こんにちは。
気密性の高い建物に住んでるとよく起こりがちなトラブル。
それは玄関の扉が開けづらいといったことだろう。
昔と比べると最近の建物は気密性が高いため意図しない外からの空気はほとんど建物内に入ってこない。
そのため建物内の気圧と外部との間に気圧差が生まれてしまう。
この気圧差が玄関の扉を開けづらく、また閉めづらくさせる。
また実は建物内の気圧と外部の気圧による差だけではない。
実は扉に対して風が吹いている場合も同様だ。
風自体が扉を押さえつけているような形となり扉を開けづらくする。
今回は建物内外の気圧差および屋外の風による扉を開閉するために必要なへの力を設備的観点から紹介する。
今回検討用のモデルは上図の通り。
一般的な住宅の3LDKとした。
・各室内への給気は以下の通り。
>洋室:各30CMH x 3室
>LDK:120CMH
>合計:210CMH
・各室内からの排気は以下の通り。
>キッチン:130CMH
>トイレ:50CMH
>シャワー室:150CMH
>脱衣室:80CMH
>合計:410CMH
給気 – 排気 = -200CMH
給気量よりも排気量が多い。
そのため建物内の室圧は屋外に比べて負圧となる。
(参考)
ここではあまり気にしなくてもよいがCMHという単語について紹介する。
CMH = Cubic meter per hour (m3/h)の略になる。
一時間でどれだけの空気を吸込むもしくは供給するかといった数値を示す。
興味がある方は以下のリンクをクリックして頂ければと思う。
建物内外の気圧差による扉の開閉に必要な力
次に今回のモデルの場合における玄関の扉を開閉する際に必要な力について紹介する。
玄関の扉を開閉する際に必要な力を算出するために必要な情報は以下の通りだ。
①室内の風量収支(前項で算出済)
②圧力差[Pa]
③玄関の扉のサイズ[m2]
④扉自体を開閉するために必要な力:(15Nで見込むことが多い。)
②圧力差について
今回の場合各ファンの静圧が50[Pa]であるため、50[Pa]として計算する。
(参考)静圧について詳しく知りたい方は以下を参照頂ければと思う。
また他にも圧力差を算出する方法があるため興味がある方は以下から確認頂ければと思う。
③玄関の扉のサイズについて
玄関の扉のサイズは標準的な0.9[m] x 2.1[m] =1.89[m2]とした。
これらの情報を用いて扉の開閉に必要な力を求める。
室内外の圧力差は以下の式で求められる。
ドアの開放力[N] = 1/2 x 空気密度(通常1.2)[kg/m3] x 圧力差[Pa] x 扉のサイズ[m2]
つまり今回の場合でいえば
ドアの開放力[N] = 1/2 x 1.2 x 50 x 1.89 = 56,.7[N]
続いて扉の開放に必要な力を算出する。
通常扉自体を開放させるために15[N]の力が必要だ。
そのため以下の式で求められる。
扉の開閉に必要な力 = 15[N] +ドアの開放力[N]
つまり今回の場合でいえば
扉の開閉に必要な力 = 15[N] +56.7[N] = 71.7[N] ≒7.17[kg]
となる。
屋外の風による扉の開閉への影響
次は屋外の風による扉の開閉への影響について紹介する。
屋外の風による扉の開閉に必要な力は室内の時と同じように求めることが可能だ。
扉の開閉に必要な力 = 15[N] +ドアの開放力[N]
ドアの開放力[N] = 1/2 x 空気密度(通常1.2)[kg/m3] x 風速の二乗[m^2/s^2] x 扉のサイズ[m2]
例えば風速が2.0[m/s]の場合を計算してみる。
ドアの開放力[N] = 1/2 x 1.2[kg/m3] x 2.0[m^2/s^2] x 1.89[m2] = 4.54[N]
扉の開閉に必要な力 = 15[N] + 4.54[N] = 19.54[N] = 1.954[kg]
となる。
まとめ
今回は建物内外の気圧差および屋外の風による扉を開閉するために必要なへの力を設備的観点から紹介した。
自分自身の身近にも想像以上に建築設備観点からの見解を出すことができるということに気づいていただければと思う。
また以下のリンクに圧力差について具体的な事例を交えて紹介しているので興味がある方はご確認いただければと思う。
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