こんにちは。
新築の建物からおおよそ、15~30年程度経過すると、空調機の更新を行う必要がある。
設備機器の単純更新であれば、さほど何も考えずに全く同じ能力を持った機器を導入すればよいだろう。
しかし、何かしらのベネフィットを施主にもたらすことができるかどうかが設計者としての存在価値ともいえる。
空調機の必要能力低減手法の一つとしては、例えば、各空調機に熱量計を設置していて、データ出力を行っている場合は、その実測値に基づき、空調機の能力を低減することも可能である。
実測値がない場合においても、昔と比べれば様々な負荷が変化しているはずである。例えば、照明負荷は顕著ではあるが、LED照明となる前の負荷と現状を比較すると、負荷が大きく異なる。
今回は、空調機を更新する際に見直すべき熱負荷について紹介する。
下表に熱負荷の一覧を紹介する。
熱負荷の種類 | 冷房 | 暖房 | ||||
構造体負荷 | 室内負荷 | 空調機負荷 | 熱源負荷 | ○ | ○ | |
ガラス面負荷 | ○ | ○ | ||||
室内発生負荷 | 照明負荷 | ○ | △ | |||
人体負荷 | ○ | △ | ||||
その他内部発熱負荷 | ○ | △ | ||||
すきま風負荷 | △ | △ | ||||
間欠空調による畜熱負荷 | ○ | ○ | ||||
送風機による負荷 | ○ | – | ||||
ダクトにおける負荷 | ○ | ○ | ||||
再熱負荷 | ○ | – | ||||
外気負荷 | ○ | ○ | ||||
ポンプによる負荷 | ○ | – | ||||
配管の負荷 | ○ | ○ | ||||
装置負荷 | ○ | △ |
出典:建築設備設計基準
構造体負荷・ガラス面負荷
構造体に関わる負荷で見直しが可能であるとすれば、窓面の負荷の見直しだろう。
窓や内壁を除く構造体そのものの更新は、大規模改修が行われていない限りは考えづらい。
また内壁間での熱収支は全体の熱負荷からすればごくわずかである。
一方で、ガラス面負荷については例えばLow-Eガラスへ変更している場合は大きく熱負荷を低減することができる。
特に、20-30年前は単板ガラス5mmや6mmが使われていたこともあり、熱負荷低減量は凄まじい。
そのため、まずは、ガラス面負荷を見直すことをおすすめする。
以下に、ガラス面負荷の見直し要素
ガラス面負荷の見直し要素 | |
---|---|
方法① | ガラス種別を更新していないか(Low-Eガラス化等) |
方法② | ルーバーを設置していないか |
ガラスの種類 | 遮蔽係数 | 熱貫流率[W/(m2・K)] |
---|---|---|
透明ガラス6mm | 0.96(ブラインドなし) | 6.3(ガラス) |
Low-E6mm+空気層+透明ガラス6mm | 0.46(明色ブラインド) | 2.2(ガラス+ブラインド) |
照明負荷
照明負荷は比較的熱負荷の見直しを行い項目である。
照明については、比較的多くの建物で当たり前のようにLED化が進められている。
これは、照明に係る電気代の削減や発光性の良さが挙げられる。
例えば、下表でいうHfランプからLEDへの更新によって照明負荷を約3割とすることができる。
人体発熱
人体発熱自体は基本的に見直す部分がない。
1990年頃にはすでに人体発熱量に関する研究が行われており、一般的にその際に定義された人体発熱量を現在でも使用している。
(以下を参照いただければと思う。)
しかし、人員密度については見直す余地があると考えられる。
特に、0.5人/m2程度で計算を行っている室については、本当にそれだけの密度で室が利用されているか実態調査を行うことが望ましい。
なお、人員密度の見直しにより、外気量の見直しへも影響する。
つまり、室内負荷と外気負荷の見直しにより、熱負荷を大きく低減することができる可能性がある。
その他内部発熱負荷
内部発熱負荷は逆に熱負荷を加算する必要がある。
近年ではOA化が進み、室内により多くの什器が設置されている。
つまり、それら什器の発熱分を考慮したうえで、室内負荷を見直す必要がある。
外気負荷
建築設備設計基準は昭和50年にはじめて定められた。(以下のリンクに記述あり)
また、年々外気温湿度が上昇していることを踏まえると、少なくとも外気負荷が上昇している可能性が高い。(暖房負荷は低減される方向)
そのため、外気負荷も見直す要素のうちの一つである。
(東京の温湿度20年間の推移について下のリンクで紹介している。)
まとめ
今回は、空調機を更新する際に見直すべき熱負荷について紹介した。
今後ますます空調機の改修が世の中全体として増えてくる。
空調機の単純更新だけであれば、設計者の介入の余地がない。
設計者が生き残るためには、設計的要素により、空調機の仕様そのものを見直す術を身につけることが大切である。
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