建築設備 -ダクト図について紹介-

こんにちは。

建築設備について、基本的な考え方は教科書や参考書で学ぶことが可能である。
しかし、実際にその考え方をどのように実務で生かすのかについては、教科書や参考書に記載していないことが少なくない。
ダクト図についてもその一つであり、実際に悩んでいる方も多いだろう。

今回はダクト図の作成例について紹介する。

  1. (参考)YouTubeで確認
  2. サンプル
  3. 換気設備計画
    1. 換気設備計画の検討フロー
    2. STEP① 全体換気と局所換気の確認
    3. STEP② 各室の換気量
      1. 計算の与条件を確認した上で各室の換気量を算定
      2. 各室の換気量を算定
      3. (参考)換気計算書とは
      4. 換気計算書はエクセルで作成されることが多い
    4. STEP③ 遮音の確認
    5. STEP④ 換気方式の確認
      1. STEP①とSTEP②、③の検討結果に基づき、換気方式を決定
    6. STEP⑤ ー給排気位置の検討
      1. STEP④を参考に給排気位置を検討
    7. STEP⑥ ーエアバランスー
      1. STEP④、⑤をベースに検討結果に基づき、風量の収支を確認
      2. 建物全体が±0となるように、風量バランスを調整
    8. STEP⑥ ドアガラリの確認
      1. 第二種換気・第三種換気のために、室間に開口が必要
      2. ドアガラリの設置個所を決定
      3. ドアガラリ面積の算定方法
      4. ドアガラリの有効面積を整理して意匠へ伝達
    9. STEP⑦ パスダクトの整理
      1. ドアガラリもしくはアンダーカットがない場合はパスダクトが必要
      2. パスダクトは原則面風速1.5m/s以下で計画
      3. 制気口廻りの構成
      4. 制気口の種類
    10. STEP⑧ ダクトルートの作成
      1. パスダクトとドアガラリ以外のダクトルートを作図
      2. ダクトサイズの選定方法
    11. STEP⑨ ダクト図の作成
      1. ダクトサイズを付記
      2. パスダクトやドアガラリを追記
      3. ファンと機器番号を追加
      4. ダンパーとベントキャップを追加
    12. STEP⑩ 機器表の作成
    13. STEP⑪ 制気口リストの作成
    14. STEP⑫ 特記仕様書の作成
  4. まとめ

(参考)YouTubeで確認

サンプル

今回は、以下に示す平面の換気設備計画を行うこととする。
サンプルは、オフィスや会議室、役員室等で構成された一般的なオフィスとする。

換気設備計画

換気設備計画の検討フロー

換気設備計画の基本的な検討フロー
STEP① ・全体換気と局所換気の確認
STEP② ・各室の換気量の確認
STEP③ ・遮音性能の確認
STEP④ ・換気方式の確認
STEP⑤ ・給排気位置の確認
STEP⑥ ・エアバランスの確認
STEP⑦ ・パスダクトの確認
STEP⑧ ・ダクトルートの作成
STEP⑨ ・ダクト図の作成
STEP⑩ ・機器表の作成
STEP⑪ ・制気口リストの作成
STEP⑫ ・特記仕様書の作成

次に、換気設備計画の検討フローを紹介する。
基本的な検討フローは、大きく12のステップに分けられる。
まず、全体換気および局所換気を確認する。
次に、各室の換気量を確認し、遮音性能および換気方式を確認する。
さらに、給排気の位置を確認し、エアバランス、パスダクト、ダクトルートを確認する。
これらを整理した後、ダクト図、機器表、制気口リスト、特記仕様書を作成する流れとなる。

STEP① 全体換気と局所換気の確認

まず、全体換気とする部分および局所換気とする部分を確認する。
今回の例では、全体換気は緑で示す居室部分を対象とし、局所換気は青で示す熱や臭気が発生する室を対象とする。

STEP② 各室の換気量

計算の与条件を確認した上で各室の換気量を算定

与条件
天井高 ・全て2.7mH
換気量 ・居室:30m3/h・人
・倉庫:5回/h、便所:10回/h

次に、各室の換気量を整理する。
今回の換気計画における検討条件として、すべての室において天井高さは2.7mとする。
また、各室の用途に応じた換気量は表に示すとおりとする。
具体的には、居室については一人あたり30m3/hを基準とし、倉庫は換気回数5回、便所は換気回数10回を基準として換気量を算定することとする。

各室の換気量を算定

各室の換気量を平面図上で整理する。
例えば、平面図下部中央の事務室2の換気量は、室内レイアウトから席数が合計9席であるため、30m3/h・人 x 9席 = 270m3/hとなる。
また、平面図下部右側の事務室1は、席数が17席であるため、30m3/h・人 x 17席 = 510m3/hとなる。
そのほか、平面図上部中央の男子トイレは、室面積が8.21m2であり、天井高さは与条件より2.7mHであるため、8.21m2 x 2.7mH x 10回/h = 230m3/hとなる。
このようにして、各室の必要換気量を算定する。

