こんにちは。
近年の外気条件は刻々と悪化している。
温度が年々上昇していると同時に絶対湿度も上昇している。
そんな状況下で最近よく起こるトラブル(クレーム)が室内にカビが発生することだ。
設計通りの思想で建物の運用も行っていただければトラブルに起こることはそうそう発生しない。
だが建物を使用する人は設備設計のプロではない。
設計者、施工者から建物運用者へ上手く伝達が行われていないが故にトラブルが起こることが多い。
様々な慢性的に起こるトラブルを根本から解消することは難しい。
つまり自分自身がこれらのトラブルに遭遇した際に原因をしっかりと把握する能力が求められる。
(トラブルの場で意見が言えないと設計者が悪者にされてしまう。(本当に設計者が悪い場合は誠実に対応いただきたいが。))
今回は低負荷時に発生する結露について紹介する。
なお参考として近年の外気絶対湿度の推移を知りたい方は以下のリンクからアクセスいただければと思う。
左図に熱負荷の傾向を示す。
通常設計ではピーク負荷(例えば真夏の一番暑いときの熱負荷)を満足するように設計を行う。
だが実際にそのピーク負荷が発生する時間帯はごくわずかだ。
大半の時間帯はピーク負荷の半分もないような時間帯が多くを占める。
このような熱負荷を低負荷と呼ぶ。
低負荷だと何が起こるのか
高負荷の場合は窓からの熱や構造体からの熱により比較的室内の温湿度が安定しやすい。
一方で低負荷の時だ。
通常外調機は室内温湿度26℃50%と同一のエンタルピーで吹き出す。
つまり吹出温湿度は20℃90%程度となる。
低負荷の時はほとんど外部からの熱取得が発生しない。
そのため人や照明、什器等からの発熱に頼ることとなる。
だが思ったよりも発熱がない場合は20℃90%で吹き出している以上、室内温度が26℃よりも下回ってしまうこともある。
つまり予期せずうちに「室内が寒い」などとクレームが入ることになる。
低負荷時に建物オーナーがとる行動
外調機や外気処理パッケージの吹き出し温度を上げる。
外調機や外気処理パッケージの吹き出し温度を上げることが考えられる。
吹き出し温度を上げることでより目標とする室内温度に近づけることができるからだ。
だが結露といった観点からはむしろ逆効果だ。
以下に空気線図を示す。
上図に本来あるべき外調機の吹き出し温度を示す。
低負荷時なので外気は26℃よりも低く設定した。
また結露しやすいつゆを想定し24℃90%の外気を想定した。
通常外調機は26℃50%と同一のエンタルピーとなる20℃90%程度で吹き出すことが多い。
一方で外調機の吹き出し温度を20℃から23℃へ変更した場合は上図のような空気線図となる。
吹き出し温度を3℃上昇させるだけで除湿量が大きく減少したことがわかるだろう。
つまりほとんど外気をそのまま室内へ導入したことと変わらない状況となる。
外気を室内へそのまま導入すると事務室であれば書類は湿った状態になる。
更衣室であれば作業着等にカビが発生する恐れもある。
高級な設計を行うならば
もし湿度を徹底的に避けたいのであれば外調機を4管式にする方法がある。
一度空気を冷やし除湿したのちに空気を再熱(加熱)する方法だ。
この方法を選択すれば供給空気を26℃50%で送風することが可能だ。
空気線図で示すと以下の通りとなる。
空気線図上空気があっちやこっちに移動していることが見て取れるだろう。
空気の移動が多いほど電気代にも直結する。
そのためよほどお金がある場合や強い要望がある場合に採用するべきだろう。
まとめ
今回は低負荷時に発生する結露について紹介する。
外気条件が年々と悪化している以上、結露は今後もより問題視されていく傾向にある。
そのため結露が発生する理由と解消する方法を認識しておくことは大変重要だろう。
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