【設計者必見】外皮性能が空調負荷に与える影響

こんにちは。
最近ではどの建物を建てるにあたっても省エネと言ったキーワードがつきまとう。
省エネといえばBPI(外皮性能)とBEI(建物の一次エネルギー消費量)といった2つに大別される。
特にこのBEIを改善するためにはまずはBPIを改善するといった手法が用いられることがある。
これは外皮性能が改善することにより空調負荷が低下することにある。
つまり外皮性能の向上は省エネ化を図るためには必要不可欠だ。

今回はBPIの基礎的な部分にあたる建物の外皮性能を変更するとどの程度空調負荷に影響を与えるのかを紹介する。
特に今回は暖房で空調の設計が決まる地域(北海道)においてケーススタディを踏まえながら紹介する。

境界条件

今回は以下の3ケース(共通条件含む)でケーススタディを行う。

【共通条件】
・床面積100m2(10mx10m)
・壁1面を外壁としそれ以外は内壁とする。
・外壁面には1,800 x 900mmの窓が4枚設置される。
・内壁および、床、天井の構造体負荷は10W/m2とする。
・天井高2.7m
・階高4.2m
・換気量450CMH(15人)
・外気温湿度: -8.3℃ 67.3%
・室内温湿度℃%:22.0℃ 40.0%

【ケース①】
・屋外 + コンクリート180mm +ポリスチレンフォーム:なし + 
空気層 +石膏ボード12.5mm x 2 *屋内
・窓部:屋外 +単板ガラス6mm + 室内

【ケース②】
・屋外 + コンクリート180mm +ポリスチレンフォーム:20mm + 空気層 +石膏ボード12.5mm x 2 *屋内
・窓部:屋外 + 板ガラス6mm + 空気層 + 単板ガラス6mm + 室内

【ケース③】
・屋外 + コンクリート180mm +ポリスチレンフォーム:40mm + 空気層 +石膏ボード12.5mm x 2 *屋内
・窓部:屋外 +Low-eガラス6mm + 空気層 + 単板ガラス6mm + 室内

構造体負荷の算定

構造体負荷、窓面負荷の順に算出する。
本項では各ケースの構造体負荷をケースごとに算出する。
まずは外壁の負荷を算出する。
(以下の画像は上から順にケース①、ケース②、ケース③)

外壁の負荷はそれぞれ以下の通りとなった。
ケース①・・・1.999[W/m2・K]
ケース②・・・0.961[W/m2・K]
ケース③・・・0.632
[W/m2・K]

窓面の負荷

次に窓面の負荷を算出する。
(以下の画像は上から順にケース①、ケース②、ケース③)

窓面の負荷はそれぞれ以下の通りとなった。
ケース①・・・6.162[W/m2・K]
ケース②・・・4.167[W/m2・K]
ケース③・・・2.616
[W/m2・K]

ケース別暖房時の室負荷

ケース別の暖房負荷は以下の通りとなる。

ケース③が最も暖房負荷が少ない結果となる。
またケース①基準の暖房負荷を100%としたときに、ケース②の場合では11.6%の暖房負荷が低減される。
またケース③の場合では16.6%の暖房負荷が低減される。
外気負荷および窓面負荷と全体の暖房負荷の割合に着目してみるとケース①の場合は全体の25.8%を占める。
一方でケース②の場合は14.2%、ケース③の場合は9.1%となる。
つまり外皮部分の負荷だけを比較するとケース①に比べるとケース②の場合は約半減、ケース③の場合は1/3程度になることとなる。

これだけだと外皮負荷が空調に与える影響が少しわかりづらいかと思うので少し違った切り口から紹介する。
例えば外皮性能によって年間の電気代(従量料金)がいくら変わるかを大まかに算出する。
(厳密には冷房分も加味しないといけないのであくまでもざっくりとした数値となる。)

延べ面積10,000m2の事務所で空調に係る年間の電気代はケース①の場合で約2,000万程度とする。
一方でケース②の場合は100%⇒88.4%となるのでおよそ1,800万程度になる。
またケース③は100%⇒83.4%なのでおよそ1,650万となる。

上記に加えて実際には空調機器の番手も落とせる可能性があるためイニシャルコストも低減する。

なお先ほどの表をエクセル形式でダウンロードされたい方は以下のリンクを参照頂きたい。

まとめ

今回はBPIの基礎的な部分にあたる建物の外皮性能を変更するとどの程度空調負荷に影響を与えるのかを紹介した。
特に今回は暖房で空調の設計が決まる地域(北海道)においてケーススタディを踏まえながら紹介した。
これらの検討を踏まえて実建物において目指すべき断熱性能を判断頂ければと思う。

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