中央熱源の場合におけるエアバランスの考え方を紹介

建物を運用してからいつも外から風が吹き込んできてクレーム騒ぎ。
そんな経験は設備設計者であれば誰でもお持ちではないだろうか。
実際にはクレームまで発展しないにしても風除室のところで常に風切り音がしている姿は見るに耐えないだろう。
特に比較的小規模物件では全熱交換器を使用していたり時には生外気を導入していたりであまりエアバランスは考慮しなくても良いかもしれない。
一方で中央熱源で一つの空調機もしくは外調機で複数の室に吹いている場合は一気にややこしくなる。
また制御方法によってもエアバランスの考え方を変える必要がある。
今回はそんなややこしい中央熱源の場合かつ外調機で複数の室へ吹く場合に絞ってケース別に一般的な概念を紹介する。

エアバランスが大切な理由はこちらから
⇒”エアバランスを考えないと冬に寒い思いをする?”
またエアバランスの基礎的な考え方はこちらで紹介している。
⇒”非定常使用室を考慮したエアバランスの考え方”

外調機(2次側制御無)で複数の室へ吹く場合

まず1ケース目として制御が全くない場合を考えてみる。
すごくシンプルなケースなので迷いどころは特にないかと思う。

中央からのスケジュール発停で外調機やその他3種換気のファンをまとめて動かす。
外調機には特に制御がないため純粋に定格風量でエアバランスが完結していればエアバランス上特に問題には発展しづらい。

外調機(2次側CO2制御)で複数の室に吹く場合

ここからが今回のエアバランスを考える上での本題。
外調機でCO2制御をかける場合はある系統がVAV最小開度となる可能性があること。

またときにはある系統が未使用時はVAV全閉となることがある。
一方で外調機のファンINV最小周波数は通常定格の30%程度。
つまり外調機の定格風量の30%で吹く可能性があることになる。
(ちなみにVAVからの要求が外調機の定格風量の30%以下の場合についてはそもそも制御をいじる必要があるので今回は割愛する)

 

一方で排気側ファンの用途がトイレや倉庫の場合通常インバータにするケースはまれなためエアバランスが不足する恐れがある。
その場合にどうするかだが主に以下の対応がありうるだろうか。
①生外気を導入する
②別途エアバランス用の給気ファンを設置する。
③外調機ファンINVの下限値を変更する。

①については比較的シンプルで廊下等に外壁ガラリを設けてその外壁ガラリから自然給気を行うことでエアバランスを取る方法だ。
短所としては生外気のため外気温と概ね同等の空気を建物内に導入してしまうこと。
そのため廊下が暑い寒いなど局所的な温熱環境に影響を与えやすい。

②については筆者は全くの無意味なことだと考えている。
(有効なケースもありうるかもしれないが)
別途給気ファンを設けるくらいであれば最初から外調機のINV下限値をエアバランス上負圧とならないよう制御する方がよほど賢明だ。
(但し外気を余計に処理してしまう分外気負荷が上がり結果的にエネルギー消費量が上がる。)

③については先ほど①でお伝えした通りだ。
①ほど空調負荷は削減ができないが局所的に不快な空間ができるよりはよほど良いだろう。

建物全体が正圧の場合

一方でこんなケースも考えられるだろう。
外調機のファンINVを最小とした場合でも建物全体から見れば正圧となる場合
そんな時は最大正圧になりうる時を考えたときの風量をどこかに逃してあげればよい。
つまり外調機100%運転時が最大正圧時となる。
その際に算出したエアバランスで正圧分を外壁ガラリなどからパス排気してあげればエアバランスが均等となる。

ちなみに余談だが外壁ガラリをパスで給排気する場合は面風速1.5m/s以下で導入することが望ましい。
(ファンでの給排気とは異なり強制的に給排気しているわけではない。
従ってあまり設計風速が高いとどこかほかのところから空気を引っ張ってきてしまう恐れがある。)

外調機定格運転時には正圧でINV最小開度時には負圧の場合

またまた複雑なパターンを用意してみた。
外調機が1台だけではなくたくさんの数量がある場合に発生しやすいだろう。
どうしたらよいかわかりにくい場合は任意のゾーンごとにエアバランスを取るようにしたうえで冒頭に申し上げた方法のパス給気やパスでの排気などいずれかでそれぞれ計画してあげると上手くいくだろう。
(任意のゾーンを最終的には統合しても問題はない)

結果的に各ゾーンを集約すると建物全体でエアバランスが取れることになる。
【余談】
なおその際に各ゾーンごとにエアバランスを均等にしている関係上どうしてもガラリの数量が増えたり排気と給気のガラリがたくさん混在してしまう。
しかし混在しているからといってガラリを集約したり数量を減らしてしまうと、外調機がたくさんありそれぞれが複雑な制御を行っている場合にどこかでエアバランスが均等に保たれないことが発生しうるため注意が必要だ。

まとめ

今回は外気の導入方法に制御を加えた状態におけるエアバランスの取り方を紹介した。
近代の各機器のハイブリッド化や省エネ手法の登場により考えることがどんどん増えてしまう傾向にある。
それとともにエアバランスを始めさまざまな配慮すべき事項がおざなりになる傾向にある。
しかし省エネ以前に快適性や基本的な建物の、性能を確保することはとても大切なことなので是非ともエアバランスについては特に頭の片隅に入れていただければと思う。

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