こんにちは。
普段全く気にすることがないドレン排水。
当然トイレやシャワーの排水量よりも明らかにドレンの排水量は少ない。
そんなドレン排水だがふとした時にドレンの排水量はどの程度のものなのだろうか等考えたことはないだろうか。
ドレンとは言いつつも冷房時には絶え間なく排水が発生する。
今回はドレンの排水量の試算方法について紹介する。
(参考)ドレン排水を浸透桝に排水する場合の浸透量算定方法は以下の記事を参考されたい。
ドレン排水はよく冷房時に発生する。
図の通り冷房時においてはエアコンの中に設置されている熱交換器部分で室内の空気と室内機と室外機を繋いでいる冷媒が熱交換を行う。
その熱交換を行う家庭で室内の空気が冷やされる。
空気が冷えることにより冷えきれなくなった空気がドレンとして水分となり現れる。
逆に暖房時にはドレン排水が発生することはない。
これは冷たい空気に含むことができる水分の方が少なく、逆に暖かい空気に含むことができる水分の方が多いからだ。
そのため暖めたとしてもより水分を空気中に含むことができる状況となる。
そのため暖房時には結露が起こらない。
ドレン排水量の算出方法
ドレン排水量は以下の式で求められる。
ドレン排水量[kg/h] = 空気密度[kg/m3] x 風量[m3/h] x 絶対湿度差[kg/kg]
【室内負荷分】
例えば絶対湿度差が0.005[kg/kg]で風量が1,000[m3/h]の場合におけるドレン排水量は
1.2[kg/m3] x 1,000[m3/h] x 0.005[kg/kg] = 6[kg/h] = 6[L/h] = 0.10[L/min]となる。
【外気負荷分】
例えば外気絶対湿度と室内設定絶対湿度差が0.001[kg/kg]、風量が1,000[m3/h]の場合は
ドレン排水量 = 1.2[kg/m3] x 1,000[m3/h] x 0.001[kg/kg] = 1.2[kg/h] = 1.2[L/h] = 0.02[L/min]
となる。
【全熱負荷分】
全熱負荷分のドレン量 = 室内負荷分のドレン量 + 外気負荷分のドレン量
となるため 0.10 + 0.02 = 0.12[L/min]となる。
各機器の風量一覧
建築設備設計基準によればパッケージエアコンの室内機の能力別風量は以下の通りだ。
パッケージエアコン機器能力[kW] | CK-2 風量 | CK-4 風量 | CID 風量 |
---|---|---|---|
冷房能力2.2kW | 480m3/h | 530m3/h | 480m3/h |
冷房能力2.8kW | 540m3/h | 750m3/h | 480m3/h |
冷房能力3.6kW | 540m3/h | 750m3/h | 570m3/h |
冷房能力4.5kW | 600m3/h | 870m3/h | 648m3/h |
冷房能力5.6kW | 660m3/h | 930m3/h | 780m3/h |
冷房能力7.1kW | 870m3/h | 1,240m3/h | 1,140m3/h |
また同じく建築設備設計基準におけるファンコイルユニットの能力別風量は以下の通りとなる。
ファンコイルユニット | CK-2 風量 | CID 風量 |
---|---|---|
FCU-300 | 480m3/h | 420m3/h |
FCU-400 | 640m3/h | 560m3/h |
FCU-600 | 960m3/h | 840m3/h |
FCU-800 | 1,280m3/h | 1,120m3/h |
絶対湿度差の確認
特殊な室用途でない限りは設計室内温湿度は26℃50%とすることが一般的だ。
(クールビズの場合は28℃45%となる。)
その際の絶対湿度は以下の通りだ。
なお極端な例だが参考として22℃50%の際の絶対湿度を掲載しておく。
室内温湿度 | 絶対湿度 |
---|---|
26℃ 50% | 0.0105kg/kg |
28℃ 45% | 0.0107kg/kg |
22℃ 50% | 0.0082kg/kg |
次に室内機からの吹出温湿度の設定について紹介する。
パッケージエアコンやファンコイルユニットでは約12-13℃差程度で吹き出すことが一般的だ。