(参考)換気計算書とは

今回は、平面図に直接書き込む形で換気量を整理したが、本来は換気計算書を作成する必要がある。
換気計算書とは、建物内における必要換気量が各種基準を満たしていることを示すための計算書である。
主に、人員、換気回数、シックハウス対策、燃焼空気といった観点から計算書を作成する必要がある。
建設許可を得るためには、建築計画が法令に準拠しているかを確認する建築確認申請が必要であるが、換気計算書は建築確認申請時に提出が求められる書類の一つである。
なお、建築確認申請時においては、人員およびシックハウス対策、ならびに燃焼空気に関する計算について法的な確認が行われるため、換気計算書は非常に重要な計算書である。

換気計算
人員 ・人数に基づき必要な換気量を算定。
換気回数 ・室容積に応じて換気量を算定。
シックハウス ・化学物質濃度低減を目的とした計算。
燃焼空気 ・ガス機器等の燃焼設備を安全に使用するために必要な換気量を算定。

換気計算書はエクセルで作成されることが多い

換気計算書の作成イメージを紹介する。
換気計算書には特に定められたフォーマットがないため、エクセルで作成されることが多く、室ごとに人員、換気回数、シックハウス対策、燃焼空気に関する計算を行う。
これらの計算結果のうち、最も大きな数値を採用するのが原則である。

例えば、事務室1において、人員数による換気量は前述のとおり510m3/hとなる。
また、建築基準法に基づく一人当たりの換気量は20m3/h・人であり、20m3/h・人 x 17人 =340m3/hとなる。
さらに、シックハウス対策としては0.3回換気以上が求められる。
室面積は96m2、天井高さは2.7mHであるため、96m2 x2.7mH x 0.3回/h =80m3/hとなる。

以上の結果より、人員によって求められる換気量510m3/hが最も大きいため、事務室1の換気量は510m3/hとする。
このようにして、各室の換気量を求める。

STEP③ 遮音の確認

次に、遮音の確認について紹介する。
換気計画を行う際には、遮音性能の確認も必要である。
遮音の確認結果は、次項以降で決定する換気方式やパスダクト等の選定に用いる。
遮音性能は設備計画のみならず、建築の壁体構成や材料にも大きく影響される。
そのため、遮音のグレードについては、基本的に意匠担当者へ確認する必要がある。
今回は、会議室および役員室1、役員室2について、遮音に配慮した計画とする。

STEP④ 換気方式の確認

STEP①とSTEP②、③の検討結果に基づき、換気方式を決定

次に、換気方式を整理する。
ステップ1から3までの検討結果に基づき、適切な換気方式を決定することが重要である。
例えば、遮音要求のある会議室および役員室1、役員室2については、第一種機械換気で計画する。
次に、残りの居室である事務室1および事務室2、エントランスホールについては、第二種機械換気で計画する。
局所換気が必要であったトイレや倉庫等については、第三種機械換気で計画する。
なお、建物全体の換気量のバランス、ならびに給排気のバランスが合わない場合には、換気方式の変更や換気量の調整が必要となる。

STEP⑤ ー給排気位置の検討

STEP④を参考に給排気位置を検討

次に、各室の換気方式を踏まえ、給排気の位置を検討する。
なお、ビル管理法においては、給気口と排気口の離隔距離を6m以上確保する必要がある。
ただし、トイレ排気等のように臭気が発生する場合には、給気口と排気口の離隔距離を10m以上確保する必要があるため、注意が必要である。
そのほか、地方自治体の条例等により基準が異なる場合がある。
建物の規模にもよるが、外気の取入れ口と排気口は方位を分けて計画することが一般的である。
また、給排気口周辺の環境条件や、意匠上の見た目についても確認したうえで、給排気の位置を決定する必要がある。
今回は、会議室および事務室1、事務室2側から外気を取り入れ、トイレ側から排気する計画とする。

STEP⑥ ーエアバランスー

STEP④、⑤をベースに検討結果に基づき、風量の収支を確認

換気量および給排気の位置を整理した後、次にエアバランスについて整理する。
エアバランスとは、建物全体における風量の収支を示すものである。
第一種機械換気は、給気および排気のいずれも機械で行うため、建物内の風量収支は原則として0となる。
第二種機械換気は、給気を機械で行い、排気を自然排気として廊下等へ流す方式であるため、建物内の風量収支はプラスとなる。
第三種機械換気は、排気を機械で行い、給気を自然給気として廊下等から取り入れる方式であるため、建物内の風量収支はマイナスとなる。
例えば、事務室1は+270m3/hとなる。
また、男子トイレは-230m3/hとなる。

