こんにちは。
地球温暖化により、年々外気温湿度が徐々に上昇している。
そのため、高湿度の外気を室内に取り込むこととなり室内で結露が発生している。
また、建物の高気密化によっても、結露に対して拍車をかけていることが実情だ。
結露対策として空調機に再熱コイルを見込み、除湿を行う建物も少なくない。
今回は結露対策として空調機に再熱コイルを見込む際の空調機の計算方法を紹介する。
空調機に再熱コイルを導入する場合の空気線図の動きを以下に紹介する。
①室内空気と②外気が混合することで③混合空気が生成される。
次に空調機内の冷却コイルを通過することで④冷却後空気となる。
さらに再熱コイルを通過することで⑤再熱後空気となり、室内へ供給される。
結露が発生する時期
結露は主に梅雨の時期(中間期)に発生しやすい。
理由としては低負荷時においては、空調機の吹き出し温度を大きく下げられないためだ。
8月等、外気温度が高く室内負荷が大きいときは、空調機の吹き出し温度を下げることができるが。
低負荷時に吹き出し温度を下げると室内温度が大きく低下する。
そのため、梅雨(中間期)に結露が発生しやすい。
低負荷時に結露が発生する理由について詳しくはこちらの記事で紹介している。
是非ご確認頂ければと思う。
再熱の範囲と計算方法
前項で結露が発生する時期は主に中間期である旨を紹介した。
つまり、①再熱の範囲を中間期だけに絞るパターンと、②冷房時は常に再熱を視野に入れるパターンの2種類の計算方法が考えられる。
①の場合は中間期のみ過冷却し再熱を行う制御となる。
一方②の場合は常に再熱を視野に入れるため、夏期のピーク時においても再熱を行う必要がある。
つまり、ピーク時の冷却負荷は再熱を行う分増大する。
但し、再熱を行う以上、室内空気とのエンタルピー差を確保できなくなるため、送風量が増大する。
そのため、中間期のみ過冷却を行い再熱を行う場合においても、冷却負荷が増大する可能性もあるため注意が必要だ。
以下に各ケースごとの送風量および冷却負荷、再熱負荷を紹介する。
夏期ピーク時かつ再熱を行わない場合
夏期ピーク時かつ再熱を行う場合
梅雨のときかつ再熱を行わない場合
梅雨のときかつ再熱を行う場合
パターンごとの熱負荷 | |||
---|---|---|---|
パターン | 送風量[CMH] | 冷却負荷[kW] | 再熱負荷[kW] |
夏期ピーク時、再熱無 | 1,875 | 17.50 | 0 |
夏期ピーク時、再熱有 | 3,750 | 31.25 | 6.25 |
梅雨、再熱無 | 563 | 3.19 | 0 |
梅雨、再熱有 | 1,125 | 6.38 | 1.88 |
再熱する場合の吹き出し温度の設定
再熱を行う場合の吹き出し温度をどの程度で設定すればよいか迷う方もいるだろう。
外気処理のみ行う外調機であれば、26℃50%を吹き出し温度として、残りをファンコイルユニットにより室内処理を行う方法が一般的だろう。
但し、空調機の場合は室内設定空気と吹き出し温度を同一とすると、室内の冷房が成立しない。
しかし、実際に空調機の吹き出し温度について悩み始めると、変数が多すぎて画一的に決めきれないことも実情だ。
そのため、下表のとおり、熱負荷の要素ごとに熱負荷がどの程度となるかを整理した上で、吹き出し温度を決めることが一つの判断基準となる。
併せて空調機においてはVAVを見込まない限り、送風量が変更できないことも考慮する必要がある。
発生する熱負荷は以下の表の各負荷を合計した数値となる。
その合計した数値を梅雨における熱負荷として算定することで、ある程度低負荷時を考慮した吹き出し空気とすることができる。
外気が53kJ/kg以下(26℃50%)以下の時に発生する熱負荷 | |
---|---|
熱負荷の要素 | 負荷の有無 |
構造体負荷 | 無(利得になる) |
ガラス面負荷 | 無(利得になる) |
日射負荷 | 有 |
照明負荷 | 有 |
人体負荷 | 有 |
什器負荷 | 有 |
外気負荷 | 無(利得になる) |
計算例
以下に計算例を紹介する。
熱負荷の要素 | ピーク時の熱負荷[W] | 梅雨時の熱負荷[kW] (18℃90%を想定) |
---|---|---|
構造体負荷 | 2,000 | -2,000 |
ガラス面負荷 | 600 | -600 |
日射負荷 | 8,500 | 0 |
照明負荷 | 1,000 | 1,000 |
人体負荷 | 1,800 | 1,800 |
什器負荷 | 2,700 | 2,700 |
室内負荷合計 | 16,600 | 2,700 |
外気負荷 | 2,500 | -500 |
全負荷合計 | 19,100 | 2,200 |
※ピーク時におけるSHFは0.93とした。
※梅雨時の日射負荷は悪天候時を想定し0とした。
まず夏期ピーク時の空気線図を以下に紹介する。
SHF=0.93のため冷却後の空気は42kJ/kgとなる。
室内空気とのエンタルピー差は11kJ/kgであるため、送風量は5,210CMHとなる。
次に梅雨の時かつ再熱を行わない場合を紹介する。
梅雨時の熱負荷は2.7kWであるため、送風量は736CMHとなる。
また、その際の冷却負荷は2.5kWとなる。
ピーク時より算定した送風量5,210CMHと梅雨時より算定した送風量736CMHを比較すると梅雨時の送風量はピーク時の送風量の15%程度しかない。
実際に制御を行う場合、30%程度までしか送風量を絞ることができない。
つまり、1,500CMH程度の風量かつ42kJ/kgの空気が室内供給されることとなり、室内温度が低下する。
室内温度を維持しようとすると、吹き出し空気の温湿度が上昇し、結露が発生しやすい環境となる。
そのため、再熱を行う場合は、風量の下限値を1,500CMHとして吹き出し温度を逆算する。
室内負荷が2.7kWで送風量を1,500CMHとすると、吹き出し空気のエンタルピーは47.6kJ/kgとなる。
結果、冷却負荷は4.8kW、再熱負荷は2.6kWとなる。
まとめ
今回は結露対策として空調機に再熱コイルを見込む際の空調機の計算方法の一例を紹介した。
結露は今後もより深刻な課題となる。
今後、様々なメーカーが結露対策に特化した空調機器を製造、販売する可能性があるため、それらの動向も注視しながら設計へ反映頂ければと思う。
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