マルチパッケージ_室内機と室外機の容量選定方法

こんにちは。

普段設計をしていると、マルチパッケージを使用することが多々あるかと思う。
特に、最近の事務所ビルでは中央熱源よりも個別熱源が主流となっている印象だ。
その中でも、室外機の設置スペースを比較的押さえることができるマルチパッケージは、比較的使用されることが多い。
だが、マルチパッケージの計算方法ややや複雑だ。
そのため、選定に際し苦手意識を持っている方も少なくない。

今回はマルチパッケージの室内機と室外機の容量選定方法を紹介する。

熱源、空調方式 -マルチパッケージの位置づけ-

熱源、空調方式は大きく「中央熱源方式」、「個別熱源方式」に大別することができる。
「中央熱源方式」は建物全体の空調を1つの熱源システムで行うことを指す。
「個別熱源方式」は分散熱源方式とも呼ばれ、各エリアごとに空調方式を独立させ、空調を行うことを示す。
マルチパッケージは一般に個別熱源方式に分類される。
詳細は以下の記事から参照頂きたい。

マルチパッケージとセパレート形パッケージの違い

マルチパッケージとセパレート形パッケージの違いは、室外機1台に対して室内機を何台まで接続できるかだ。
セパレート形パッケージの場合は、室外機1台に対して室内機は最大でも3台程度だ。
一方でマルチパッケージの場合は、室外機1台に対して室内機を最大64台まで接続することが可能だ。(ダイキンカタログより)

マルチパッケージの能力に上限こそあるがかなり大きな範囲の空調を1台の室外機で賄うことが可能だ。

室外機と室内機の能力

室外機と室内機の能力を以下に紹介する。
なお、室外機の能力はダイキンカタログより引用した。
また、室内機の能力は建築設備設計基準より引用した。

室外機の能力(1)
定格冷房能力[kW]22.428.033.540.045.050.056.061.567.073.077.585.090.095.0
定格暖房能力[kW]25.031.537.545.050.056.063.069.077.582.590.095.0100.0106.0
室外機の能力(2)
定格冷房能力[kW]100.0106.0112.0118.0122.0128.0136.0140.0145.0150.0
定格暖房能力[kW]112.0118.0125.0132.0140.0145.0150.0155.0160.5165.0
室内機の能力
定格冷房能力[kW]2.22.83.64.55.67.18.09.011.214.016.022.428.0
定格暖房能力[kW]2.53.24.05.06.38.09.010.012.516.018.025.031.5
カセット4方向
天吊り(露出)
天吊り(厨房用)
天吊り(隠ぺい)
床置き(立形)
●:ラインナップ有、○:一部メーカーのみ対応可

マルチパッケージの室内機と室外機の選定フロー

ここでは、熱負荷計算が完了した後における一般的なマルチパッケージの室内機と室外機の選定フローを紹介する。
なお、本稿ではあくまでも選定フローの大まかな流れを紹介する。
そのため、室内機や室外機に係る補正係数(経年劣化や冷媒管長補正等)は一切紹介しない点注意いただきたい。

まず、STEP①で各室熱負荷の整理を行う。
次にSTEP②、③で室内機と室外機の選定を行う。

STEP④が本稿のメインとなる部分だ。
室外機と室内機の能力をそれぞれ確認し、室外機能力が室内機能力の総和よりも大きい場合は選定完了となる。(STEP④-1)
一方で、室外機能力が室内機能力の総和よりも小さい場合は現在選定している室外機で満足しているかを検証することとなる。(STEP④-2)

選定フロー
STEP①各室熱負荷の整理
STEP②室内機の選定
STEP③室外機の選定
STEP④室外機と室内機の能力を確認
STEP④-1室外機能力>室内機の能力の場合 ⇒選定完了
STEP④-2室外機能力<室内機の能力の場合

STEP① 各室熱負荷の整理

マルチパッケージの選定にあたって、まずは、熱負荷から室内機の能力を算定する。
以下に各室の冷房負荷、暖房負荷(例)を示す。

室名称冷房負荷[kW]暖房負荷[kW]
室A3.03.0
室B10.012.0
室C5.04.0
室D8.08.0
室E15.015.0
合計41.042.0

STEP② 室内機の選定

STEP①で紹介した各室の室内機をカセット形(4方向)で選定した場合は、例えば以下の通りとなる。
なお、今回は室内機1台あたりの最大能力を5.6kWとして選定した。

室名称台数[台]冷房能力[kW]暖房能力[kW]
室A13.64.0
室B25.66.3
室C15.66.3
室D24.55.0
室E35.66.3
合計46.251.8