建物全体が±0となるように、風量バランスを調整

各室の風量を集計した後、建物全体の風量収支がプラスマイナスゼロとなるように、風量バランスを調整する。
風量バランスを調整する際には、各室の必要換気量を低減しないよう注意が必要である。
各室の風量を低減すると、換気計算書に記載した換気量を下回ることとなる。
そのため、風量を増加させる、あるいは給排気先を追加するなどの対応を行うこととなる。
今回の計画では、建物全体が正圧、すなわちプラス側の風量収支となっているため、いずれかの箇所から余剰空気を排気し、風量バランスを調整する必要がある。
例えば、第三種機械換気とする室の排気風量を増加させる方法が考えられるが、今回はエントランスホールから余剰空気を排気する計画とする。

STEP⑥ ドアガラリの確認

第二種換気・第三種換気のために、室間に開口が必要

次に、ドアガラリについて紹介する。
第二種機械換気および第三種機械換気を行う室では、廊下等への排気、または廊下等からの給気を行うため、各室の間に空気の通り道となる開口が必要となる。
各室間に開口を設ける方法としては、扉に開口を設ける方法と、パスダクトを設ける方法の二種類がある。

扉に開口を設ける方法としては、ドアにガラリを設ける方法、またはアンダーカットを設ける方法がある。
どの方法を採用するかについては、見た目に大きく影響するため、意匠設計者への確認が必要であるが、一般にパスダクトを採用するほどコストが上昇しやすい点に注意が必要である。
一方で、ドアガラリやアンダーカットは、扉部分に直接開口部が生じるため、遮音性能への影響を避けることができない。
そのため、換気性能、遮音性能、コストおよび意匠性を踏まえ、総合的に検討することが重要である。

ドアガラリの設置個所を決定

ドアガラリの設置場所を整理する。
今回は、トイレ周りおよび倉庫をドアガラリの設置箇所とする。
なお、事務室1および事務室2については、パスダクトを使用することとする。
図中に示すとおり、ドアガラリ部分に必要となる風量を、各室の換気量に基づいて記載する。

ドアガラリ面積の算定方法

次に、ドアガラリ面積の算定方法について紹介する。
ドアガラリに必要な開口面積は、風量、面風速および開口率から求めることができる。
また、ドアガラリの種類によって開口率は異なるため、製品ごとに都度確認することが重要である。
なお、騒音の観点から、ドアガラリの場合は面風速を2メートル毎秒以下、アンダーカットの場合は面風速を1.5メートル毎秒以下とすることが一般的である。

面風速
ドアガラリ 2.0m/s
アンダーカット 1.5m/s

ドアガラリの有効面積を整理して意匠へ伝達

室ごとに、ドアガラリの有効面積を整理する。
例えば、男子トイレ1の換気量は230m3/hであるため、ドアガラリの有効面積は230m3/h ÷2.0m/s ÷3600s/h = 0.032m2となる。
同様の手順で、他の室についてもドアガラリの有効面積を算定する。
ドアガラリ面積を算定した後、意匠担当者へ伝達し、意匠側で作図される建具表に反映する流れとなる。

STEP⑦ パスダクトの整理

ドアガラリもしくはアンダーカットがない場合はパスダクトが必要

次に、パスダクトについて整理する。
ドアガラリまたはアンダーカットを設けない場合には、空気の通り道としてパスダクトが必要となる。
具体的には、事務室1、事務室2およびエントランスホールにパスダクトを設置する計画とする。

パスダクトは原則面風速1.5m/s以下で計画

パスダクトは、原則として面風速1.5m/s以下で計画する。
面風速が過大となると、パスダクトから空気が円滑に流出・流入しない可能性があるためである。
制気口は、一般的に開口率70%程度を想定して大きさを決定する。

一例として、事務室1について算定する。
風量は510m3/hであるため、必要なダクト断面積は、510m3/h ÷ 1.5m/s ÷ 3600s/h = 0.095m2となる。
ダクトの形状にはさまざまな選択肢があるが、丸ダクトとする場合には、断面積が約0.096m2となる350φを選定することとなる。

次に、制気口のサイズについて算定する。
制気口の開口率を70%とすると、ダクト断面積0.095m2を用い、制気口に必要な有効面積は、0.095÷ 0.7 = 0.135m2となる。

制気口の形状もダクトと同様に複数考えられるが、正方形とする場合には、面積が0.16m2となる400mm × 400mmの制気口を選定することとなる。

他の室についても、同様の手順で算定を行う。

制気口廻りの構成

次に、制気口廻りの構成について紹介する。
換気設備における制気口廻りは、ダクト、制気口ボックス、ネックおよび制気口で構成される。
制気口ボックスは、消音性能の確保等の観点から、一般にダクトサイズに対して約200mm程度の余裕寸法を見込むことが推奨されている。

