こんにちは。
最近何かとよく話題に上がることが多い換気量。
設計時においては適切に計画をしないと建築確認申請時に指摘が入る項目の一つだ。
必要換気量は室用途により異なり、人員数による換気量の他、臭気等の発生室はその用途に見合った換気量で計画することが必要だ。
今回は室用途毎の必要換気量の計算方法について紹介する。
居室に必要な換気は主に人に対してであることが多い。
建築基準法で求められるシックハウス対策や建築物衛生法の室内CO2濃度等に基づき必要換気量が決定される。
その他にも建築設備設計基準に記載の必要換気量で計算を行うことも多い。
人に対しての換気であるため通常は人員数や人員密度を用いて換気計算を行う。
(シックハウスだけは人に対してではなく空間に対して換気計算を行う。)
①シックハウスによる必要換気量
シックハウスによる必要換気量は以下の式で求められる。
住宅等の居室:必要換気量[m3/h] = 室面積[m2] x 天井高[m] x 0.5[回/h]
その他の居室:必要換気量[m3/h] = 室面積[m2] x 天井高[m] x 0.3[回/h]
住宅等の居室の場合は0.5回換気以上、その他の居室の場合は0.3回以上の換気が求められる。
例えば室面積100[m2]、天井高2.7[m]の事務室の場合を想定する。
シックハウスに必要な換気量は140m3/hとなる。
(1の位は切り上げとしている。)
室面積50[m2]、天井高2.3[m]の事務室の場合であれば
シックハウスに必要な換気量は60m3/hとなる。
(1の位は切り上げとしている。)
②人員密度による必要換気量
設計時においては各室の実人員数が決定されてないことが多々ある。
その際に換気計算に用いられる変数が人員密度だ。
人員密度は人/m2で表される。
1m2あたりに人が何人であるかを示した指標だ。
室用途 | 人員密度 |
---|---|
事務室 | 0.15人/m2 |
会議室 | 0.50人/m2 |
講堂 | 0.70人/m2 |
食堂 | 0.80人/m2 |
例えば建築設備設計基準に記載の人員密度を紹介する。
図のように事務室であれば0.15人/m2で会議室であれば0.50人/m2となる。
室用途 | 人員密度 |
---|---|
教室 | 0.50人/m2 |
食堂 | 0.50人/m2 |
職員室 | 0.20人/m2 |
研究室 | 0.20人/m2 |
また省エネルギー基準に準拠した算定・判断の方法および解説に記載の人員密度を一部紹介する。
学校用途であれば教室および食堂は0.50人/m2、職員室や研究室は0.20人/m2となる。
人員密度により必要換気量を計算する式は以下の通りだ。
必要換気量[m3/h] = 面積[m2] x 人員密度[人/m2] x 単位必要換気量[m3/h・人]
(単位必要換気量については後述)
例えば面積100[m2]、人員密度0.15[人/m2]、単位必要換気量30[m3/h・人]であれば
必要換気量は450m3/hとなる。
(1の位は切り上げとしている。)
また面積50[m2]、人員密度0.50[人/m2]、単位必要換気量25[m3/h・人]であれば
必要換気量は630m3/hとなる。
(1の位は切り上げとしている。)
③人員数による必要換気量
人員数が明確な場合は人員数から直接必要換気量を計算することができる。
例えば建築図に机や椅子のプロットがされている場合だ。
例えば事務室であれば机もしくは椅子の数量を数えれば事務室内に滞在が想定される人員数がわかる。
前項で紹介した学校の教室についても同様だろう。
通常教室の場合は定員が決められているはずだ。
定員が決められている場合については定員を人員数として計算しても問題ない。
人員数により必要換気量を計算する式は以下の通りだ。
必要換気量[m3/h] = 人員数[人] x 単位必要換気量[m3/h・人]
例えば人員数10[人]、単位必要換気量30[m3/h・人]であれば
必要換気量は300m3/hとなる。
(1の位は切り上げとしている。)
また人員数5[人]、単位必要換気量25[m3/h・人]であれば
必要換気量は130m3/hとなる。
(1の位は切り上げとしている。)
(参考)単位必要換気量について
本項での紹介にあたり単位必要換気量を紹介した。
ここでいう単位必要換気量とは一人当たりに必要な換気量のことを指す。
なお各基準により必要な換気量が異なる。
建築基準法 = 20 m3/h・人
建築物衛生法 = 25 m3/h・人
