建築設備 -機械設備の概要について紹介-

こんにちは。

建築業界に携わって間もないころ、また、建築業界に携わる前の学生の頃などの時期においては、機械設備と聞いても、一体何をするのかがよくわかっていないことも少なくない。
また、電気設備との違いについてもいまいち理解できていないことも多い。

しかし、どの分野でも共通ではあるが、建物を計画するうえでは、機械設備の存在は欠かせないほど重要である。

今回は機械設備の概要について紹介する。

意匠・構造・設備の役割

建築は大きく「意匠」「構造」「設備」の三種類に分類される。
一般の方からすれば、建築といえば一般的に建物の外観や内観など目に見える部分を指すことが多い。
しかし、実際には目に見える部分だけではなく目に見えない、構造や設備が建築を支えている。
意匠は建物の見た目や使いやすさを設計し、構造は安全性や耐久性を確保し、設備は快適性や機能性を支える役割を担っている。
これら三分野が連携することで、初めて質の高い建築物が実現される。

意匠の役割

建築における「意匠」は、顔や服装、髪型といった見た目をデザインする担当である。
建物の外観や内装、色彩、素材の選定など、視覚的な美しさや使いやすさを重視する。
利用者の印象や快適性に大きく影響を与えるため、デザイン性と機能性の両立が求められる。
単なる装飾ではなく、空間の価値や魅力を高める重要な役割を果たしている。
また、建物全体を統括する役割を担う。

構造の役割

建築における「構造」は、人の骨格を形成する担当である。
建物の骨組みや基礎を設計し、地震や風といった外力に耐える安全性を確保する。
目には見えにくい部分ではあるが、建物全体を支える最も基本的な要素である。
意匠や設備の設計を成立させるためにも、構造の安定性が不可欠である。

設備の役割

建築における「設備」は、人の血管や消化器、頭脳を形成する担当である。
空調・給排水・電気・通信など、建物内部の機能を支えるシステムを設計・管理する。
人が快適かつ便利に暮らせるよう、環境の調整やエネルギーの供給を担っている。
見えにくい部分でありながら、建物の利便性や性能を左右する極めて重要な要素である。

意匠・構造・設備の位置づけ

建築設計においては、「意匠」が全体の管理と調整を行う役割を担っている。
「構造」と「設備」は、それぞれの専門性を活かしながら、「意匠」と連携して設計を進める。
意匠が描く空間のイメージを実現するために、構造は安全性を、設備は快適性や機能性を確保する。
三者が密に協力し合うことで、品質の高い建築物が完成する。
併せて、各担当がより良い提案を行ったり、施主の要求を反映しながら設計を進めることが重要である。

意匠 人の容姿や大きさを決定、全体をマネジメント
構造 意匠の希望を最大限に反映した骨格作り
設備 意匠の要望をくみ取った設備機能づくり

各分野のパワーバランス

近年では、意匠・構造・設備の三分野は、ほとんど対等な立場で設計に関わっている。
過去は、意匠が主導するケースが多く見られた。
しかし、耐震偽装問題以降、構造はより高度な安全性が求められ、また、設備分野もカーボンニュートラルや省エネ義務化の流れから各分野の重要性が高まった。
建物が安全であることはもちろん、環境負荷を低減し、快適性を高めるためには、三者が同じ目線で議論し、協力していく必要がある。

設備の分類

設備は大きく、機械設備・電気設備にそれぞれ分類される。
機械設備は空調・換気・給排水・衛生など、人の快適な生活環境を支えるシステムを扱う。
一方、電気設備は照明・コンセント・通信・防災など、建物の機能性や利便性を確保する要素である。
両者は連携しながら、建築物の性能と使いやすさを高めている。
各設備の詳細については以下の記事より確認いただければと思う。

空調設備と給排水衛生設備

空調・換気設備

空調換気設備とは、人の「温熱感」「臭気」「音」「気流」等の快適性を計画することである。
設備は人の「温熱感」「臭気」「音」「気流」などの快適性に大きく影響する。
快適とは、利用者がこれらを「何も感じない」状態を指す。
つまり、設備は利用者に違和感を与えず、自然で心地よい環境をつくることが求められる。
このため、細やかな調整と高い性能が重要となる。

温熱感

温熱感とは部屋の中が「暑い」「寒い」という感覚のことを示す。
部屋の中の「暑い」「寒い」といった感覚は、居住者の快適性に直結する。
そのため、部屋の特徴や使用状況に合わせた適切な空調設備の導入が重要である。
適切な計画を行うことにより、室内環境を最適に保ち、快適な居住空間を実現する。
空調は単に温度を調整するだけでなく、湿度や気流も考慮する必要がある。

臭気

臭気とは部屋の中で発生する「臭い」のことを示す。
部屋の中で発生する「臭い」は、居住環境の快適性に影響を与える。
そのため、部屋の特徴に合わせた適切な換気設備を設けることが重要である。
効果的な換気により、臭いを除去し、新鮮な空気を取り入れることが可能となる。
換気設計は空間の用途や使用人数を考慮して行う必要がある。

