こんにちは。
空調設備や換気設備を計画するうえで制気口の計画は必須だ。
いくら能力を満足する機器やファンを持っていたとしても制気口の考え方ひとつで建物内の快適度は大きく変わる。
例えば制気口の風量(面風速)が大きすぎた場合。
面風速が大きいほど人が制気口からの風を感じる可能性はどうしても高くなる。
そのため制気口周辺に滞在している人からすれば暑い、寒いといった不快感を感じる。
空調設備や換気設備は人が何も感じることなく快適だと思わせられるかどうかが重要だ。
今回は必要風量の算定から制気口の大きさまでにおける一連の計算方法を紹介する。
本編に入る前に対象室の風量の確認方法について少しだけ紹介する。
(基本的な風量の計画方法がわかっていないとこの後の内容が理解できないので。)
風量が変動する要因は以下のとおりだろう。
・室面積、室容積、室用途
居室の場合は室面積が大きくなるほど人員数が増加する。
非居室の場合は室面積や容積が増加するほど必要風量が増加する。
またトイレといった室用途の場合は一般に10回換気が求められるため風量が増加する。
室面積、室容積、室用途を確認した上で対象室の風量を確認する。
今回のモデルケース
今回使用するモデルケースは図の通りだ。
室面積が100m2で人員数は15人とした。
一人あたりの換気量は30m3/h・人とした場合対象室に必要な風量は以下となる。
30m3/h・人 x 15人 =450m3/h
今回はこの450m3/hの風量を用いて制気口をどのように計画するかを計画する。
なお今回は2種換気とし以下の通りとする。
給気:対象室内への給気を行う。
排気:扉側から隣室(今回は廊下と仮定する)へパスダクトにて計画することとする。
制気口の位置、数量
制気口の位置や数量については設計者の判断で決めてしまって問題ない。
ただ以下の点だけは注意されたい。
室内の空気がある程度均一に循環されるような位置に制気口を設置すること。
例えば同一方位に給気と排気の制気口を設けたのでは室内の空気は循環しないだろう。
そのため例えば以下の通りとすることが望ましい。
給気と排気が逆の方位に計画されているため比較的室内全体の空気が循環しやすい。
なお先ほどの説明したが制気口の数量や位置は設計者判断による。
そのため本図はあくまでも一例となる。
(補足)制気口の位置は以下のリンクを参考に決めることが望ましい。
興味がある方はご確認いただければと思う。
制気口毎の風量
次に制気口毎の風量を設定する。
給気風量は全体で450m3/hだ。
今回は制気口を2個設けることとして計算する。
制気口1個あたりの風量は
450m3/h ÷ 2個 = 225m3/h・個となる。
パスダクト用の制気口も給気側と数量が同じであるため同じく 225m3/h・個となる。
制気口の大きさ(給気)
まずは給気側から確認する。
前項より風量は225m3/hだ。
通常制気口の面風速は2.0m/s ~ 3.0m/sの間で選定する。
そのため基本的に面風速を2.0m/sとして計算すれば問題ないだろう。
次に制気口の開口率についてだ。
一般的なVHSやGVS(VS,HS,VH等も同様)は開口率70%を超えるものがほとんどだ。
そのため開口率は70%で計算すれば十分だろう。
これらの与条件が揃った後に次は制気口に必要な面積を算出する。(必要面積)
計算式は以下の通りだ。
必要面積m2 = 風量m3/h ÷ 3,600s/h ÷ 面風速m/s ÷ 開口率%
今回の例でいえば以下の通りだ。
必要面積m2 = 225m2 ÷ 3,600s/h ÷ 2.0m/s ÷ 70% =0.045m2
つまり0.045m2の大きさを満たす制気口を計画すればよいこととなる。
例えば正方形であれば 250x 250 の制気口となる。
長方形であれば以下のとおりだろう。
150×300、200×250、250×200
これらの中から制気口の大きさを選択すればよい。
制気口の大きさ(パスダクト)
次にパスダクト側の制気口の大きさを求める。
求め方自体は先ほど同じだ。
唯一給気側と変わる点が面風速だろう。
通常パスダクトの場合は面風速を1.5m/sにて計画する。
(パスダクトはファンを持たないため面風速を上げると実際にパスダクト側から吸気されないことが理由)
先ほどと同じように制気口の必要面積を算出すると
必要面積m2 = 225m2 ÷ 3,600s/h ÷ 1.5m/s ÷ 70% =0.060m2 となる。
つまり0.060m2の大きさを満たす制気口を計画すればよいこととなる。
例えば正方形であれば 250x 250 の制気口となる。
長方形であれば以下のとおりだろう。
150×400、200×300、250×250
これらの中から制気口の大きさを選択すればよい。
(余談)制気口を一つにした場合
余談だが制気口を一つにした場合を確認する。
一枚目の写真が給気の場合を示す。
風量が450m3/hとなり正方形の制気口を設置する場合は300 x300 となる。
次に二枚目の写真がパスダクトを想定した場合だ。
同じく風量が450m3/hで正方形の制気口を設置する場合は350×350となる。
まとめ
今回は必要風量の算定から制気口の大きさまでにおける一連の計算方法を紹介した。
たとえ制気口のサイズと風量があっていないとしても設計時、施工時には問題になりづらい。
ただ建物の運用が始まってからクレームにつながりやすいため注意が必要だろう。
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