こんにちは。
空調といえば実に様々な空調方式がある。
その中でも中央熱源においては主に空調機や外調機、ファンコイルユニット(以降FCU)といった空調機器を用いて空調を行うことが多い。
各空調機器の特性上建物用途や室用途によって適切な空調機器は異なるわけだがその違いについてそもそもよくわからない方も多いかと思う。
例えば空調機と外調機の違いは一体何なんだろうかと考えこんでしまう方も多いだろう。
今回はその中でも空調機による単一ダクト方式と空調機とFCUを併用した空調方式について紹介する。
なお空調機と外調機の違いについては以下で紹介しているため参照されたい。
空調方式にはさまざまな種類が存在するが、最も一般的に採用されるものとして「空調単一ダクト方式」「空調機+ファンコイルユニット方式」「外調機+ファンコイルユニット方式」の3つが挙げられる。これらの空調方式は建物の用途や規模、室内の環境条件に応じて使い分けられることが多い。
「空調単一ダクト方式」は、空調機からの空調空気をダクトを通じて各室に供給し、空調を行う方式であり、特に大規模な空間に対し採用されることが多い。しかし、複数の室を対象として空調を行う場合、各室での温度が難しいことがある。
「空調機+ファンコイルユニット方式」は、空調機からの空調空気に加え、各部屋に設置されたファンコイルユニットで個別に空調を行う方式である。ファンコイルユニットを用いることで、室ごとの温度調整が可能となり、利用者の快適性が向上する。
「外調機+ファンコイルユニット方式」は、外調機が外気の処理を行い、ファンコイルユニットが室内の空調を担う方式である。外気負荷を外調機で処理するため、各室に設置されるファンコイルユニットで室内の空調を個別に行うことが可能となる。
空調方式の種類 | ||
---|---|---|
空調機 | A | 空調機単一ダクト方式 |
B | 空調機+ファンコイルユニット方式 | |
外調機 | B | 外調機+ファンコイルユニット方式 |
空調機単一ダクト方式
空調機単一ダクト方式は、空調機からの空調空気をダクトを通じて各室に供給する方式である。空調機単一ダクト方式では、ファンコイルユニットなどの追加空調機器を空調対象室内に設置する必要がなく、水配管を各室に敷設する必要がない点が特徴である。そのため、配管の施工範囲を狭めることが可能となり、漏水リスクが低減されると同時に、室内の設計自由度が高まる。
空調機単一ダクト方式の最大の利点は、室内環境を均一に保つことができる点である。空調機から供給される空気は一元的に管理されるため、特に大空間で特に効果を発揮する。均一な空調が可能であるため、快適性が維持されやすく、大規模な施設でも安定した空調を実現できる。
一方で、この方式にはいくつかの課題も存在する。1台の空調機で複数の室を空調する場合、室ごとの用途や熱負荷が異なると室内に温度ムラが生じる可能性がある。例えば、窓際の部屋と内側の部屋では外皮負荷が異なるため、同じ空気を供給しても快適さに差が出ることがある。
さらに、空調機単一ダクト方式は改修時にも利便性を発揮する。室内に水配管が存在しないため、改修工事が容易であり、レイアウト変更がスムーズに行える。
空調機+ファンコイルユニット方式
空調機+ファンコイルユニット方式は、空調機で一次空気を処理し、各室にダクトを通じて供給する一方で、ファンコイルユニットが室内の調整を担うハイブリッドな空調方式である。この方式は、室の位置や負荷条件に応じて空調機とファンコイルユニットの能力比を考慮することで、適切な空調を実現することが可能である。
特に、ファンコイルユニットは、外皮負荷が大きく変動しやすいペリメーター(建物外周部)に設置されることが多い。ペリメーターでは、季節や時間帯によって温熱感の影響を大きく受けるため、細かな温度調整が求められる。ファンコイルユニットはその都度、冷水または温水を使って室温を調整するため、外皮負荷に迅速に対応し、快適な環境を維持することが可能である。
一方で、インテリア(建物内部)に関しては、外気の影響を受けにくく、室内負荷が大きく変動することは少ない。インテリア部分は人の出入りや照明、OA機器などによる発熱が主な負荷要因であるが、これらの負荷は比較的安定しているため、大掛かりな温度調整は必要とならない。
外調機+ファンコイルユニット方式
