【設計者必見】病院等特定の用途で推奨される差圧の計算方法を紹介

こんにちは。

設計を始めると病院や研究施設などの空気の流れを気にしないといけない建物を設計することがあるかと思う。
これらの建物は感染や危険物質の暴露といった観点から空気の流れについて特に丁寧に扱わなければならない。
極端なことを言えば空気を吸うだけで感染してしまうような細胞を扱う場合だ。
そんな室が外部に対して正圧(陽圧)になってしまっていると隣室へ空気が漏洩してしまう。
隣室にいた人がその空気を吸ってしまうととんでもないことになる。
そういったことを防ぐために設計者は空気の流れを考えたうえで設計を行う必要がある。
そのためにも空気の流れと差圧について基礎的な部分を理解する必要がある。

今回は空気の流れについて基本的な考え方と必要な差圧ついて紹介する。

基本的な空気の流れ

こちらに示す図は病室の病室と隣接する廊下における空気の流れだ。

例えば病室を負圧(陰圧)にして計画する場合を紹介する。

①外調機により空気を廊下へ吹き出す。
②廊下から病室へパスダクトやガラリ(アンダーカット)により病室へ自然と空気が流入する。
③病室内へ空気が供給される。
④排気ファンにより病室から屋外へ排気する

上記のように計画することで病室内は常に排気ファンにより室内の空気が負圧(陰圧)となる。

もし外調機からの空気が直接病室へ供給された場合は隣室の廊下と等圧もしくは正圧(陽圧)となる。
(廊下の空調方式にもよるが)

対象室を負圧(陰圧)としたい場合は原則として自然に外気の取入れを行う必要がある。
(局所排気装置等が設置されている場合等は全体の設備計画を鑑みて計画する必要がある。)

差圧による影響

次に陰圧とするべき室とその隣室との間に必要な圧力差(差圧)について紹介する。
CDCガイドラインによれば陰圧とするべき室は2.5Pa以上の差圧を設けるよう指針がある。

1Pa = 1N で 1N/m2 ≒ 0.1kg/m2 である。
そのた
2.5Pa = 2.5N/m2 ≒ 0.25kg/m2 となる。

例えば片開き戸を開ける場合を考える。
差圧がない場合に片開き戸開けるために必要な力(圧力)を約15N ≒ 1.5kg/m2 とすると
幅:900mm x 高さ:2,100mm = 1.89m2 の扉を開けるためには
1.5kg/m2 x 1.89m2 = 2.8350kg となる。

一方で圧力差 2.5Paを加味すると
幅:900mm x 高さ:2,100mm = 1.89m2 の扉を開けるためには
(1.5kg/m2 + 0.25kg/m2) x 1.89m2 = 3.3075kg となる。

室を負圧(陰圧)とするかどうかで約500gも扉を開けるために必要な力(圧力)が変わることになる。

(通常病院では引き戸であることが多いと思うので扉の開閉に必要な力(圧力)は気にする必要はないが。)

差圧を発生させる方法

続いて差圧の見込み方について紹介する。
よく言われることが
「差圧を取るためには排気の風量、給気の風量を増やせばいいんでしょ」
という内容だ。

これはあながち間違いではない。
例えばすでに竣工して運用している建物に対して、さらに差圧を発生させる場合は決して間違ってはいないだろう。
ただ設計者であれば当然新築の建物も計画する。
とすると設計者は最初からどのようにして差圧を発生させるかを考える必要がある。

例えば完全密閉の室に排気ファンを設けた場合。
完全密閉の室なので排気ファンが空気を排出しても自然に流入する空気は存在しない。
とすると排気ファンがいくら吸っても吐き出さなくなる時が負圧(陰圧)の最大値となる。
だが実際にはそんな設計はしないだろう。
必ずどこかからドアガラリやパスダクトを用いて自然に空気が流入するように計画を行うはずだ。

大抵の場合排気ファンはその室に必要な風量を屋外へ排出する。
そのため唯一差圧を調整できるところといえばドアガラリやパスダクトということになる。

ドアガラリやパスダクトの大きさを調整することで設計上は差圧を確保する。

ただ当然だが実際にその扉を開閉した時は室圧は隣室と均衡してしまう。
(どんな手法を用いたとしても両室によほどの圧力差がない限りはほとんどのケースで等圧になる。)

2.5Paを確保するために

前項で差圧を発生させるためにはドアガラリかパスダクトのサイズ調整を行うべきと紹介した。
本項ではどのようにして差圧を2.5Pa確保する方法を紹介する。

室内外の圧力差は以下の式で求められる。

室内外圧力差[Pa] = 1/2 x 空気密度(通常1.2)[kg/m3] x 風速の二乗[m^2/s^2]

今回は 室内外圧力差[Pa] > 2.5Pa としたいので以下の通りとなる。

2.5[Pa] = 1/2 x 空気密度(通常1.2)[kg/m3] x 風速の二乗[m^2/s^2]

並べ替えると
風速の二乗[m^2/s^2] = 2.5 / 0.5 / 1.2 = 4.167 となる。
この状態だと風速の二乗のままなので 4.167の平方根は 2.042m/s となる。
つまりパスダクトやドアガラリ部分で風速が 2.042m/s 以上あればよいこととなる。

ここからは本題から外れるがもし室内外圧力差を 5.0[Pa]としたい場合であれば

5.0[Pa] = 1/2 x 空気密度(通常1.2)[kg/m3] x 風速の二乗[m^2/s^2]
風速の二乗[m^2/s^2] = 5.0 / 0.5 / 1.2 = 8.334
√8.334 = 2.887m/s となる。

まとめ

今回は空気の流れについて基本的な考え方と必要な差圧ついて紹介した。
建物用途によりだが空気の流れや差圧について考えなければならないときがあるかと思う。
その時や本内容や専門書籍を徹底的に読み漁り設計に生かしていただければと思う。

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