建築設備 -スリーブについて紹介-

こんにちは。

建築設備計画を適切に進めるうえでは、意匠や構造、電気担当との連携が欠かせない。
機械設備単独で好き勝手に設計を進めると、他分野の計画との齟齬が生じ計画自体が破綻する可能性がある。
スリーブについてもその一つである。
スリーブとは、構造躯体に穴をあけること、また、穴をあける材料を指すが、構造担当との整合性が欠かせない。

今回は、スリーブの概要について紹介する。

スリーブの概要

スリーブとは建築の躯体に配管、ダクトを通すために必要な材料(筒状の管)のことをいう。
天井裏にスペースが十分ある場合は、ダクトや配管は天井裏に配管ダクトを計画する。
一方で、天井裏のスペースが確保できない場合はスリーブを設けることで構造体に穴を開け、その隙間に配管やダクトを計画する。

スリーブと構造強度

スリーブは、コンクリート構造物に孔を開けてダクトや配管を通すための部材であるが、スリーブを設けることにより、構造体の断面が減少し、構造耐力が低下するおそれがある。
そのため、スリーブの設置には構造上の制約や補強が必要となる。

スリーブのルール

RC造の場合は一般的に 1/3D、3d

RC造の場合は主に1/3Dや3dといった用語が用いられる。
1/3Dとは、梁せい(梁の高さ:D)の1/3までしか開口が開けられないことを意味する。
また、3dとは、スリーブ間の設置間隔をスリーブ径の3倍以上開けなければならないことを示す。

S造の場合は一般的に 1/2H、2H

S造の場合は主に1/2Hや2Hといった用語が用いられる。
1/2Hとは、梁せい(梁の高さ:H)の1/2までしか開口が開けられないことを意味する。
また、2Hとは、スリーブ間の設置間隔をスリーブ径の2倍以上開けなければならないことを示す。

地中梁の場合

地中梁に関するスリーブのルールについては直接基礎の場合と杭基礎の場合によって異なり、以下に示すとおりとなる。

スリーブの注意点

今回紹介したスリーブのルールはあくまでも一般論である。
そのため、都度構造設計者にスリーブのルールについて確認することが必須である。
例えば、呼び径150φのスリーブであれば、165φの外形寸法を持つスリーブを持つことが一般的となる。
その他にも、スリーブ径は配管・ダクト径の2サイズアップとすることも多い。
(事業者の社内ルールによっては3サイズアップとする場合もある。)
また、その他の以下の内容に注意されたい。

スリーブの注意点
スリーブのルール 案件ごとにスリーブのルールを構造担当者へ都度確認
スリーブの径 スリーブの径は呼び径ではなく、外形となるので注意が必要。
スリーブと
配管ダクトサイズ
基本的にスリーブ径は配管・ダクト径の2サイズアップとする。
(事業者の社内ルールによっては3サイズアップ等とする場合もある)
(標準仕様書では配管・ダクト外径の40mmアップと記載がある)

スリーブ計画諸条件

配管・ダクトのスリーブ材料は「標準仕様書」に記載有

配管やダクト用のスリーブの材料は標準仕様書に記載がある。
以下に標準仕様書の抜粋を示す。

具体的には、赤破線に示すとおりであり、外壁の地中部分で水密を要する部分のスリーブは、つば付き鋼管とし、地中部分で水密を要しない部分のスリーブは、硬質ポリ塩化ビニル管とする必要がある。

 

また、柱及び梁以外の個所で、開口補強が不要であり、かつ、スリーブ径が200mm以下の部分は紙製仮枠としてよいと記載がある。

スリーブの外形 -VU管-

VU管(塩ビ管)の呼び径と外径を以下に紹介する。
例えば、 VU管の呼び径50mmの外径は60mmである。
このように、呼び径と外径ではサイズが異なることが特徴である。

呼び径(D2) 外径(D1)
40 48mm
50 60mm
65 76mm
75 89mm
100 114mm
125 140mm
150 165mm

スリーブの外形 -紙製スリーブ(ボイド)-

紙製のスリーブ(ボイド)を使用する場合のサイズは以下のとおりの寸法となる。
スリーブの種類によって外径が異なるため注意が必要である。

呼び径(D2) 外径(D1)
50 55mm
75 80mm
100 106mm
125 132mm
150 158mm
200 209mm

配管・ダクトのスリーブ径は「標準仕様書」に記載有

配管やダクト用のスリーブの径は標準仕様書に記載がある。
以下に標準仕様書の抜粋を示す。
具体的には、赤破線に示す通り、スリーブ径は原則として管の外径(保温されるものにあたっては保温厚さを含む)より40mm程度大きなものとする必要があると記載されている。

配管・ダクトの保温の要否は「標準仕様書」に記載有

保温の要否により配管の外形が異なる。
そのため、スリーブの径を決定するにあたっては保温の有無や厚みも考慮する必要がある。
主には、結露や配管内の空気・水温度の維持の観点で保温の要否が決定される。
その他にも、事業者の社内ルール等で保温の要否が規定されている場合もある。

保温の厚みも「標準仕様書」に記載有

冷温水管やブライン管など室内の空気温度と乖離が大きい温度の流体を扱う配管の保温厚が大きい傾向がある。

スリーブの計画例

スリーブの開口補強は建築工事で行うことが一般的

スリーブの開口補強は建築工事で行うことが一般的である。
そのため、構造担当者へスリーブの径と数量を伝達しないと、スリーブが設置できなくなるため、注意が必要である。

スリーブを開けられる範囲の整理

構造設計者への伝達に際して、事前にスリーブを開けられる範囲を整理しておくと、検討をスムーズに進めることができる。
スリーブ計画の際には、色塗りなどでスリーブを設置できない範囲を着色するとわかりやすい。

スリーブの径と数量を整理

スリーブの径と数量を整理したうえで構造担当者へ伝達することが重要である。
その後、構造側で設計図へ反映する流れとなる。
例えば150φのダクトについては216φのスリーブ、250φのダクトについては318φを用いる。
但し、一般的に梁せいが900mmを超えることは多くなく、318φのスリーブを使用できない可能性がある。
その場合には、ダクト径を小さくするために、ダクトを複数に分割して納めるなどの方法が求められる。
なお、下図の例は機械設備図へのスリーブ図の記載だが、実務では構造図に対してスリーブの要望を整理すると構造担当者が理解しやすい。

スリーブ計画の注意点

スリーブを設置できる範囲は、構造上の制約により想定よりもはるかに少ない場合が多い。
特にPC梁などの特殊な構造体を用いている場合は、原則としてスリーブを設けられず、スリーブが設置可能な位置はさらに限られる。
そのため、スリーブ位置を前提に換気・空調計画を立てると、設計・施工の途中で天井裏スペース不足や他設備との干渉により計画が破綻するおそれがある。
天井裏は配管・配線・照明器具などの他設備も使用するため、スリーブは全体計画の中で慎重に配置する必要がある。
また、近年では階高を抑えて建築コストを削減する傾向が強まっており、その結果、天井ふところの寸法が小さくなるケースが増えているため注意が必要である。

スリーブの注意点
スリーブの範囲 スリーブを設置できる範囲は思ったよりも少ない。
天井裏のスペース スリーブありきの計画とすると、設計・施工中のどこかで躓くので注意。
その他 特に近年では、階高を抑えて費用を抑える傾向にあるため注意が必要。

まとめ

今回は、スリーブの概要について紹介した。

スリーブの基礎的な部分を把握しておくことで、臨機応変にダクト配管計画を行うことができるだろう。

コメント