STEP③ 室外機の選定

室外機はSTEP①で紹介した合計の熱負荷より算定する。
本稿では補正係数等は一切加味しないため以下の室外機を選定する。

室名称台数[台]冷房能力[kW]暖房能力[kW]
室外機145.050.0

STEP④ 室外機と室内機の能力を確認

選定フロー
STEP④室外機と室内機の能力を確認
STEP④-1室外機能力>室内機の能力の場合 ⇒選定完了
STEP④-2室外機能力<室内機の能力の場合

STEP④では、室外機と室内機の能力を確認する。
室外機と室内機の能力は、冷房能力および暖房能力それぞれを比較する。
室外機能力>室内機能力の総和となる場合はSTEP④-1となる。
冷房能力もしくは暖房能力のいずれかが室外機能力<室内機能力の総和となる場合はSTEP④-2となる。
今回の計算例では、STEP②とSTEP③より室外機能力<室内機能力の総和となる。

なお、STEP④-1の場合は既に室外機と室内機の選定が完了していることとなる。

室名称台数[台]冷房能力[kW]暖房能力[kW]
室外機145.050.0
室内機能力の総和46.251.8

STEP④-2 室外機能力<室内機能力の場合

STEP④-2の選定フローを紹介する。
室外機の能力が室内機能力の総和よりも少ないため、現状選定している室外機でも問題なく冷暖房需要を満たすことが可能であるかどうかの確認を行う。
STEPⒶでは室外機能力と室内機能力の総和より全体の何パーセントであるか確認を行う。
次にSTEPⒷではSTEPⒶの値を用いて室内機の能力を按分する。
最後にSTEPⒷで求めた値が室内冷暖房負荷よりも大きいかどうかの確認を行う。(STEPⒸ)
STEPⒷ>室内冷暖房負荷の場合は選定完了となる。
一方で、
STEPⒷ<室内冷暖房負荷の場合は、室外機の番手を上げて再確認を行う必要がある。

STEP④-2フロー
STEPⒶ室外機能力 ÷ 室内機能力の総和より割合の確認
STEPⒷSTEPⒶの値を用いて室内機能力を按分
STEPⒸSTEPⒷ>室内冷暖房負荷となっているか確認
OKの場合・・・選定完了
NGの場合・・・室外機の番手を上げて再選定

STEPⒶ 室外機能力 ÷ 室内機能力の総和より割合の確認

室外機能力の方が室内機能力の総和よりも小さいため、室外機の能力を室内機の能力で按分した際に、冷房能力、暖房能力がそれぞれ室内負荷を満足するかどうかを検証する必要がある。
まず、室内機から室内機能力の総和を除し、室外機が室内機能力の総和の何パーセントにあたるかを確認する。
結果、割合は冷房能力が97.4%、暖房能力が96.5%となった。

室名称台数[台]冷房能力[kW]暖房能力[kW]
室外機145.050.0
室内機能力の総和46.251.8
割合97.4%96.5%

STEPⒷ STEPⒶの値を用いて室内機能力を按分

次に室内機の冷房能力と暖房能力に上記で求めた割合を乗じる。

室名称台数[台]冷房能力
[kW]
暖房能力
[kW]
按分後
冷房能力合計
[kW]
按分後
暖房能力合計
[kW]
室A13.64.03.513.86
室B25.66.310.9012.16
室C15.66.35.456.08
室D24.55.08.769.66
室E35.66.316.3518.24

STEPⒸ STEPⒷ>室内冷暖房負荷であるか確認

STEPⒷで求めた冷暖房能力が室内冷暖房負荷よりも大きいかどうか確認を行う。
一つでも下回っている場合は室外機の番手を上げて再選定を行う。
なお、計算例の場合は全ての室において冷暖房能力が室内冷暖房負荷よりも大きい結果となった。
そのため室外機と室内機の選定は完了となる。

室名称按分後 冷房能力合計 [kW]按分後 暖房能力合計 [kW]
室A3.513.86
室B10.9012.16
室C5.456.08
室D8.769.66
室E16.3518.24
室名称冷房負荷[kW]暖房負荷[kW]
室A3.03.0
室B10.012.0
室C5.04.0
室D8.08.0
室E15.015.0

まとめ

今回はマルチパッケージの室内機と室外機の容量選定方法を紹介した。
マルチパッケージの計算はやや複雑だが、計算の手順とその理由を理解できれば徐々に慣れてくるだろう。
また、マルチパッケージやセパレート形パッケージについてより深く学ぶことで本稿で紹介した計算も慣れてくるだろう。
こちらでこれらの機器についてより詳しく紹介しているため、興味がある方は参考にされたい。

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