制気口の種類

次に、制気口の種類について紹介する。
制気口にはさまざまな種類があり、用途、意匠および気流特性に応じて使い分けられる。
代表的な制気口としては、図に示すものが挙げられる。

VHSは、可変ベーンにより風向の調整が可能であり、空調用途に多く用いられる。
HSは、構造がシンプルで、水平吹き出し用途によく用いられる。
アネモは、天井面に取り付ける円形または角形の制気口で、空気を放射状に拡散させることが特徴である。
ライン形は、細長いスリット状の形状を有し、天井や壁面に沿って設置される。

STEP⑧ ダクトルートの作成

パスダクトとドアガラリ以外のダクトルートを作図

次に、ダクトルートを作成する。
主に、パスダクトおよびドアガラリ以外のダクトルートについて作図を行う。
なお、図面上においては、四角にバツ印を付した記号を吹出口、四角に斜線を付した記号を吸込口として示す。

ダクトサイズの選定方法

次に、ダクトサイズの選定方法について紹介する。
ダクトサイズを算定する際には、ダクト摩擦抵抗線図、ダクトチェッカー、ダクトメジャーなどを用いる方法がある。
これらを使用するにあたっては、圧力損失が極力小さくなるようにダクトサイズを選定することが重要である。
具体的には、一般的な給排気ダクトにおいては、ダクト長さ1メートルあたりの圧力損失が1Pa以下となるように選定する。
圧力損失が過大となると、ファンに必要な能力が大きくなるほか、騒音の発生が懸念される。

圧力損失が大きすぎると
ファンの必要能力
騒音

STEP⑨ ダクト図の作成

ダクトサイズを付記

次に、作成したダクトルート図にダクトサイズを付記する。
丸ダクトの目安としては、風量170m3/hまでが150φ、400m3/hまでが200φ、720m3/hまでが250φ、1,180m3/hまでが300φとなる。
例えば、事務室1への給気量は510m3/hであるため、ダクトサイズは250φとする。
また、事務室2への給気量は270m3/hであるため、ダクトサイズは200φとする。
このようにして、各系統の風量に応じたダクトサイズを決定する。

パスダクトやドアガラリを追記

次に、パスダクトおよびドアガラリを追記する。
ドアガラリは、図面上ではDGと省略して表記することが多い。

ファンと機器番号を追加

次に、ファンおよび機器番号を図面に追記する。
ファンは、図面上では四角の中に丸を二つ描いた記号で表現することが多い。
なお、機器番号をファンと紐付けておくことで、後ほど作成する機器表において、各ファンの仕様や用途を明確に規定することができる。

ダンパーとベントキャップを追加

次に、ダンパーおよびベントキャップを追加する。
ダンパーとは、ダクトの途中に設けることで、ダクト内の空気の流れを開閉または調整するための装置である。
今回は、ファンの手前に、ファンの風量調整を目的としたダンパーをそれぞれ設置する。
なお、ファンの風量調整用のダンパーはボリュームダンパーと呼ばれ、図面上ではVDと省略して表記することが多い。

一方、ベントキャップとは、外壁面に設ける装置であり、外部からの雨水の侵入等に配慮するために設置される。
ベントキャップは、図面上ではVCと省略して表記されることが多い。

STEP⑩ 機器表の作成

次に、機器表を作成する。
機器表では、ファンの仕様を規定する。
主に、ファンの種類、設置位置、消音ボックスの有無、風量、静圧、電圧、消費電力、制御方法などを記載し、仕様を明確にする。

STEP⑪ 制気口リストの作成

次に、制気口リストを作成する。
制気口リストでは、制気口の仕様を規定する。
主に、設置される系統、用途、風量、器具の種類、制気口のサイズおよびボックスのサイズ、結露防止の有無、消音用グラスウールの有無などを記載し、仕様を明確にする。

STEP⑫ 特記仕様書の作成

最後に、特記仕様書について紹介する。
特記仕様書は、工事に共通する一般的な仕様を定義する図書である。
換気設備の分野においては、ダクトの工法、風量測定口の設置、フレキシブルダクトの使用範囲、ダクトの材質などについて規定する。

換気設備の例
ダクトの工法◯アングルフランジ●コーナーボルト(共板)
◯高圧1ダクト、高圧2ダクトの適用範囲は図示による
風量測定口●送風機に近接した吐出側ダクト
◯外気取り入れダクト
フレキシブルダクト●制気口BOXの接続用として1.5m以内の範囲で使用して良い。
ダクト材質●亜鉛鉄板
◯ガルバリウム鋼板

まとめ

今回はダクト図の作成例について紹介した。
あくまでも作成例の一例ではあるが、ぜひ参考にしていただければ幸いである。

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