様々な空調機の仕様 -除湿・加湿方式や熱交換器付空調機等を紹介

こんにちは。

中央熱源方式を採用する際には、ほとんどの場合、空調機を導入することとなる。
空調機の導入にあたって、空調機メーカーのカタログを確認すると、実際には様々な空調機がある。
そのため、設計初心者の方は、どの種類の空調機を導入するべきか判断できない場合が多いだろう。

今回は様々な空調機器の種類について紹介する。

空調機を構成する部品

空調機は主に「フィルター」「熱交換器」「コイル」「加湿器」「ファン」などの様々な部品により構成される。
要求される設計条件に合わせてこれらの部品を組み合わせることで空調機の仕様を選定する。
なお、下表に記載している潜熱顕熱分離は厳密には部品ではなく、空調機の方式のことを指している。

空調機を構成する部品
フィルタープレ、中性能、高性能、HEPA、折込形、自動巻取り
熱交換器有無
コイル2管式(冷温水)、4管式(冷水・温水)
除湿方式冷却除湿、吸着除湿(デシカントローター)
加湿器水加湿、蒸気加湿
ファン送風機、送風機・還風機
潜熱顕熱分離潜熱顕熱分離空調機、デシカント空調機

一般的な空調機

なお、最も一般的な空調機は「プレフィルター+中性能フィルター」「2管式」「冷却除湿」「水加湿」「送風機」を有する空調機であろう。

空調機の各部品

フィルター

フィルターは大きく、下表に記載のとおり「プレフィルター」「中性能フィルター」「高性能フィルター」「HEPAフィルター」といったフィルターがある。
他にも塩害地域で使用される除塩フィルターなどもある。
室内側より求められる空気環境により、どのフィルターを使用するかを決定する。
一般的な事務所ビルではプレフィルターと中性能フィルターがセットで用いられることが多い。

①フィルターの種類
Aプレフィルター比較的大きな粗塵を捕集するためのフィルター。
粗じんフィルターともいう。
B中性能フィルタープレフィルターでは取り除けない細かい塵埃を捕集するフィルター
C高性能フィルター中性能フィルターでは取り除けない塵埃を捕集するフィルター
DHEPAフィルター空気中の微粒子を捕集する高性能なエアフィルター

熱交換器

熱交換器を用いることで、排気と外気の熱交換を行うことが可能となり、環境負荷の低減につながる。
結果外気取入れ空気温湿度が室内温湿度に近づくため、外気負荷を低減することが可能となる。
空調機に対しては、一般的に回転型熱交換器が用いられることが多い。

熱交換器導入のメリットは上記のとおりだが、デメリットとしては、空調機本体が肥大化することである。
熱交換器ならびに還気ファンを空調機内に組み込む必要がある。
そのため、結果として空調機が大きくなり、必要な機械室面積が増大する。

②熱交換器
A空調機の還気と外気取入れ空気を熱交換する事が可能。
B 外気を直接導入し、コイルで冷却・加熱を行う。

2管式と4管式

冷水と温水が同時に供給されるかどうかの違いが2管式と4管式の違いである。
2管式は冷水もしくは温水のどちらか一方しか供給されない。
その一方で、4管式の場合は、冷水と温水が同時に供給されることが特徴である。
一般的な事務所ビルでは2管式が用いられることが多い。

4管式のバリエーションとしては、左図が考えられる。
例えば、冷水コイルの凍結防止を考慮する場合は、温水コイルをOA側へ設置する必要がある。
また、凍結防止を考慮したうえで、冷却後に再熱を行いたい場合は温水コイルを冷水コイル後に設置する必要がある。

③コイルの種類
A2管式
(冷温水コイル)
1台のコイルで冷房および暖房を行うコイル。
冷温水コイル内には冷水もしくは温水しか流せない。
B4管式
(冷水・温水コイル)
空調機内に冷水コイルと温水コイルを設置。
そのため、冷水と温水の両方を同時に使用可能。

冷却除湿と吸着除湿

空調機を採用する際には大きく2種類の除湿方式がある。
1つ目が一般的に用いられることが多い、冷却除湿である。
空気の温度が下がるほど、空気中に保持可能な水分量が低下する。
この性質を利用することで、空気を冷却し、除湿を行う方式である。
一方で吸着除湿とは、吸着剤を用いて湿度を強制的に取り除く方法となる。
イメージとしては、空気が乾燥剤を通過すると考えればよいだろう。
乾燥剤により、空気から湿気が取り除かれていく。
結果、空気が除湿されているということになる。

④除湿の種類
A冷却除湿冷却コイルにより、空気を冷却し除湿を行う方式。
B吸着除湿吸着剤(デシカントローター)を用いて除湿を行う方式。

水加湿と蒸気加湿

加湿方式についても大きく2種類に大別される。
1つ目は一般的に用いられることが多い、空気に水を噴霧する加湿方法である。
水加湿の特徴としては、加湿前後で比エンタルピーが変わらないことである。
一方で、蒸気加湿はエンタルピーが上昇することが特徴である。
蒸気加湿を行う場合は、蒸気を発生させるボイラーなどが必要となる。
一般的に水加湿よりも蒸気加湿のほうが精度が高いため、病院のクリーンルーム等、主に室内温湿度(特に湿度)の要求が厳しい室に対して用いられることが多い。

⑤加湿の種類
A水加湿水を用いて加湿を行う方式。
B蒸気加湿蒸気を用いて加湿を行う方式。

ファン

ファンの形式についても複数考えられる。
一般的には送風機のみが設置されることが多い。
しかし、送風機のほかに還風機も設置されることがある。
還風機が設置される理由としては、主に「静圧が不足する場合」「排気のルートも確保する場合」「全熱交換器を採用する場合」が挙げられる。

⑥ファンの種類
A送風機SA側に送風機を設置。
B送風機+還風機SA側に送風機、RA側に還風機を設置。

潜熱顕熱分離

潜熱顕熱分離空調機

今まで紹介した空調機の構成とは異なる空調機も存在する。
潜熱顕熱分離空調機は顕熱系統と潜熱系統で構成される空調機である。
潜熱系統では外気を冷却・加熱し、顕熱系統では室内空気を冷却・加熱する。
その後、顕熱系統と潜熱系統の空気を混合し、室内へ供給する。

デシカント空調機

更に複雑な空調機の構成としてデシカント空調機がある。
デシカント空調とは吸着除湿を行う空調機である。
冷房時においては、外気を予冷したうえで、デシカントローターで水分を吸着する。
吸着後に室内空気と混合し、再度冷却を行い、室内へ供給する。
暖房時においては、十分に加熱を行った後にデシカントローターを通過する。
デシカントローター通過後、加湿を行う。
その後、室内空気と混合し、再度加熱を行い、室内へ供給する。

まとめ

今回は様々な空調機器の種類について紹介した。
各空調機の部材について理解することで、適正な空調機を選定できるようになるだろう。

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