沈殿槽方式における雨水貯留槽の計算方法

こんにちは。

雑用水利用を行う際には、主に雨水を水源とすることが多い。
雨水を集水する際に砂埃等がどうしても流入する。
砂埃等を取り除くためには様々な方法があるが、その中でも沈殿槽を用いた方式とすることが少なくない。

今回は沈殿槽方式における雨水貯留槽の計算方法について紹介する。

沈殿槽方式における雨水の集水から雨水を雑用水として利用するまでのフローは下図のとおりとなる。
雨水の集水にあたっては沈砂槽により、比較的大きな砂を沈殿させる。
次に、沈殿槽により長い時間をかけて、細かな砂を沈殿させる。
その後、雨水を雨水貯留槽に一次貯留し、必要な分だけを雑用水槽へ移送する。

各水槽の役割
沈砂槽 比較的大きな砂を沈殿させるための水槽
沈殿槽 比較的細かな砂を沈殿させるための水槽
雨水貯留槽 雨水を一次貯留するための水槽
雑用水槽 雑用水として利用するための水槽

各種水槽

沈砂槽

沈砂槽の容量計算は下表に示す通りの式で計算することが可能である。
詳細はこちらの記事で紹介しているため、ぜひご確認いただければと思う。

沈砂槽の有効容量[m3]
計算式有効容量[m3] = 計画時間最大雨水集水量[m3/h] ÷ 60[min/h]

沈殿槽

沈殿槽の容量計算は下表に示す通りの式で計算することが可能である。
詳細はこちらの記事で紹介しているため、ぜひご確認いただければと思う。

沈殿槽の有効容量[m3]
計算式有効容量[m3] = 計画時間雨水集水量[m3/h] x 滞留時間[h]

※滞留時間は2〜3時間。

雨水貯留槽

雨水貯留槽の計算方法は下図に示す「雨水利用・排水再利用設備計画基準・同解説」内の雨水貯留槽容量計画線図を用いて計算を行う。
なお、雨水貯留槽容量計画線図は主要都市ごと用意されている。
本図の使い方について次項以降で紹介する。

出典:雨水利用・排水再利用設備計画基準・同解説

①雑用水使用水量÷集水面積

上図を使用するためには、まず、雑用水使用水量[m3/日]÷集水面積[m2]の数値を求める必要がある。
例えば、雑用水の使用水量が10m3/日で集水面積が1,000m2の場合は0.010となる。

②雨水貯留槽容量計画線図を使用する

グラフ内で0.010(0.012と0.008の間)を追いかけて、雨水利用率が飽和する点を確認する。
(下図では、雨水利用率が概ね96%程度で飽和する。)
その時のx軸は0.14であり、雨水貯留槽容量[m3]÷集水面積[m2]の計算値が0.14であることを示している。
集水面積が1,000m2だとすると、0.14 x 1,000m2 で雨水貯留槽容量は140m3となる。

雨水貯留槽の範囲

沈殿槽方式の場合における雨水貯留槽の範囲について少し注意が必要である。
雨水貯留槽容量計画線図を使用して求めた雨水貯留槽容量は、沈砂槽と沈殿槽容量を含んでいる。
そのため、雨水貯留槽の容量を算出する際には沈砂槽容量と沈殿槽容量を差分して計算する必要がある。

計算例

各種水槽の計算例を以下に紹介する。

計算条件

計算条件
計画地東京
雑用水使用量15m3/日
集水面積1,000m2
流出係数0.9
1時間最大降水量88.7[mm/h]
1時間降水量15[mm/h]

沈砂槽容量

計画時間最大雨水集水量[m3/h]
基本式 1時間最大降水量[mm/h] x 流出係数 x 雨水集水面積[m2] ÷ 1,000
計算式 88.7 x 0.9 x 1,000 ÷ 1,000 = 79.83[m3/h]
沈砂槽容量[m3]
基本式 計画時間最大雨水集水量[m3/h ÷ 60[min/h]
計算式 79.83 ÷ 60 = 1.34[m3]

沈殿槽容量

計画時間雨水集水量[m3/h]
基本式 1時間降水量[mm/h] x 流出係数 x 雨水集水面積[m2] ÷ 1,000
計算式 15 x 0.9 x 1,000 ÷ 1,000 = 13.50[m3/h]
沈殿槽容量[m3]
基本式 計画時間雨水集水量[m3/h ÷ 60[min/h] x 150[min]
計算式 13.50 ÷ 60 x 150 = 33.75[m3]

雨水貯留槽容量

雨水貯留槽容量計画線図における雨水貯留槽容量[m3]
基本式 上図による
計算式 上図より140[m3]
雨水貯留槽容量[m3]
基本式 雨水貯留槽容量計画線図における雨水貯留槽容量[m3] – 沈砂槽容量[m3] – 沈殿槽容量[m3]
計算式 140 – 1.34 – 33.75 = 104.91[m3]

各水槽容量まとめ

まとめ

今回は沈殿槽方式における雨水貯留槽の計算方法について紹介した。
地域によって降水量が大きく異なるため、水槽容量も大きく異なる。
そのため、地域ごとに適切な水槽容量を選定することで、必要最小限の費用で雨水利用を最大限活用することが可能となるだろう。

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