こんにちは。
建築設備業界へ関わり始めた方、特に新入社員の方は換気ダクト図とは何ぞや?と頭を抱えていることだろう。
上司からはダクト図を作成してくれと言われる一方でダクト図なんかみたことないぞ?という方が多いことだろう。
それもそのはずでダクト図を解説している書籍がほとんどない。
つまり調べたくても調べる手段がないことが実情だ。
今回は換気ダクト図(設計図)の描き方を紹介する。
なおダクトについて全く分からないという方。
本稿上部のプルダウンリストにダクトの基礎知識をまとめている。
(ダクト講座一覧と記載のある部分)
必要に応じ適宜ご確認頂ければと思う。
今回ダクト図の描き方を紹介するにあたり使用する建築図は左図の通りだ。
あるオフィスの基準階を対象とする。
構成としては図面左側がコアであり、右側には事務室や会議室が並ぶ。
(各室へアクセスする扉が無いことや、内壁が太すぎること、避難関係の法規、その他意匠的な問題には目を瞑ってほしい。)
換気計算書
ダクト図を描く前にまずは換気量を整理する必要がある。
換気量の決定には通常換気計算書が用いられる。
左側に各室の一般諸事項を記載する。
主に以下の4種類が必要となる。
・室名
・室面積
・天井高さ
・室容積
次に必要換気量を求める。
必要換気量の求め方にも種類があるので紹介する。
①人員密度(人員数)による必要換気量
②換気回数による必要換気量
③シックハウスによる必要換気量
なお本来であれば建築基準法で定められている必要換気量(法定換気量)についても記載が必要だ。
だが実際には①の人員密度(人員数)による必要換気量で必要換気量自体はまず満足するため今回は省略する。
(計画通知や建築確認申請時に法定換気量20Af/N(一人当たり20m3/h以上の換気量が確保できているという計算書のこと)による確認が行われる。
(参考)換気量についてより詳しく知りたい方は以下の記事を参考に頂ければと思う。
各室の換気量と換気計画
前項で紹介した換気計算書だけだと実際にどの室にどの程度の換気を見込めばよいのかわかりづらい。
そのため先ほど紹介した換気計算書に基づき、平面図へ各室の必要換気量を転記した。
次に行うべきことが換気計画だ。
まずは大まかにどこから空気を取り入れて、どの方位へ排気を行うかを確認する。
外気取入れの位置と排気の位置が近すぎるとショートサーキットとなってしまうため注意が必要だ。
(ショートサーキットとは外気取入れ口より建物からの排気を再度吸い込んでしまうことをいう。)
大まかな換気計画を決めたら次はエアフロー図を作成する。
どの部屋からどの部屋へ空気が流れるかを示した図となる。
全てが第1種機械換気(給気排気ともファンを用いる方式)であればよいが、省エネを考えると少しでもファンの数量を減らしたいところだ。
(参考)換気種別についてより詳しく知りたい方は以下の記事を参考頂ければと思う。
上図の場合は以下の通りの換気種別となる。
第1種機械換気:小会議室1~3、大会議室、社長室
第2種機械換気:事務室、休憩室
第3種機械換気:倉庫、便所、SK
第1種機械換気を採用した理由は以下の通りだ。
会議室:定常的に使用されない室であるため、音漏れによるクロストークを防止したいため
社長室:音漏れによるクロストークを防止したいため
上記を配慮した上で省エネ化を図る。
倉庫や便所を第3種機械換気とし、事務室、休憩室を第2種機械換気とすると外気取入れ量が若干不足する。
そのため今回は事務室への外気取入量を80m3/h増加させた。
ダクト図の作成
上記を踏まえてルート図を作成すると左図のようになる。
各線が示すダクトは以下の通りだ。
茶線:外気取入ダクト
紫線:排気ダクト
緑線:パスダクト
パスダクトとはある部屋とある部屋の空気を移動させるために用いる。(ダクトでそれぞれの部屋を繋ぐ)
そのため今回は事務室と休憩室にそれぞれパスダクトを設けることとした。
