建築設備 -熱負荷計算について紹介-

こんにちは。

建築設備で設計を行う際に避けて通れない内容が、熱負荷計算だろう。
熱負荷計算は空調設備の設備容量を決めるための根拠となるため、非常に重要な計算である。
熱負荷計算を行う際に、特に何も考えずに200W/m2などと熱負荷を設定することも少なくはない。
しかし、省エネが求められている現在では、設備容量を少しでも抑えるために、適正な熱負荷を設定することは非常に重要である。

今回は熱負荷計算について紹介する。

熱は高温部から低温部へと移動する

熱は必ず高温部から低温部へ移動する性質をもつ。
この移動には、固体中を温度の高い部分から低い部分へと伝わる伝導、空気や水などの流体が移動することによって熱が運ばれる対流、そして物質のもつ熱エネルギーが電磁波として周囲に放出される放射の三つの形態がある。

熱の移動
伝導 熱エネルギーが固体中を高温部から低温部へ移動する現象
対流 空気や水などの媒体を通じて熱が移動して伝わる現象
放射 物質のもつ熱エネルギーが電磁波によって周囲に放出する現象

熱負荷とは室内を一定に保つために必要な熱量

熱負荷は大きく「冷房負荷」と「暖房負荷」に大別される。
また、それぞれ「外気負荷」と「室内負荷」に細分化することができる。
室内負荷はさらに「構造体負荷」「人体負荷」「什器負荷」「照明負荷」「日射負荷」等の要素にわけることができる。
さらに各負荷を構成する要素として「顕熱」と「潜熱」に分けられる。

熱負荷の種類

建築設備設計基準によれば熱負荷の構成要素は以下の通り大別される。
今回はこの中でも比較的よく使用することが多い構造体負荷から外気負荷の項目までそれぞれ紹介する。

熱負荷の種類 冷房 暖房
構造体負荷 室内負荷 空調機負荷 熱源負荷
ガラス面負荷
室内発生負荷 照明負荷
人体負荷
その他内部発熱負荷
すきま風負荷
間欠空調による畜熱負荷
送風機による負荷
ダクトにおける負荷
再熱負荷
外気負荷
ポンプによる負荷
配管の負荷
装置負荷
(凡例)○:考慮する、△:必要に応じ考慮する
出典:建築設備設計基準

熱負荷計算の種類

熱負荷計算は目的によって使い分ける

年間の熱負荷の傾向は左図に示す通りである。
冷房負荷と暖房負荷の最大値が、空調容量を選定する最大熱負荷計算で使用する値となる。
一方で、年間熱負荷計算は主に省エネ計算で用いられることが多い。
そのため、熱負荷の傾向を見据えて適切な空調方式とすることで省エネ化を図ることができる。
なお、一般的に熱負荷計算といえば最大熱負荷計算を示す。

熱負荷計算の種類
最大熱負荷計算 1年間のうち最大となる熱負荷を計算。
年間熱負荷計算 1年間の時刻別、日別等の熱負荷を計算。

熱負荷の種類と計算方法

構造体負荷

構造体負荷とは例えば壁面を通じて外部から室内へ侵入してくる熱負荷をいう。
例えば外気温度が35℃で外部側の壁面温度も同様に35℃であったとする。
コンクリートの厚さで35℃の熱を多少は吸収してくれる。
だがそれでも内側の壁面温度が30℃となったとする。
室内温度が26℃の場合、壁面温度が26℃よりも高いと室内温度が上昇する。
これが構造体負荷である。
構造体負荷には外壁や隣室に面する内壁、天井や屋根、床も含まれる。
つまり、室を構成する全ての構造体が対象となる。

構造体負荷 -熱貫流率-

熱貫流率は熱負荷計算において重要な指標である。
建築物の外壁・窓・屋根などの部位を通じて熱が移動する際、その伝わりやすさを表す値が熱貫流率である。
熱貫流率が小さいほど断熱性能が高く、冷暖房負荷を低減できる。

熱伝導率 材料内部を熱が移動する能力を表す値(W/m・K)。数値が小さいほど断熱性が高い。
熱伝達率 材料表面と空気の間で熱が移動する能力を表す値(W/m²・K)。
熱貫流率 外気から室内までを含めた全体の熱の伝わりやすさ(W/m²・K)。

構造体負荷 -熱貫流率の算定方法-

熱貫流率は、建物を構成する各部材の熱抵抗を合算することで算出される。
具体的には、室内側の表面熱抵抗と室外側の表面熱抵抗、さらに壁や窓、断熱材など各部材の熱抵抗をすべて足し合わせ、その合計値の逆数をとることで熱貫流率が求められる。
このとき、熱抵抗は「材料の厚さ÷ 熱伝導率」で表され、材料が厚く、かつ熱伝導率が小さいほど熱抵抗は大きくなる。
したがって、断熱材のように熱伝導率が小さい材料を厚く用いると、全体の熱抵抗が大きくなり、結果として熱貫流率が小さくなる。

熱貫流率の算定式
熱貫流率[W/m2・K]=1÷(室内側表面熱抵抗+Σ熱抵抗[m2・K/W]+室外側表面熱抵抗)

構造体負荷 -熱貫流率の算定方法-

熱貫流率の算定の流れについて紹介する。
まず、各部材の種類と厚みを確認する。
各部材の熱伝導率は部材によって一意である。
次に、熱伝達抵抗[m2・k/W]を算定する。
具体的には、各部材の厚み[m]を各部材の熱伝導率[W/(m・K)を除して算定する。
熱伝達抵抗算定後、各熱伝達抵抗を合計する。
熱伝達抵抗合計後、熱伝達抵抗合計値の逆数を求めることで、熱貫流率(熱通過率)[W/m2・K]を算定することができる。

