建築設備を始めて間もない方。
まだ建築設備業界で働き始めて1年目2年目で右往左往している方。
はたまた何年も建築設備に従事されている方。
意外といろいろな方が知っているようで知らないような人員による必要換気量の奥深い部分について紹介することとする。
特に最近ではウイルス対策などにより換気量の重要性がかなり高まっている。
(ただ単に換気すればよいものでもないとは思うが)
そんな中様々な基準がある中で特に人による換気量について今回はその奥深さを紹介したいと思います。
必要換気量とは人に起因するもの、臭気に起因するもの、排ガスに起因するもの、はたまた熱に起因するものと様々な要因により換気が必要とされるケースがある。
特に人に起因する換気量は建築基準法をはじめ建築物衛生法による求め方や建築設備設計基準による求め方と多くの基準がある。
建築基準法による必要換気量
建築喜寿農場は特に室用途による人員数の規定は実は特にない。唯一記載があることが
必要換気量=20AF/N
但しAF=居室の面積[m2]
N=一人当たりの専有面積[m2/人]
とされている。
あくまでも建築基準法上に記載のある内容はNの一人当たりの専有面積が基本的にはN=10以下であることと集会場などの用途にあたってはN=3以下とすることと記載があるのみである。
即ちこれが意味することは一人当たりの必要換気量は20m3/h・人で最低でも居室については0.1人/m2以上で計算する必要があるということだ。
ただこれについても特記があり実況に応じて定めてよいとのことから実情としてある居室に対し想定される人員数がヒアリングなどのより事前に把握できている場合は特にN値は気にしなくてよいこととなる。
建築物衛生法による必要換気量
次に建築物衛生法(通称ビル管法)による一人当たりの必要換気量について。
建築物衛生法では一人当たり25m3/h・人と記載がある。
いわゆる保健所による指導によるものではあるが、通常事務所用途については0.15人/m2、会議室等については0.50人/m2で計算するよう指導する保健所が多い気がする。
問題なことが最近では25m3/h・人ではなくウイルスへの配慮から35m3/h・人と言われている自治体が存在することだ。
導入外気量が25⇒35へ増えるということは外気負荷が1.4倍になるということ。
1.4倍も増えれば基本的には全熱負荷の過半を占めている外気負荷が1.4倍になるため装置容量としてはただでは済まないくらいに負荷が大きくなる恐れがある。
負荷が大きくなるということはそれだけ熱源容量が上がってしまい、いわゆる省エネから逆行したことを行うこととなる。
ただし一方で近年の外気CO2濃度が上がっていることも否めないため法や条例はともかく35CMH/h・人程度を導入しないと理論的に1,000ppmにはならない計算になる。
(人員の作業内容にもよるが)
また保健所対応で注意したいこととしては平面図に建築図の家具関係(特に椅子がレイアウトされている場合は注意だ。)
いくら参考レイアウトとはいえ実際に席数x25CMHが満足できていないと建築確認申請時に指摘をもらうこととなる。
(そんなことにならないためにも基本的には家具は削除したうえで提出することが望ましい)
建築設備設計基準による必要換気量
次は建築設備設計基準による必要換気量について。
建築設備設計基準では30m3/h・人と呼ばれている。
物件にもよるが基本的には一人当たりの必要換気量を30CMHで実際に見込むことが多い。
単位外気量の設定と装置負荷の関係性
通常基本設計時は冷暖ともにだいたい200W/m2で見込むことが多い。
内訳として東京においては半分程度が外気負荷のため100W/m2が外気負荷となる。
その外気負荷を30CMH・人から25CMH・人にすると熱負荷は約80%となるため80W/m2。
一方で30CMH・人から20CMH・人とすると約65%となるため65W/m2。
従ってそれぞれの場合の全熱負荷は以下の通りだ。
20CMH・人の時・・・165W/m2
25CMH・人の時・・・180W/m2
20CMH・人の時・・・200W/m2
空調面積10,000m2の場合においてどの程度装置負荷に影響があるかを確認する。
20CMH・人の時・・・165W/m2x10,000m2=165kW
25CMH・人の時・・・180W/m2x10,000m2=180kW
30CMH・人の時・・・200W/m2x10,000m2=200kW
これだけ装置負荷が異なると室外機の番手も恐らく変わってくるだろう。
またパッケージの場合8万円/kW(室内機、室外機それぞれ4万円/kWと試算)とすると165kWと200kWの場合で280万円も初期費用が変わる計算となる。
まとめ
今回は規準毎による必要換気量の違いを紹介した。
特に建築設備設計基準では30CMHと建築物衛生法や建築基準法の数値より明らかに単位外気量が多い。
ただ単に外気量を少なくすることで省エネを図るのではなく快適性を図ったうえで省エネを行うことが大切だと考える。
快適性を損なわずに省エネを行うことが大切だ。
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