また図中DGという用語がある。
注記したがドアガラリを示す。
ドアガラリもパスダクトと同様にある部屋とある部屋の空気をやりとするために用いる。
どちらを採用するかは意匠担当者と都度調整が必要だ。
なおその他にもアンダーカットという方法も存在する。
(参考)ドアガラリとアンダーカットについてより詳しく知りたい方は以下の記事を参考頂ければと思う。
先ほど作成したルート図に機器と制気口を追加した。
□の中にひし形で書かれている機器が全熱交換器、□の中に〇が二つ書かれている機器がファンになる。
制気口は□の中に×と記載があるものが吹出口、□の中に斜線が一本記載があるものが吸い込み口となる。
(参考)制気口の設置位置についてより詳しく知りたい方は以下の記事を参照頂きたい。
各機器に機器番号を追加した。
機器番号により機器の仕様と各シンボルの紐づけを行う。
機器の仕様は別途機器表を作成することが多い。
また機器番号については機器番号の見やすさを考慮し平面図の外側に記載することが多い。
図中HEUは全熱交換器、FSは外気取入ファン、FEは排気ファンとした。
(各機器の凡例は通常機器表を別途作成の上機器の仕様を定義することが普通。)
なお全熱交換器はHEUの他にHEXやHEAなどと記載されることもある。
外気取入れ側の外壁部はガラリとしてみた。
(実際には意匠担当との打ち合わせが必須)
それぞれOAG-1~OAG-4と定義した。
ガラリ自体は建築工事で行われることが多いかと思うがガラリチャンバーは設備工事となることが多い。
そのためガラリチャンバーの仕様を機器表もしくは平面図内に特記する必要がある。
今回はダクト図の描き方を紹介するため排気側は全てベントキャップにすることとする。
その前にまずはダクトのサイズを定義する必要がある。
(参考)ガラリの役割を知りたい方は以下の記事を参考頂きたい。
各ダクトにダクトサイズを付記した。
今回は規模が小さいということもありスパイラルダクトのみだが矩形ダクトの場合もスパイラルダクトの場合と同様にダクトサイズを記載する必要がある。
注意されたい部分としてはそれぞれのダクトにまんべんなくダクトサイズを付記するということだろう。
ダクトサイズが記載されていない部分があるとどのダクトの大きさで施工をしなければならないかがわからなくなる。
(参考)ダクトの大きさの決め方は以下の記事を参考にしていただければと思う。
ダクトサイズを決めた後はベントキャップを順次記載していく。
ベントキャップは半円のようなシンボルで記載される。
またベントキャップのサイズ、材質、形等を明示する必要がある。
見た目に影響する部分となるため意匠設計者との調整が必須な項目だ。
次にダンパーを順次追加する。
今回のプランで使用するダンパーはVDとFDだ。
(FDの設置位置紹介用に防火区画を追加した。)
防火区画は平面上赤太線で記載されている。
防火区画を貫通するダクトにFDを追加していく。
次にVDを記載する。
ファンの吸込側にVDを追加する。
このVDは竣工前に風量を調整するために設けられる。
(参考)ダンパーの役割について知りたい方は以下の記事を参照頂ければと思う。
最後の仕上げは注記の部分を仕上げることだ。
各会社の特記仕様書にもよるが基本的に以下について特記仕様書、機器表、ダクト図のいずれかに記載する必要がある。
・ダクトの材質
・ダクトにシールを行う範囲
・フレキシブルダクトの使用範囲
・ダクトの保温
・各略語の凡例
・平面図に記載しているダクトの高さ
(天井なのか、床下なのか)
等
まとめ
今回は換気ダクト図(設計図)の描き方を紹介した。
本記事を参考に基本的なダクト図の描き方を学び、実務に生かして頂ければと思う。
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