空調機を使用する際のエアバランス -OA,SA,RA,EAのそれぞれの風量の考え方を紹介- 2024.01.27 こんにちは。 空調機を使用して空調計画を行う場合、OA,SA,RA,EAの各ダクト風量設定がわからなくなる場合が多い。特に空調機の空調と換気が整理できていないとどうしても混同してしまう。 今回は空調機を使用する際のエアバランスについて、OA,SA,RA,EAのそれぞれの風量の考え方を紹介する。 コンテンツ 空調機を計画する際のダクトの種類空調機のダクト計画の種類各ダクトの風量の考え方計算例その1における各ダクトの風量その2における各ダクトの風量その3における各ダクトの風量その4における各ダクトの風量その5における各ダクトの風量まとめ 空調機を計画する際のダクトの種類 空調機を計画する際には大きく以下の4種類のダクトが併せて計画されることが多い。 ダクトの種類 ① 給気 SA 空調された空気を室内まで届けるためのダクト ② 還気 RA 室内の空気を空調するために室内からの空気を吸い込むためのダクト ③ 外気 OA 外部からの新鮮な空気を室内へ取り込むためのダクト ③ 排気 EA 室内から外部へ空気を排出するために用いられるダクト ダクトの種類と役割の詳細は以下の記事を参考にしていただければと思う。 【これならわかる】ダクトの役割から仕組みまで一気に紹介こんにちは。よく設計業務や建築関連の話をしている際に聞くダクトという言葉。そんなダクトだがそもそもダクトって何?という方がよくいらっしゃるかと思う。一概にダクトといっても様々な用途があるためなおさら頭を抱えるものだ。特に今後建築関連に関わる... 空調機のダクト計画の種類 空調機の吹出口と吸込口が同室にあるパターンだ。この場合は給気と還気の風量は同じとなる。(但し排気分岐後の還気の風量は排気分減少する。) その2のパターンも考えられる。その1との違いとしては還気ダクトと排気ダクトがそれぞれ設けられているところだ。還気風量は給気風量から排気風量を差分した風量となる。 廊下へ空気をパスして還気を計画することも考えられる。廊下へ空調空気をパスすることで空気のカスケード利用が可能となるためだ。※空気のカスケード利用とは、空調空気の2次空気を異なる室へ供給することで完全な空調とまではいかないまでも、ある程度は温調されることをいう。メリットは上記の通りだが、デメリットはパスダクトのダクト径が大きくなることだ。天井裏の納まりがより厳しくなることが特徴だ。 外気風量分のみを廊下へパスする方法も考えられる。廊下へパスされた空気は最終的にトイレ等負圧(陰圧)を保ちたい室で排気される。 外調機の場合は左図が考えられる。必要最小限の空気をOHUより供給し、トイレ等の室で排気する方式だ。外調機はあくまで換気機器であるため、ファンコイルユニット等を別途室内に設置する必要がある。 各ダクトの風量の考え方 空調機は空調(室内負荷の処理)と換気(外気負荷の処理)の2種類の役割がある。つまり各ダクトの風量を検討する際も上記の2種類に分けて考えると理解しやすい。 前項で紹介したその2の空調ダクトのパターンを参考とする。その2における、空調の役割だけを左図に記した。空調を行う上では外気や排気は一切不要であるため、給気ダクトと還気ダクトのみとなる。 次に換気の役割だけを左図に記した。換気を行う以上、外気の取り込みが必要だ。また、外気を取り入れるためその分だけの排気が必要になる。また、外気を室内まで取り込む必要があるため給気ダクトも必要だ。 紹介した中では、唯一給気ダクトだけ空調と換気を兼ねるダクトとなる。そのため給気と還気の風量が等しくならない場合がある。(後述) 計算例 以下の条件を基に前項で紹介した5ケースの風量を確認する。 風量の条件 ① 給気 SA 2,400CMH ② 外気 OA 1,000CMH 風量の条件は左記のとおりとした。空調の負荷計算より求められる給気風量は求められ、換気計算より外気量が求められる。 風量の条件 ③ 排気 EA 1,000CMH ④ 還気 RA 1,400CMH ④RAがEAと混合している場合は2,400CMH 給気風量と外気風量より、排気と還気風量は左図の通りとなる。排気は外気と同じ風量であるはずなので1,000CMHとなる。還気は給気-外気(もしくは排気)となるため、1,400CMHとなる。但し還気ダクトを排気ダクトと兼用している場合は給気=還気となるため、2,400CMHとなる。(その1とその3が該当する。) なお、今回求めた給気と外気風量は以下の記事の数値を使用している。そのため、それぞれの根拠の計算方法を確認したい場合は以下の記事からご確認頂きたい。 空調機の風量と冷却プロセスの書き方こんにちは。設計初心者の壁の一つとしてあげられる項目。それは空調機の算定方法。空気線図を駆使して空調機の風量を算定する必要がある。この空気線図というのがなかなか厄介な存在で理解するためにはかなりの時間を要する。一方で空気線図を使いこなすこと... その1における各ダクトの風量 その1におけるダクト風量は左図の通りとなる。排気と兼用している部分の還気風量は2,400CMHとなる。排気ダクト分岐後の還気風量は1,400CMHとなる。 その2における各ダクトの風量 その1とは異なり排気ダクトと還気ダクトがそれぞれ独立している場合は、還気風量は1,400CMHとなる。 その3における各ダクトの風量 パスダクトがある分少しややこしく感じるかもしれない。しかし、給気風量が決まっており、給気が居室へ供給された後の空気の通り道はパスダクトしかない。そのため、パスダクト内の風量もおのずと2,400CMHとなる。パスダクト以降はその1同様の風量となる。 その4における各ダクトの風量 その4はその2が変化したパターンだと考えていただければよいだろう。給気が居室へ供給された後の空気は還気とパスダクトへ吸い込まれる。還気には排気は接続されていないため、還気風量は1,400CMHとなる。居室内の風量の収支を合わせるためパスダクトは2,400CMH-1,400CMH = 1,000CMHとなる。その後廊下からドアガラリを通じてWCへ空気が流れる。WC内に設置されている排気ダクトより1,000CMHが排気される。 その5における各ダクトの風量 その5は空調機ではなく外気機だ。そのため、空調を一切行わない。つまり、給気風量も1,000CMHとなる。(空調はファンコイル等、別途設置の空調機器で行われる。)外調機の場合は空気の流れが一方向のため、すべてのダクトが1,000CMHとなる。 まとめ 今回は空調機を使用する際のエアバランスについて、OA,SA,RA,EAのそれぞれの風量の考え方を紹介した。今回は比較的シンプルなエアバランスを紹介したが、実際には居室が複数あったり、排気を行う室が複数であったりすることも多々ある。そのため、エアバランスがより複雑化しやすいが、基本を押さえていれば応用が利くはずだ。 また、設計上エアバランスが成り立っていても、制御を組み込むことでエアバランスが成立しない場合もある。特に非定常使用室を対象にエアバランスを成り立たせている場合は注意が必要であるため、是非以下の記事を参考にして計画頂ければと思う。 非定常使用室を考慮したエアバランスで計画しよう今回はエアバランス第二弾。前回は1部屋単位でのエアバランスについて説明したが、建物全体に水平展開をした話をする。前回のエアバランス第一弾を確認されていない方はこちらから↓ 事務所にはどんな部屋があるか 事務所を例にとってみる。事務所の中には...
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