こんにちは。
機械設備図を始めてみると本当に様々な設備に関する図面を作成する必要があると思い知らされるだろう。
その中でも表で記載されている図面をかなりの枚数になることがほとんどだ。
平面図や系統図は見た目で接続されている機器類の位置関係が理解しやすいためさほど悩むこともないだろう。
だが表の場合はなぜこの数値が記載されているのかなどわからないことも多い。
特に制気口リストの各数値は前提となる知識がないと理解が難しい。
今回は制気口リストの作り方を紹介する。
今回制気口リストを作成するにあたり上図を使用することとする。
本図の作成方法は以下の記事で紹介しているため気になる方は参考に頂ければと思う。
制気口リストを作成する前に
制気口リストを作成する前にまず行うべきこと。
それは各室の風量を今一度整理することだ。
例えば上図のような制気口リストをひな型を作成する。
左側の表には各室の室名と風量を記載した。
なお見やすさを考慮してとりあえず流入側だけの制気口リストを作成した。
制気口リスト作成の手順
前項で紹介した制気口リストを基に制気口リストの作り方を紹介する。
①制気口の形
制気口の形を決める必要がある。
例えば給気であればVHSやVH等、吸込みであればHSやGVSだろう。
その他にも遠くまで気流を飛ばしたい場合であればノズル形、意匠性に配慮する場合はライン形等様々な器具が考えられる。
今回は一律VHSとした。
VHS入力後は以下のようなイメージとなる。
なお記載していない部分は制気口を通じて室内へ流入しない室を示している。
(本来は該当しない室は記載不要だ)
(参考)制気口の種類について詳しく知りたい方は以下の記事を参考に頂ければと思う。
②制気口の数量
次に制気口毎の風量を算定するため各室の制気口の数量を確認する必要がある。
平面図に記載されている制気口の数を拾えば問題ない。
平面図内□の中にバツ印が記載されているシンボルが流入側(外気取入れ側)の制気口だ。
制気口リストに反映すると以下となる。
③制気口1個あたりの風量
制気口の数量と室内への流入風量から制気口1個あたりの風量を算定する。
制気口1個あたりの風量[m3/(h・個)] = 風量[m3/h] ÷ 制気口数量[個]
④制気口面風速
制気口の面風速の設定値は設計者によりさまざまだ。
筆者の場合はVHS、HS等一般的なユニバーサル形制気口であれば2.0m/sとすることが多い。
なお気流を遠くまで飛ばす必要があるノズル形やライン形制気口はそれぞれ到達距離を考慮して決定すべきだ。
但しパスダクトの場合は面風速を下げる必要がある。
パスダクトはファンを持たない。
そのため空気が自然流入、流出することとなる。
従って面風速が速いほどパスダクトから空気が流出入せずに扉などの隙間から空気が流出入する可能性が高まる。
筆者の場合はパスダクトに接続される制気口の面風速は1.5m/sで計画することが多い。
⑤開口率
開口率は制気口の種類毎に大きく異なる。
また同じユニバーサル形制気口を使用した場合でもメーカーにより異なることがあるため注意が必要だ。
特に指定がない場合は70%程度で計算しておけば問題ないだろう。
ライン形制気口やノズル形制気口を使用する場合は到達距離で制気口の大きさを決めることとなるため開口率は無視して構わない。
⑥制気口寸法
前項までで整理した情報からまず制気口に必要な開口面積を求める。
以下の式で制気口必要開口面積を求めることが可能だ。
制気口必要開口面積[m2] = 単位風量[m3/(h・個)] ÷ 3,600[s/h] ÷ 面風速[m/s]
次に開口率を考慮した制気口必要有効開口面積を求める。
制気口必要有効開口面積[m2] = 制気口必要開口面積[m2] ÷ 開口率[%]
制気口の寸法は制気口必要有効開口面積を満たした寸法となればよいこととなる。
例えば最も大きな事務室で確認する。
制気口必要開口面積[m2] = 500[m3/(h・個)] ÷ 3,600[s/h] ÷ 2.0[m/s] = 0.070[m2]
制気口必要有効開口面積[m2] = 0.070[m2] ÷ 70[%] = 0.100[m2]
つまり事務室の場合は以下の制気口寸法から選定可能だ。
【制気口寸法】
200 x 500 (0.100m2)
250 x 400 (0.100m2)
300 x 350 (0.105m2)
上記制気口寸法以上であれば面風速2.0m/s以下を確保可能だ。
従って制気口を正方形にしたい場合は例えば 350 x 350 としてもよい。
今回は全て正方形とした場合における制気口の寸法を記載する。
(参考)以下でも制気口の大きさの計算方法を紹介しているため詳しく知りたい方はご確認頂ければと思う。
⑦制気口BOX寸法
空気の整流のため制気口には制気口BOXをセットで設ける。
制気口BOX寸法は左図の通り求めることができる。
なお図中の150mmは設計者により100mmとすることもあれば200mmとすることもある。
今回の事務室を例として紹介する。
平面図より事務室のダクト径は250φだ。
また前項での計算により制気口寸法は350 x 350となる。
上図に当てはめると
W’ = 350mm
D’ = 350mm
H’ = 250φ(mm)
となる。
従って
W = W’ + 150mm = 350 + 150 = 500mm
D = D’ + 150mm = 350 + 150 = 500mm
H = H’ + 150mm = 250 + 150 = 400mm
となる。
同じ要領で他室も計算すると以下の通りとなる。
(参考)制気口ボックスの算定方法についてより詳しく知りたい方は以下の記事を参考に頂ければと思う。
⑧グラスウール
制気口の内側にグラスウールを設置するかどうかも決定する必要がある。
このグラスウールは保温も兼ねている。
しかしどちらかというと消音のために設置することが主目的となる。
とくにファンから発生する騒音を気にするような室はグラスウールを設置することをお勧めする。
またその他にもパスダクトを設ける場合にクロストークが発生する可能性がある。
クロストークを気にする必要がある室はグラスウールを設置するべきだ。
細かな減音量はメーカーへ確認頂くこととされたいが基本的に25mm厚のグラスウール(40K)で十分だろう。
完成した流入側の制気口リストが以下だ。
⑨制気口(流出側)
参考までに流出側の制気口リストも以下に紹介する。
前項までの計算方法を用いて制気口(流出側)も算定した。
⑩その他
その他の項目として欄外に制気口の仕様を特記する場合がある。
例えば制気口の色を指定する場合だ。
制気口に限らないが色を指定する時点で別途費用が必要となるため必要に応じ特記する必要がある。
例えば以下の内容を特記する。
・指定色
・結露防止形
・落下防止ワイヤー
・風量調整機能
まとめ
今回は制気口リストの作り方を紹介した。
制気口は一般の方の目に触れやすい場所に設置されることが多い。
そのため比較的クレームにもつながりやすい。
本記事をきっかけに根拠をはっきりとした上で制気口リストを作成して頂ければと思う。
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