建築設備設計基準 = 30 m3/h・人
興味がある方は以下のリンクでさらに詳しく紹介しているため参考にしていただければと思う。
臭気発生室等に必要な換気量
次にトイレなどにおける臭気が発生する室に対する必要換気量の計算方法について紹介する。
前項までとは異なり人員に対する換気量ではない。
そのため室内の換気回数で必要換気量を決定することがほとんどだ。
(参考)換気回数について詳しく知りたい方は以下のリンクをご参考に頂ければと思う。
①便所、倉庫等に必要な必要換気量
室用途 | 換気回数 |
---|---|
トイレ | 10回/h |
更衣室 | 5回/h |
倉庫 | 5回/h |
シャワー室 | 5回/h |
建築設備設計基準によればトイレは10回/h)換気とされている。
(厳密には5回~15回換気のため中央値を記載している)
また更衣室や倉庫、シャワー室等の場合は5回/hとなる。
換気回数による必要換気量は以下の式で求めることができる。
必要換気量[m3/h] = 室面積[m2] x 天井高[m] x 換気回数[回/h]
例えば面積20m2、天井高さ2.4m、換気回数10回/hであれば
必要換気量は480m3/hとなる。
(1の位は切り上げとしている。)
また面積100m2、天井高さ4.2m、換気回数5回/hであれば
必要換気量は2,100m3/hとなる。
(1の位は切り上げとしている。)
②電気室等発熱がある室に必要な換気量
電気室等発熱が発生する室にも換気が必要だ。
(冷房で発熱を処理する場合は除く)
必要換気量は以下の式で求められる。
必要換気量[m3/h] = (3,600 x 発熱量[kW]) / (( 1.2 x ( 室内許容温度[℃] – 設計外気温度[℃]))
なお室内の許容温度は40℃と設定されることが多い。
例えば発熱量5kW、設計外気温度が30℃の場合は
必要換気量は1,500m3/hとなる。
(1の位は切り上げとしている。)
また発熱量10kW、設計外気温度36℃の場合は
必要換気量は7,500m3/hとなる。
(1の位は切り上げとしている。)
③水分が発生する室に必要な換気量
例えば屋内プールの設計等では発生水分量を考慮して換気量を決める必要がある。
水分量による必要換気量は以下の式で求められる。
必要換気量[m3/h] = (3,600 x 水分発生量[kg/h]) / (( 1.2 x ( 室内許容湿度[kg/kg] – 設計外気湿度[kg/kg]))
例えば水分発生量が1kg/h、室内許容湿度が0.015kg/kg、設計外気湿度が0.005kg/kgの場合は
必要換気量は300,000m3/hとなる。
(1の位は切り上げとしている。)
CO2濃度から必要換気量を求める
CO2濃度により必要換気量を求める方法もある。
(通常あまり使われないかとは思うが)
作業程度 | CO2吐出量 |
---|---|
安静時 | 0.013m3/h・人 |
極軽作業 | 0.022m3/h・人 |
軽作業 | 0.030m3/h・人 |
中等作業 | 0.046m3/h・人 |
重作業 | 0.074m3/h・人 |
※空気調和衛生便覧
空気調和衛生工学便覧によれば作業程度によりCO2の吐出量が異なる。
安静時であれば0.013m3/h・人であり、重作業時の場合は0.074m3/h・人まで大きな開きがある。
また建築設備設計基準によれば女子は表の値の90%、児童は表の値の50%程度のCO2吐出量となる。
例えば屋内プールの設計等では発生水分量を考慮して換気量を決める必要がある。
水分量による必要換気量は以下の式で求められる。
必要換気量[m3/h] = CO2吐出量[m3/h・人] / (許容CO2濃度[m3/m3] – 外気CO2濃度[m3/m3]) x 人員数[人]
例えばCO2吐出量が0.015m3/h・人、許容CO2濃度が0.001[m3/m3] 外気CO2濃度が0.0004[m3/m3]、人員数が100人の場合は
必要換気量は2,500m3/hとなる。
(1の位は切り上げとしている。)
まとめ
今回は室用途毎の必要換気量の計算方法について紹介した。
必要換気量を求める方法は多岐にわたるが建築基準法に関わる部分もある。
そのためこれらの違いをマスターされることをお勧めする。
本稿で紹介した換気量計算ツールのダウンロードは以下のリンクより確認頂ければと思う。
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