沈殿槽容量の計算方法

こんにちは。

雨水利用設備を計画する際には、砂ろ過装置を用いる方法や、沈殿槽を用いる方式がある。
砂ろ過装置は実際に機器により水をろ過するため、機器本体のコストやメンテナンスコストが発生する。
一方で、沈殿槽を用いる方式は水槽容量が大きくなる反面、機器を必要としない。
そのため、官庁案件では沈殿槽を用いる方式とすることが少なくない。
したがって、沈殿槽の容量の計算方法をマスターすることは必須となる。

今回は沈殿槽容量の計算方法を紹介する。

 

雨水利用方式の概要

雨水利用の方式は下図に示すとおり、大きく3種類の方式に大別される。
その中でも、標準処理フローNo2の比較的沈殿槽方式が利用されることが少なくない。

標準処理フローの比較
処理フロー No 集水場所 建設費 造水
コスト
設置面積 維持管理
雨水貯留槽
除く
雨水貯留槽
含む
1 きれいな屋根面 80 100 15 80
2 比較的
きれいな屋根面
100 100 100 100
3 汚れの多い屋根面 140 105 120 105

沈殿槽容量の算定方法

沈殿槽容量の算定式

「雨水利用・排水再利用設備計画基準・同解説(出典:国交省)」によれば、沈砂槽の有効容量は計画時間雨水集水量の2時間から3時間分とする必要がある。
(計画時間最大雨水集水量ではないため注意が必要。)
以下に計算式を紹介する。

沈砂槽の有効容量[m3]
計算式有効容量[m3] = 計画時間雨水集水量[m3/h] x 滞留時間[h]

※滞留時間は2〜3時間。

計画時間雨水集水量

計画時間雨水集水量は地域によらず10〜20mm/hとする。
計画時間雨水集水量mm/hをm3/hに単位変換する方法は以下のとおりである。

計画時間雨水集水量[m3/h]
計算式計画時間雨水集水量[m3/h] =
計画時間雨水集水量[mm/h] x 集水面積[m2] x 流出係数[-] ÷ 1,000[L/m3]

流出係数の算出方法

集水する場所によって流出係数が変動する。
そのため、予め意匠担当と集水箇所とその範囲について事前に打ち合わせの上を算定する必要がある。

集水場所流出係数
屋根0.85-0.95
道路0.80-0.90
その他の不透面0.75-0.85
水面1.00
間地0.10-0.30
芝、樹木の多い公園0.05-0.25
勾配の緩い山地0.20-0.40
勾配の急な山地0.40-0.60

計算例

計算例①

流出係数が0.9で、集水面積が1,000m2の場合のおける沈殿槽有効容量の計算例を以下に紹介する。

No.項目単位備考
[-][-]  
1時間降雨量mm/h15 
流出係数0.9 
雨水集水面積1000 
計画時間最大雨水集水量㎥/h13.50①×②×③÷1000
沈殿槽滞留時間min150 
沈殿槽有効容量33.75④×⑤÷60

計算例②

流出係数が0.8で、集水面積が500m2の場合のおける沈殿槽有効容量の計算例を以下に紹介する。

No. 項目 単位 備考
[-] [-]
1時間降雨量 mm/h 15
流出係数 0.8
雨水集水面積 500
計画時間最大雨水集水量 ㎥/h 6.00 ①×②×③÷1000
沈殿槽滞留時間 min 150
沈殿槽有効容量 15.00 ④×⑤÷60

まとめ

今回は沈殿槽容量の計算方法を紹介した。
流入した雨水に混じった砂等を時間をかけて沈殿させる。
その用途から比較的沈殿槽の容量が比較的大きくなることに注意されたい。

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