こんにちは。
空調業界に従事したばかりの方には特に聞き慣れていない用語であるエンタルピー。
一体どんなものであるかわかるだろうか。
そもそも目に見えないものを扱う時点でなかなかイメージも沸きにくいといったこともあるが横文字であるだけでわからないものがさらにわからなくなることもしばしばある。
今回はそんなエンタルピーについて基本的な意味からエンタルピーの使用方法を紹介する。
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エンタルピーとは物質が持つエネルギーのことだ。
例えば人もエネルギーを持っていてだいたい一人あたり100W程度のエネルギーを持っている。
分かりやすい例だと照明もエネルギーを持っていて1台あたりおよそ40W程度のエネルギーを持っている。
上記で紹介した人や照明以外の物質についてもエネルギーは基本的に存在している。
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空気もエネルギーを持っている。
例えば26℃で50%の空気については空気1kgあたり53kJ(約15W)のエネルギーを持っている。
またこの1kgあたりのエネルギー量を比エンタルピーと呼ぶ。
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またさまざまな温湿度による空気の持つエネルギー量は可変する。
例えば10℃50%であれば20kJ/kgといったエネルギー量となる。
また33℃80%であれば100kJ/kgといったエネルギー量となる。
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また2種類以上のエネルギー量を持つ空気等が混合されることで各空気のエネルギーをやり取りすることとなる。
例えば10℃50%(20kJ/kg)の空気と33℃80%(100kJ/kg)が1:1の割合で混同することで21.5℃90%(60kJ/kg)となる。
相対湿度が90%となる理由については以下を参照されたい。
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先ほどの例は2種類の空気が自然に混合される場合について紹介した。
続いて強制的に空気を冷却する場合について紹介する。
エアコンの吸込空気の温湿度を33℃℃80%(100kJ/kg),出口温湿度を21.5℃90%(60kJ/kg)とすればエアコンの内部で40kJ/kgのエネルギー量のやり取りがあったことになる。
そのエネルギー量を強制的に操作するものがエアコンなのだ。
エアコンの中には空気を冷やしたり暖めたりするための熱交換器と呼ばれるものが組み込まれている。
空気と室内機と室外機を循環している冷媒管が熱交換器部分にてエネルギー量をやり取りすることで空気を温めたり冷やしたりするわけだ。
比エンタルピーの用途
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生データのダウンロードはこちらから。
多くの用途がある比エンタルピーの用途を今回は2つ例を紹介する。
まず例1だが前項でも紹介したエアコンについてだ。
先ほどの例を取り上げれば暖かい空気が33℃℃80%(100kJ/kg),冷たい空気を21.5℃90%(60kJ/kg)とする。
その際のエアコンの風量が1,000m3/hであればエアコンの冷房能力は1.2 x 1,000 x (100-60) = 13.3kWとなる。
本稿では細かくは言及しないが上記のようにエンタルピーを用いて計算が可能だ。
より細かく知りたい方は以下から参照されたい。
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生データのダウンロードはこちらから。
続いて例2を記す。
外気負荷を計算するためにもエンタルピーを使用する必要がある。
例えば33℃80%100m3/h(100kJ/kg)の空気を室内の26℃50%(53kJ/kg)に取り込む際の外気負荷は以下で求められる。
1.2 x 100 x (100 – 53)=1.6kWとなる。
外気負荷についてより深く知りたい方は以下を参照されたい。
空気線図で見るエンタルピー
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前項の例1を記す。
赤枠で囲った部分が比エンタルピーだ。
また黒線でそれぞれ記載している部分が各温湿度を示す。
比エンタルピーの部分を確認するとそれぞれ100kJ/kg,60kJ/kgとなる。
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例2についても同様だ。
各比エンタルピーの部分を確認するとそれぞれ100kJ/kg,53kJ/kgとなる。
空気線図の読み方についてより知りたい方は以下の記事を確認頂ければと思う。
まとめ
今回はエンタルピーについて基本的な意味からエンタルピーの使用方法を紹介した。
目に見えないものを扱うためなかなかイメージしづらい部分もあるかと思うが本記事を境に徐々に空調用語に慣れていただければと思う。
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