外調機+ファンコイルユニット方式は、外調機で外気処理を行い、各室にダクトを通じて新鮮な外気を供給する方式である。一方で、各室の温度調整はファンコイルユニットが担い、室内の冷暖房負荷に応じた空調が行われる。この方式は、換気と空調の役割を明確に分けることにより、柔軟な空調が可能となる。
外調機の主な役割は換気であり、外気を室内に取り込む際に温湿度を調整することが求められる。特に外気が高温多湿である夏期や、寒冷な冬期には、外調機によって外気の温度や湿度を適切に処理するしたうえで室内へ供給する。
一方で、ファンコイルユニットは各室に設置され、室内の冷暖房を担う。ファンコイルユニットは冷水または温水を用いて室内空気を冷却・加熱しする。ファンコイルユニットごとに独立した温度調整が可能であり、利用者のニーズに応じた細かな空調が実現できる。
空調方式のメリットとデメリット
空調機単一ダクト方式、空調機+ファンコイルユニット方式、外調機+ファンコイルユニット方式には、それぞれ異なる特徴があり、設計段階においては各方式のメリットとデメリットを十分に理解する必要がある。
空調機単一ダクト方式
空調機単一ダクト方式は、空調機から供給された空気をダクトを通じて各室に送り込むシンプルな方式であり、室内に水配管を設ける必要がないため、漏水リスクを抑えることができる。特に改修時には水配管がないことで施工が容易であり、柔軟な対応が可能となる。しかし、複数の部屋を1台の空調機で賄うため、室ごとの負荷差が大きい場合には温度ムラが生じやすく、均一な空調が難しい点が課題となる。
空調機+ファンコイルユニット方式
空調機+ファンコイルユニット方式は、空調機で処理した空気を各室に供給しつつ、ファンコイルユニットによって室内の温度調整を行う方式である。空調機+ファンコイルユニット方式では、外皮負荷が大きく変動するペリメーターゾーンにファンコイルユニットを配置し、インテリアゾーンは空調機で一括して空調する運用が一般的となる。個別の温度管理がしやすい反面、室内に水配管を敷設する必要があり、漏水リスクがある。また、ファンコイルユニット自体の設置スペースも必要となる。
外調機+ファンコイルユニット方式
外調機+ファンコイルユニット方式は、外調機で外気を処理し、各室に一次空気を供給しつつ、室内の温度調整はファンコイルユニットが担う方式である。この方式では、換気と空調が分離されているため、室内環境の安定化が図りやすく、快適性が向上する。ただし、ファンコイルユニットの数量がそれなりに必要となることが多いため、初期費用が高くなり、維持管理の手間も増加する。
空調方式比較表
1台の空調機で複数室を空調する場合
例えば時間と日により人員が変化するような室があったとする。
基本的に空調機は人員やその他室内発熱に応じて計画をするためそれから外れ各居室の室内発熱量のバランスが異なってしまうとある居室では寒かったりまた異なる室では暑いといったことが発生する可能性がある。
均一に各室内の熱負荷が時間毎や日毎により同じ傾向となる場合は空調機からの吹出温度を変化させてあげれば解消可能だ。
一方で各室の熱負荷が時間毎や日毎により異なる傾向を示す場合は注意が必要だ。
最近ではVAVといった吹出空気量を変化させるような装置もあるが制御にも限度はあるので極力制御に頼らず根本的な部分で解決する方がよいだろう。
室内の水配管
続いてはFCU併用方式とする場合のデメリットとなる水配管についてだ。
FCUを設置するということは室内の空気を冷やしたり暖めたりするための冷温水配管を室内まで供給する必要があるということだ。
特に改修時が大変で水配管を扱うと工事がより大掛かりとなりやすい。
イメージしてみるとわかりやすいだろうが空気だけを扱うダクトと他の室にもつながっている水配管の工事のどちらが容易だろうか。
もちろんダクトの方が楽だ。
他にもFCU設置室に特別な機器(重要機器)などが室内に設置される場合は配管からの漏水のリスクを抱えることとなるためまず室内に水配管を計画しないことが望ましい。
もちろんFCUの利点は各室毎に室内温度をコントロールできることにあるがそれ相応にデメリットも存在するのでよく考えてからどの空調方式とするのか判断いただければと思う。
まとめ
今回は空調機による単一ダクト方式と空調機とFCUを併用した空調方式の違いについて紹介した。
いずれかの空調方式が単に劣っているわけではなく空調方式毎にメリットデメリットがあるためそれぞれを総合的に判断すればある建物、ある室に適切な空調方式を決定できるだろう。
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