こんにちは。
最近ではZEBやカーボンニュートラルといった省エネ関連の専門用語がかなり浸透しつつある。中堅設計者くらいの方は比較的それらの用語を理解されている。
ただ設計始めたての頃はこれらの専門用語がわからないことも多いはずだ。
そもそも省エネどころか設計の基本すらわからないことが普通だろう。
近年では先ほど紹介した省エネに加え建築設備関連について様々な新たな技術が次々と見出されている。
もともと建設業界は”建築について一生学ぶ必要がある”と言われるほど次々と新たな技術が生まれる。
そんな中建築設備の基礎の習得にひたすら時間をかけていては新たな技術に自分自身が埋もれてしまう。
今回は建築設備初心者の方向けかつ建築設備をいち早く習得されたい方にお勧めの本を紹介する。
建築設備計画基準および建築設備設計基準は(一社)公共建築協会より出版されている。
特に官庁案件(国の建物)は原則これらの書籍(建築設備計画基準および建築設備設計基準)を根拠として設計が行われることが多い。
各書籍は約3年に1回程度更新され○○年版といった形で出版される。
これらの書籍の特徴を以下に紹介する。
【建築設備計画基準】
・建築設備計画基準は主に基本計画~基本設計の期間に用いられる。
・本書に記載の内容は主に以下の通りだ。
①各設備機器の特徴
②各省エネ技術の特徴と採用の考え方
③設計についての基本要件や傾向
④空調や衛生の機器類に係る必要面積
⑤機器類のメンテナンスに必要なスペース 等
設備設計の大半は特に設備機器類の必要面積の部分を実際によく目にすることになる。
特に実施設計が始まるまでに建築の平面、断面プランを確定させなければならない。
つまり基本設計時にこれらの設備機器類に必要な面積を確定させる必要がある。
比較的建設業界で広く知れ渡っている建築設備計画基準および建築設備設計基準を根拠とすることで、設備機器の必要なスペースについて誰もを納得させることができる。
(特に意匠設計者は設備スペースを縮めたがる傾向がある)
(参考)搬入スペースについて知りたい方は以下を参照頂きたい。
【建築設備設計基準】
・建築設備設計基準は主に基本設計~実施設計の期間に用いられる。
・主に設計を行うにあたり守らなければならない基準が記載されている。
・本書に記載の内容は主に以下の通りだ。
①各設備機器類の選定に必要な計算式
②計算に必要な計算根拠
③設計にあたっての必要な基本要件 等
・最近のトレンドである換気であれば例えば以下の通りだ。
>居室に必要な換気量は20m3/h・人
>倉庫等の換気回数は5回/h
>WCの換気回数は10回/h
・その他にも厨房からの局所排気については例えば以下が記載されている。
>扱う厨房機器からの発生熱量と厨房フードの水平投影面積から求める排気風量の大きい方を採用する。
(参考)換気関連についてより知りたい方は以下を参照されたい。
建築設備設計基準を用いることで設計全体の整合や考え方の整合を図るうえで非常に参考になる上に計算根拠にもなる。
またもし施主側から計算根拠を問われるかもしれない。
その時に一般に用いられている書籍(建築設備設計基準)を根拠とすることで施主側の設計に対する不安も解消される。
空気調和衛生工学便覧 空気調和設備編、給排水衛生設備編
次に紹介する書籍が空気調和衛生工学便覧だ。
本書は以下に示す計5冊で構成される。
①基礎編
②機器材料編
③空気調和設備編
④給排水衛生設備編
⑤計画施工維持管理編
そのうち筆者がおすすめする書籍は特に“③空気調和設備編”と”④給排水衛生設備編”だ。
残りの3冊は機械設備設計者としては1度流し読みでもすれば十分だろう。
本書に記載の内容は主に以下の通りだ。
①全体の設計の流れ
②各設備方式のメリットとデメリット
③各設備方式の特徴および詳細説明
④設備計画の注意点 等
上記の内容についてかなり細かく説明されていることが特徴である書籍だ。
具体的には本書内でかなりの数の参考書や論文などを扱っている。
そのため各設備方式についての詳細説明がかなり説得のある説明となっている。
本書の具体的な使い方(例)としては以下のとおりだろう。
・建築設備計画基準、建築設備設計基準に記載のない内容についてさらに具体的に知りたい場合。
・各設備方式の特徴や注意点を深く知りたい場合。
建築設備手帖
建築設備手帖の大きさはわずか 13cm x 9.5cm x 2cm(厚み) とかなりコンパクトな書籍となっている。
(ちなみに大活字版として一回り大きなサイズの書籍も販売されている。(内容は変わらない)
手帖とあるだけあって書籍の最初の方は1年分の手帖が綴られている。
本書の特徴は以下の通りだ。
①書籍の大きさが非常に小さいため持ち運びが容易。
①配管材料、厚みやダクトの概要
②各機器についての計算方法
(建築設備設計基準ベース)
③法規や申請関連、省エネ計算やBELS等についての概要
④積算の労務単価や材料単価、公共料金の単価 等
その他にも例えば空調設備であれば年間全負荷総統運転時間や用途別冷暖房負荷の概略値などが記載されている。
実用的な使い道としてはクライアントとの打ち合わせ等による外出時や現場で何か困ったときに使用するべき書籍だ。
本手帖はあくまでも各技術情報について概要くらいしか掲載されていない。
そのため特に職場等、書籍が充実している場所では建築設備設計基準や空気調和衛生工学便覧等詳細に書かれている書籍を使用するべきだろう。
(手帖よりも詳細に書かれている書籍を使用するべきだろう。)
(参考)建築設備手帖に興味がある方は以下のリンクを参照されたい。
まとめ
今回は建築設備初心者の方向けかつ建築設備をいち早く習得されたい方にお勧めの本を紹介する。
特にこれから始めて設計を行われる方からすれば不安だらけだろう。
今回紹介させて頂いた書籍を活用してそんな不安を少しでも解消できればと思う。
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