そのためそれぞれの室内温湿度条件から13℃差し引いた13℃および15℃、(参考として9℃)としてその時の絶対湿度を確認する。
なおいずれの条件においても湿度90%から結露が発生するものとする。
吹出温湿度 | 絶対湿度 |
---|---|
13℃ 90% | 0.0084kg/kg |
15℃ 90% | 0.0096kg/kg |
9℃ 90% | 0.0064kg/kg |
外気条件の確認
外気条件も併せて確認する必要がある。
以下に外気条件の時の絶対湿度の一例を紹介する。
吹出温湿度 | 絶対湿度 |
---|---|
30℃ 60% | 0.0160kg/kg |
35℃ 60% | 0.0214kg/kg |
28℃ 80% | 0.0191kg/kg |
全熱交換器の有無の確認
全熱交換器が設置されている場合は全熱交換器の出口空気と室内設定絶対湿度差から外気負荷分のドレンの量を計算する必要がある。
(参考)全熱交換器通過後における温湿度状態を計算する方法は以下で紹介している。
ドレン排水量試算
前項まででドレン排水量の試算に必要な項目を一式紹介した。
本項ではドレン排水量の試算を紹介する。
ドレン排水量試算 その1
【境界条件】
外気温湿度:35℃60%
外気絶対湿度:0.0214kg/kg
外気導入量:300m3/h
室内温湿度:26℃50%
室内絶対湿度:0.0105kg/kg
室内機風量:640m3/h x 4台
吹出温湿度:13℃90%
吹出絶対湿度:0.0084kg/kg
【室内負荷分】
ドレン排水量[kg/h] = 1.2 x 640m3/h x 4台 x ( 0.0105kg/kg – 0.0084kg/kg)
= 6.451[kg/h] = 6.451[L/h] = 0.108[L/min]
【外気負荷分】
ドレン排水量[kg/h] = 1.2 x 300m3/h x ( 0.0214kg/kg – 0.0105kg/kg)
= 3.924[kg/h] = 3.924[L/h] = 0.065[L/min]
【全熱負荷分】
ドレン排水量[kg/h] = 0.108 + 0.065 = 0.173[L/min]
ドレン排水量試算 その2
【境界条件】
外気温湿度:35℃60%
外気絶対湿度:0.0214kg/kg
外気導入量:なし
室内温湿度:28℃45%
室内絶対湿度:0.0107kg/kg
室内機風量:1,280m3/h x 5台
吹出温湿度:15℃90%
吹出絶対湿度:0.0096kg/kg
ドレン排水量[kg/h] = 1.2 x 1,280m3/h x 5台 x ( 0.0107kg/kg – 0.0096kg/kg)
= 8.448[kg/h] = 8.448[L/h] = 0.141[L/min]
ドレン排水量試算 その3
【境界条件】
外気温湿度:35℃60%
外気絶対湿度:0.0214kg/kg
外気導入量:100m3/h
室内温湿度:22℃50%
室内絶対湿度:0.0082kg/kg
室内機風量:840m3/h x 1台
吹出温湿度:9℃90%
吹出絶対湿度:0.0064kg/kg
【室内負荷分】
ドレン排水量[kg/h] = 1.2 x 840m3/h x 1台 x ( 0.0082kg/kg – 0.0064kg/kg)
= 1.814[kg/h] = 1.814[L/h] = 0.030[L/min]
【外気負荷分】
ドレン排水量[kg/h] = 1.2 x 100m3/h x ( 0.0214kg/kg – 0.0105kg/kg)
= 1.308[kg/h] = 1.308[L/h] = 0.022[L/min]
【全熱負荷分】
ドレン排水量[kg/h] = 0.108 + 0.022 = 0.130[L/min]
まとめ
今回はドレンの排水量の試算方法について紹介した。
メーカーのカタログに各機器のドレン排水量について記載がある場合もある。
だが一例としてドレン排水量の計算方法を知っておいても悪くはないかと思う。
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