最近よく聞く換気のあれこれ_換気回数および換気量

パンデミックが始まって以来、換気についてよくテレビやインターネットで目にすることが多くなった。
多くなったと同時に最近見かけた広告が換気回数を調べますといった内容。
時代の流れにあやかって隙間産業的にうまくビジネスを行っている人たちを見ると非常に感慨深い。
それだけ換気について皆が気にし知りたがっているということだろう。
さてそんなわけで今回は換気の回数と換気量について説明する。

換気量とは

換気の量とはいわゆるファンの風量のこと。
扇風機を思い浮かべていただければよい。
扇風機は羽根を使って風を動かしており、扇風機ごとにその風を動かす能力が違う。
その能力の単位を換気ではm3/h,m3/minなどと記載したりする。

この単位の意味は1時間にどれだけの容積の空気を移動させたかということ。
例えばよく家庭にあるような扇風機。
取扱説明書等確認していただければ記載があると思うが、40m3/minと記載があったりするかと思う。
これは1分間に40m3の空気を移動させることができますという意味になる。
40m3がどのくらいかというと大体3.5mx3.5mx3.5m程度の立方体の空気を1分で入れ替えていると思っていただければよい。

通常の建物の換気量

事務所の場合の換気量を記した。
例えば事務室の場合は室容積1m3あたり1.7m3/hの換気量であり会議室の場合は5.6m3/h,応接室の場合は3.3m3/hとなった。
(基本的に換気量は国交省で定めている数値で決めることが多いため、今回は標準的な数値を用いた。)

一方で家の寝室を同じような形で記載した。
但し寝室の場合はどれだけ室面積が増えようと2人以上となることは想定されがたいため、4.5畳の場合で記載した。
なお、家庭の場合はいわゆる国交省の基準にのっとっていない場合が大半でありその場合は記載の3.33回/h⇒0.5回/hとなる。
容積当たり0.5回/hであれば、容積に比例するため0.5m3/h・m3と同義になるため事務室等の単位と合致させることができる。

室用途ごと、室面積毎の換気量を記した。
基本的に会議室など人が密になりやすい室は換気量が多い傾向となり、事務室など最も一人当たりの専有面積が大きい室は換気量が小さい傾向となる。

なお家の寝室が水平線を描いている理由は、先ほどの面積が広くなったとしても換気の量が変わらないところからきている。

よく言われる○○分で空気が全部入れ替わっているって?

今のご時世本当に見かけることが多い、空気が何分で入れ替わっているかといった広告。
例えば某A社の飛行機では5分で飛行機の中のすべての空気が入れ替わっているとか、某カラオケ店では10分で入れ替わっているとか唄われている。(焼肉屋も5分とかだったような)
ここでいう5分の意味について説明する。
最初に扇風機の例を示したと思うが40m3/minとは40m3の空気を1分で異動させる=入れ替えるといった意味となる。

これを応用すればイメージは簡単だ。
例えば10m x 10m x 3mHの部屋があったとする。
この時の室容積は300m3であることから
300m3/min ÷ 40m3/min = 7.5 となる。
要するに7.5分で室内の空気をかき混ぜていることになる。
但し扇風機の場合は換気ではなく室内の空気を循環させているだけなので我々の業界では循環換気といった使い方をする。
これと同じ要領で換気回数を求めればよい。

例えば先ほど説明した事務室についても実は既に計算済みだ。
1.7m3/h・m3と記載したが、室容積に比例し換気量が増えるため、単に1.7回/hとなる。(1時間に1.7回のすべての空気を入れ替えるの意味)
1.7回なので60min ÷ 1.7回 つまり36分で室内の空気を全て入れ替えているということとなる。

次にこれが多いか少ないかという話だが、先ほども国交省の基準から算出していると記載したが、国交省の基準は保健所が出している基準もクリアしての数値なので、現状のパンデミック事情で騒がれている換気量を十分に満足していることとなる。

なぜ焼き肉店の換気量は多いのか

焼き肉店の換気量が多い理由だが、焼き肉店ではそれぞれ火を使い客が肉を焼き成り立っている。
物を焼くということは空気が燃焼し一酸化炭素が発生するということ。
それに伴う法で定められている換気量がとにかく大きいため、結果として換気が非常に優れた建物となる。

例えば一般的なコンロの燃料消費量は3~4kW程度なのでここでは4kWとして計算すると、法的に必要な換気量はコンロ1台当たり150m3/hとなる。
仮にコンロがお店の中に10台あったとすれば1,500m3/h。
そのお店の大きさが50m2であれば

1,500m3/h ÷ 50m2 ÷2.7mHで約 11.1回/hとなる。つまり約6分で換気を法的に行わなければならないといったことになる。
法的に換気が必要だから行っているので別にコロナの対策でも何でもないが、結果的には謳い文句になっている部分が事実としてある結果となる。

まとめ

今回はコロナを契機に注目された換気量と換気回数について説明した。
通常の建物においても法的な換気量は満足できている(昭和以前の建物は法が成り立つ前に建てられている可能性があるため不明瞭だが)
また焼き肉店の換気量が多い理由は必然性があるものであることを説明した。
これを機に皆様が換気についてより興味を持っていただければと思う。

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