの無駄遣いにつながる。


またそもそも設計の仕方によっては外調機は冷房、ファンコイルユニットは暖房といった運転ができないこともある。
例えば外調機によって室内温度が低下した場合に室内温度を設定温度まで戻す手段がないことになりかねない。

そのため外調機は室内のエンタルピーと同一の空気を室内へ供給することが多い。

補足:冷暖房同時運転の範囲

余談:外調機で過冷却を行うケース

なお例外的なケースとして最近では結露を理由に外調機とは言えども過冷却し結果一部空調を行うような役割をするケースも増えてきた。
(過冷却を行う一方である程度室内に発熱体(パソコンや人員など)で発熱を見込める場合に限る)
冷却を行えば行うほど湿度を低下させることができるので結露が発生づらくなるためだ。

但し気を付けなければならないことは先ほども紹介した通りだ。
外調機は室内の空調を行っているわけではない。
そのため過冷却すると室内温度がその分下がるリスクがあることには注意されたい。

補足:近年の湿度の推移

空調機と外調機のメリット

空調機のメリットとデメリット

ここまでで空調機と外調機の違いは分かったけど空調機と外調機のどちらを選択したらいいのかわからない方も多いだろう。

本項では空調機を設置することによるメリット、デメリットについて紹介する。

空調機の特徴
1.エアコン+換気を備えた巨大な空調機器
2.均一な空調を図るため原則1室に1台の空調機が必要
3.空調機は大きな空間1室を均一に空調可能

空調機は言い換えれば家庭用エアコンをかなり大きくした上に換気まで兼ねている巨大な機器と思っていただければいいだろう。

普通1台の家庭用エアコンを複数の部屋で兼用はしないかと思う。
各室によってどの程度室内が暑くなるかそれとも冷えるかが異なることが大きな理由だ。

例えば1台の部屋の家庭用エアコンを10部屋くらいで兼用した場合を想像しよう。
まず間違いなく10部屋のうちの何部屋かは暑かったり寒かったりする。
そしてその何部屋からかはクレームがあったり、エアコンの設定温度を勝手に変えたりする。
(よくオフィスの中にも勝手に事務所内の設定の温度を変える方がいるかと思う。)
すると今までは温熱感に問題なかった部屋の人がクレームを言い出すといった循環に陥る。

空調機は家庭用エアコンの巨大版であるため原則的に1室に1台必要だ。

空調機1台に対して2室、3室もあると各室の温度湿度が一様にならない可能性がある。

ここまで説明すると既に理解されている方もいるかと思う。
空調機の最大のメリットは大きな空間1室を均一に空調できることだ。

外調機のメリットとデメリット

次に外調機のメリットを紹介する。

外調機の特徴
1.室内の空調は行わない
2.外調機1台に対し何部屋にでも新鮮空気を供給可能

外調機はあくまでも外気の空気を冷やしたり、暖めたりする機械だ。

そのため室内の空調通常ファンコイルユニット(FCU)が行っている。

外調機からの供給される空気は室内の空調に関係ないことがほとんどだ。

つまり空調機の場合とは異なり外調機1台に対し何部屋を対象に空気を供給しても室内の空調に影響は発生しない。

外調機のメリット:外調機1台で複数室に空気を供給できること。

大空間1室であれば空調機1台をすぐ隣の室にでも置いて空調を行う方がよいだろう。
外調機+ファンコイルユニットだと外調機は1台で済むかもしれない。
だがファンコイルユニットの冷房、暖房の能力は家庭用エアコン並に小さいためファンコイルユニットは大量に設置することとなるからだ。

まとめ

今回は外調機と空調機の違いについて紹介した。
外調機と空調機の主な特徴は以下の通りだ。

外調機
1.外調機は外気を冷やしたり暖めたりするための機械
2.室内の空調を行う機械ではない
3.小部屋が多くある場合に便利
空調機
1.空調機は室内の空調を行うための機械
2.室内の空調を行う機械
3.大空間の室の空調が得意

空調機と外調機の違いをより理解するためには空調機単一ダクト方式とFCU併用方式についても理解することでよりそれぞれの違いを理解できるようになる。
空調機単一ダクト方式はいわゆる空調機を用いた空調方式。
FCU併用方式は外調機+FCUもしくは空調機+FCUによる空調方式だ。

また空調機や外調機の違いを明確に理解するためには空気線図の理解も必要不可欠だ。

コメント

  1. よっしー より:

    非常にわかりやすくて大変参考になりました。ありがとうございました。