音とは部屋の中で発生する騒音のことを示す。
部屋の中で発生する「騒音」は、居住者の快適性を損なう要因である。
そのため、部屋の特徴に合わせた適切な防音設計を行うことが重要である。
防音対策により、外部や隣室からの音を遮断し、静かな環境を確保する。
快適な居住空間を実現するために、防音設計は欠かせない要素である。

気流

気流とは空調吹出口から発生する風のことである。
空調吹出口から発生する「気流」は、居住者の快適性に大きく影響する。
そのため、気流に配慮した計画を行うことが重要である。
適切な気流設計により、不快な風感や温度ムラを防ぎ、快適な室内環境を維持する。
細やかな調整が、居心地の良さを左右する要素となる。

給排水衛生設備

人に必要なインフラには「水」「お湯」「排水」「ガス」などが含まれ、給排水衛生設備ではこれらを計画する。
これらのインフラが建物内に適切に整備されていなければ、利用することはできない。
建物の快適性や機能性を維持するためには、確実なインフラ整備が不可欠である。
そのため、設備設計ではインフラの導入計画が重要な役割を果たす。

水・お湯・排水・ガス

水・お湯・ガス・排水は、建物内で幅広く使用される重要なインフラである。
生活や業務に欠かせないこれらの設備は、快適で安全な環境を支える基盤となる。
適切な配管や設備設計により、効率的かつ安定した供給が可能となる。
インフラの整備状況が建物の機能性を大きく左右する。

設計の流れ

次に設計の流れについて紹介する。
設計は、主に、基本計画、基本設計、実施設計の三つの段階に分かれる。
まず基本計画では、与条件の整理や、コンセプトの立案・計画スケジュールの整理を行い、全体像を固めることが重要である。
次に基本設計で、諸元の整理や、設備方式の比較、設備方針の決定、スペースやルートの検討などを行う。
実施設計では、図面や計算書を作成し、細部を詰めていく流れとなる。
建物の規模や用途に応じて、工程は複雑になるが、この3段階を確実に進めることが設計の基本である。

与条件 省エネ・BCP等の要望の確認・整理
敷地周囲のインフラの確認
自然条件(温湿度、地震、津波、積雪)の確認
コンセプト 与条件を整理した上で、設計コンセプトを整理
スケジュール 概略工程の整理

基本計画

基本計画では、まず、与条件や、コンセプトを整理する。
与条件の整理としては、建物に求められる性能や敷地のインフラ状況、周辺環境、自然条件、建築主の要望などを把握し、それらに基づいて設備の方向性を決定する。
また、省エネやBCPといった要求事項も確認し設計方針を明確にすることが重要である。
さらに、事業計画としての設計工程や、工事工程、竣工時期を踏まえた、全体スケジュールを整理する。

基本計画 与条件の整理、設計コンセプト作り、計画スケジュールの整理
基本設計 諸元の整理、各種設備方式の比較、方針決定
概略機器容量、スペース検討、ルート検討
ゾーニング計画、機器搬入計画、行政協議
実施設計 図面作成、計算書作成、意匠・構造・電気への依頼事項の整理
確認申請図書、省エネ計算書、その他申請手続き、積算

基本設計

基本設計では、建物の使われ方や部屋の条件といった諸元を整理し、必要な設備方式を比較検討する。
その上で、建物の特徴や与条件に応じた、適切な設備方式を選定する。
また、必要な機器容量の検討や、機器スペース、設備ダクトや、設備配管のルート計画など、具体的な設計内容を詰めていく。
機器搬入の方法や経路の整理、行政との協議もこの段階で行う。
基本設計は、後の実施設計の精度を左右するため、非常に重要なフェーズである。

諸元の整理 各室の使われ方の確認(人員数の設定、空調条件、給排水の有無等)
設備方式比較 諸元を整理した上で、建物の特徴と踏まえた設備方式の比較・提案
スペース検討 設備方式の決定の上、建物に必要な設備機器の
機器スペースや機器容量、ダクト、配管ルートを整理
機器搬入 機器の搬入方法の整理
行政協議 手戻りが生じないように計画概要について行政へ事前確認

実施設計

実施設計では、実際に工事を発注するにあたって必要な図面や計算書を作成する。
基本設計でまとめた内容に基づき、空調・給排水衛生設備の詳細な検討を行い、図面として具体的に表現します。
また、意匠・構造・電気など、他分野との調整を行い、設備が問題なく設置できるように細部まで確認する。
さらに、積算を行い、概略工事費の算出や工事許可申請としての確認申請、省エネ適判など必要な申請手続きを行う。

計算書作成 基本設計の内容に沿って空調衛生関係の計算書を作成
図面作成 計算書の内容に沿って図面を作成
他分野調整 他分野(意匠・構造・電気)への依頼事項を整理
積算 図面の内容に沿って概略工事費を計算
申請 計画内容について行政の承認を得る(確認申請)
その他省エネ適判等の申請

まとめ

今回は機械設備の概要について紹介した。
本記事を参考に機械設備とはどのような業務を行うのかをイメージいただければと思う。

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