こんにちは。
比較大規模な物件の場合建物内に排煙設備を設ける場合がある。
例えば病院といった用途の場合や建物のフットプリントが大きく外壁に面していない室で100m2を超える居室の場合など様々だ。
よほどの特殊な要件を除き大抵の場合は機械排煙とせず原則全館自然排煙で計画されることが普通だ。
というのも万が一の時を除いてそもそも使いもしない排煙設備にお金をかける理由がそもそもないからだ。
そんな中でも排煙設備を設ける場合における排煙風量の算出方法および排煙機能力の算定方法を紹介する。
図中に今回の検討モデルを示す。
各居室が機械排煙の対象室となっており各室間で防煙区画が形成されている。
各室の面積は室A:100m2,室B:70m2,室C:50m2とした。
【各室の排煙風量の求め方】
各室の面積(m2)に対し60m3/(h・m2)の係数を乗じて算出された数値が各排煙口に必要な風量となる。
従って各室の必要排煙風量は以下の通りだ。
室A:100m2 x 60m3/(h・m2) = 6,000CMH
室B:70m2 x 60m3/(h・m2) = 4,200CMH
室C:50m2 x 60m3/(h・m2) = 3,000CMH
【各排煙風量合算後の風量の求め方】
通常機械排煙がある場合は2室以上機械排煙の対象室があることが多々ある。
その場合に隣接する2区画の合計風量を2室合流後に見込む必要がある。
上記の文章だけだとよくわかりにくいので以下に例を紹介する。
室Aと室B合流後については室Aの風量6,000CMH + 室Bの風量4,200CMH = 10,200CMHとなる。
上記のような形で各隣接区画間の合計風量をそれぞれ算定する。
【各排煙風量合算後の風量の求め方 – 注意点 – 】
ここで注意されたい点も紹介する。
室C合流後の合計風量は今までの原理原則にのっとれば以下となる。
室Bの風量4,200CMH +室Cの風量3,000CMH = 7,200CMHとなる。
但し図示の場合だと室Aが排煙機がある側から最も遠い区画であり室Cが排煙機から最も近い区画となる。
そのため室A+室Bの排煙風量が室B+室Cの排煙風量よりも大きい場合は室C以降についても室A+室Bの排煙風量を採用することとなる。
室C合流後のダクトについても室A+室Bの排煙風量がダクト内を通過することになるからだ。
【排煙区画が隣接しない場合の各排煙風量合算後の風量の求め方】
図のように室Bが自然排煙の場合は隣接する機械排煙の区画が存在しないこととなる。
そのため室C合流後の排気ダクトの風量は室Aもしくは室Cの大きい方の風量となる。(図の場合は6,000CMH)
ダクトサイズの算定
ダクトのサイズは前項の排気風量を基にダクトのサイズを算定する。
面風速については建築設備設計基準によれば15m/s以下、建築基準法については20m/sで計画を行う。
ダクトを算出する際に比較的容易なこちらのフリーソフトを使用すると即座にダクトサイズを算出可能なため大変便利だ。
排煙口の大きさ
排煙口の面風速は8m/s以下を目安として計算を行う。
また排煙口の開口率はメーカーにより異なるが90%で見込んでおけばまず問題ないだろう。
前項で紹介したフリーソフトを用いるとダクトサイズと同様に排煙口のサイズも算出が容易だ。
排煙機の能力の算定
排煙機の風量は図示の通り最大防煙区画から求められた風量に2倍を乗じさらに余裕係数を1.1倍した風量とする必要がある。
(隣接する区画が存在する場合)
また機械排煙の区画が1しかない場合は最大防煙区画から求められた風量に1.1倍の余裕係数を乗じることで問題ない。
なお余裕係数自体は任意ではあるが現場に入り万が一風量を確保できないなど問題をあらかじめ抑止するためにも余裕係数は見込んだ方がよい。
従って一番最初の図によれば排煙機の風量は以下の通り。
室A: 6,000CMH x 2 x 1.1 = 13,200CMH
また室Bを自然排煙とした場合には隣接区画がなくなるため
室A: 6,000CMH x 1.1 = 6,600CMH ⇒ 7,200CMH
ここでまた一つ注意事項がある。
排煙機の風量の最小値は7,200CMHと決められている。
そのため計算した風量が7,200CMHを下回っていた場合は自動的に7,200CMHとなる。
まとめ
今回は排煙設備を設ける場合における基本的な排煙風量や排煙機の選定の方法について紹介した。
排煙設備はある程度大規模な物件にならない限りはなかなか見かけること自体がないかとは思うが計算自体はそう難しくはないのでこれを機に覚えていただければと思う。
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