受水槽とポンプの算定方法

こんにちは。
近年ではBCPや災害時の対策といった観点から受水槽方式が用いられるケースが多い。
特にわが国では地震をはじめとしたさまざまな自然災害が発生する。
その際に少しでも事業を継続できるように水源を確保、あるいは帰宅困難者等を受け入れるためにも水源をある程度貯蓄するために受水槽方式が用いられる。
もちろん今でも比較的に小規模、中規模の建物においては直送方式やポンプによる加圧給水方式なども健在ではあるがそれでもどの企業体もBCPに対する認知度は上がってきているといえるだろう。
そんな中受水槽方式においてどのように水槽容量やポンプの能力計算を行えばよいかわからない方もいるかと思う。
今回は受水槽方式の場合における受水槽容量とポンプ廻りの算定方法について紹介する。

受水槽方式概要

受水槽方式の概要について紹介する。
実は一概に受水槽方式とは言っても大きく二種類の方式に分類することができる。

まずは一般的な方式から。
敷地周辺に給水本管がある場合だ。
給水本管から給水管を分岐して受水槽まで上水を供給する。
受水槽にて上水をいったん貯めたのちに給水ポンプにて必要各所へ圧送する方式だ。

続いては給水本管を用いないもしくは給水本管がない場合に用いる方式だ。
採取可能な場合に限られるが地下深くの井戸水を受水槽にまで供給する。
この井水は場所により水質が異なるため受水槽まで供給するまでに水処理が必要な場合がある。

なお井水についてはほとんどの地域で飲み水としての利用は許可されていないかと思われる。
詳細は各自治体よりご確認いただければと思うので注意願いたい。

必要水量、受水槽有効水量の算定

続いて必要水量の算定および受水槽必要水量の算定について。
まずは1日の必要水量について紹介する。
建物用途や室用途により大きく使用水量が異なることがある。
例えば事務所で厨房などもなければ事務員と外来の方の手洗い、便所利用分の水量のみで十分だ。
一方で厨房を抱えていれば厨房使用水量を加算する必要がある。

はたまた施設内にプールがあればプール用の水量を合算する必要がある。
一方で研究施設であれば研究用に水を使う場合もある。(多くは純水や超純水だが)
マンション等であればシャワー分の水量やキッチンの水量も同時に見込む必要がある
こういった建物内で想定される給水量を合算しまずは1日の必要水量を算定する。

続いて受水槽容量だが多くの自治体で受水槽の大きさについて基準がある場合が多い。
その多くが1日使用水量の40%~60%を受水槽有効水量とするものだ。
保健所絡みでもあるが受水槽内の水が1日2回転する水量が望ましいとの理由からだ。

受水槽の大きさの算定

続いて受水槽の大きさを算定する。
前項で算出した必要水量を用いて計算を行う。
もちろん必要水量からもとめられる必要容積≠受水槽容積であるため別途計算が必要だ。

まず注意すべき1つ目の事項として受水槽出口側の配管より低位にある上水はそもそも使用することができないということ。
計算上では配管上端から安全側を見てさらに150mmまでは有効水量に換算しないことが多い。
続いてが受水槽流入管となる部分に吐水口空間が必要であることだ。
最低でもHWL(水表面)から受水槽天端までは300mmは確保したいところだ。
吐水口空間が必要な最も大きな理由はクロスコネクションだ。
受水槽内はきれいではあるだろうがそれでも一定時間放置されている水が存在しているわけだ。
その水が給水管側と混じってしまうともしかすると給水本管側が汚染されることになりかねない。
そういったリスクを回避することが大切だ。

井戸ポンプの算定

基本的には受水槽があるため突発的に建物側で水を大量使用しても受水槽がバッファーとなり水がなくなるといった心配はほとんどない。
そのため井戸ポンプは1日の使用水量から求められる時間平均給水量で能力を算定する。
平均的な水量を常に受水槽へ供給することで受水槽の枯渇を避けることができるからだ。
もちろん様々な利用者がおり利用者種別毎に1時間当たりの平均給水量を算定し最後に合算する。
その合算した値が井戸ポンプに求められる必要給水量となる。

給水ポンプの能力

給水ポンプの能力は受水槽とは関係なしに決定することとなる。
水道直圧でポンプ圧送による方式を今まで計画したことがある方は特に問題なく算定可能かと思われる。

方法としては給水器具から給水負荷単位を合算する方法だ。
最後に給水負荷単位からポンプの必要給水量を算出することとなる。

(参考)
給水負荷単位からポンプの給水量を求める方法を以下の記事で紹介している。
以下の記事も併せて確認されたい。

計算例

実際に計算した方が何かと理解しやすいかと思うので以下に例題を紹介する。

先ほどの図に問題文を記載した。
こちらの問題より各容量、能力を求めることとする。

□1日の使用水量の算定
事務員1,000人 x 60L/人・日 = 60,000L/日
外来者   100人 x 20L/人・日 =   2,000L/日
合計で62,000L/日

□受水槽有効容量の算定
1日使用水量の50%を受水槽有効容量とすると
62,000L ÷ 2 = 31,000L = 31m3 となる。

□受水槽容量の算定
31m3より受水槽容量を31m3 x 1.3 = 40.3m3 ≒41m3と仮定する。
受水槽寸法を6m x 4m x 2mHと仮定する。
受水槽出口側配管径を100Aとすると受水槽底板から150mm+100mm+150mm= 400mmHは有効水位として換算しない。
また受水槽天端から300mmHは有効水位として換算しない。
従って有効水位は 2.0mH – 0.4mH – 0.3mH = 1.3mHとなる。
6m x 4m x 1.3mH = 31.2m3 > 31.0m3
となるため受水槽の寸法は 6m x 4m x 2.0mH とする。

□時間平均給水量および井戸ポンプの算定
既に1日使用水量は求められている。
事務員1,000人 x 60L/人・日 = 60,000L/日
外来者   100人 x 20L/人・日 =   2,000L/日
事務員は8h勤務であるため
60,000L/日 ÷ 8h/日 = 7,500L/hとなる。
外来者は2hであるため
2,000L/日 ÷ 2h/日 = 1,000L/hとなる。
合計で8,500L/h = 141.7L/min となる。
(ポンプは通常L/minで表される)
従って井戸ポンプの能力は141.7L/minとなる。

□給水ポンプの算定
大便器:25個 x 給水負荷単位6 = 150単位 
小便器:30個 x 給水負荷単位3 =   90単位
洗面器:25個 x 給水負荷単位2 =   50単位
散水栓:  5個 x 給水負荷単位5 =   25単位
合計で315単位となる。
建築設備設計基準によれば440L/minが給水ポンプに必要な能力となる。

まとめ

今回は受水槽方式の場合における受水槽容量とポンプ廻りの算定方法について紹介した。
今回は特に揚程計算は行わず単純に必要な水量について算定したが興味のある方は揚程についても調べるとより深く理解することができるかと思う。

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