構造体負荷 -構造体負荷の算定例-

構造体負荷は、各部位の熱貫流率に室内外の温度差を掛け、その結果にさらに部位の面積を乗じることで算出される。
つまり、熱貫流率が大きい、温度差が大きい、あるいは面積が広いほど構造体負荷は増加する。

構造体負荷の算定式
構造体負荷[W]=熱貫流率[W/m2・K] x 温度差[℃] x 面積[m2]

ガラス面負荷

ガラス面負荷は主に窓を通じて外部から内部へ発生する熱負荷を示す。
そのガラス面負荷はさらに「ガラス面通過負荷」と「ガラス面日射負荷」に細分化される。
ガラス面通過負荷は前項の構造体負荷と似たような考え方である。
一方でガラス面日射負荷は太陽からの直接的な日射取得である。
そのため窓面積と方位に応じてある一定の熱負荷が発生する。
ガラス面日射負荷を小さくする方法としては下表の内容が考えられる。

ガラス面負荷の種類
その1 ガラス面通過負荷
その2 ガラス面日射負荷
ガラス面日射負荷を小さくする方法
その1 日射遮蔽型窓の採用
その2 窓面積の縮小
その3 庇の設置

ガラス面負荷 -ガラス面通過負荷-

ガラス面通過負荷は、ガラスの熱貫流率に室内外の温度差を掛け、その結果にガラス面積を乗じることで算定される。
つまり、熱貫流率が大きい、温度差が大きい、あるいは面積が広いほどガラス面通過負荷は増加する。

ガラス面通過負荷の算定式
ガラス面通過負荷[W]=熱貫流率[W/m2・K] x 温度差[℃] x 面積[m2]

ガラス面負荷 -ガラス面日射負荷-

ガラス面日射負荷とは、建物に入射する日射により室内へ持ち込まれる熱負荷である。
特に窓ガラスなどの開口部を通じて侵入する日射は、室内温熱環境および空調負荷に大きな影響を及ぼすため、熱負荷計算において極めて重要な要素である。
ガラス面通過負荷は、ガラスの熱貫流率に室内外の温度差を掛け、その結果にガラス面積を乗じることで算定される。

ガラス面日射負荷の算定式
ガラス面日射負荷[W]=日射熱取得[W/m2] x 面積[m2]

ガラス面負荷 -日射遮蔽窓-

出典:三協立山株式会社 HP

窓性能を向上させることでガラス面負荷を低減できる。
その評価指標のひとつが遮蔽係数(Shading Coefficient, SC)である。
遮蔽係数は、基準ガラス(3mm透明ガラス)に対して、対象ガラスがどの程度日射を透過させるかを表す比率で、値が小さいほど日射の透過が抑えられ、冷房負荷の低減につながる。
例えば、Low-E複層ガラスや日射反射ガラスなどは、遮蔽係数が低く設計されており、夏期の日射熱取得を抑制できる。
その結果、室内の冷房エネルギー消費を削減し、快適性と省エネ性を両立させることが可能となる。

ガラス面負荷 -窓面積の縮小-

窓面積を縮小することでガラス面負荷を低減できる。
窓は壁に比べて断熱性能や日射遮蔽性能が低い場合が多く、面積が大きいほど外部からの熱の出入りや日射取得量が増加する。
そのため、必要以上に大きな開口部を設けると、夏期には冷房負荷、冬期には暖房負荷が増大し、エネルギー消費が増える原因となる。
窓面積を適正に縮小することで、外部からの不要な日射熱取得を抑制し、冷房負荷を低減できるとともに、冬期の熱損失も減らすことができる。
さらに、ガラスやサッシの性能向上と組み合わせれば、より高い省エネ効果が期待できる。

ガラス面負荷 -庇の設置-

庇を設置することでガラス面負荷を低減できる。
窓の外側に庇(ひさし)やルーバーを設けることで、直射日光が室内へ侵入するのを効果的に遮ることができる。
特に夏期には高い位置から日射が差し込むため、水平ルーバーや庇が有効であり、冬期の低い日射は室内に取り込むことも可能である。
このように季節や太陽高度を考慮した設計は、冷房負荷低減に大きく寄与する。

ルーバーの特徴
水平ルーバー 南面のように太陽高度が高い日射を遮るのに有効。
縦ルーバー 東面・西面のように太陽高度が低い日射を遮るのに有効。

照明負荷

照明負荷とは照明からの発熱を指す。
室内で発生する発熱のため室内発熱に分類される。建築設備設計基準では下表に示すとおり、照明器具ごとに照明からの発熱量が設定されている。

設計照度[lx]室の例LED照明蛍光灯
下面開放形[W]ルーバー有[W]下面開放形[W]ルーバー有[W]アクリルカバー付[W]
750事務室等911161825
500会議室等68111217
300受付357710
200設備諸室23557
150階段室23445
100廊下12334
75車庫12223

出典:建築設備設計基準

人体負荷

人体負荷とは人からの発熱を示す。
我々人は常に発熱をしている。
平均体温は36.5℃程度だろう。
つまり室内温度を36.5℃以下にしようと思った時点で人体からの発熱が熱負荷として計上される。

室名 人員密度[人/m2] 室内温度が28℃の場合 室内温度が26℃の場合
潜熱[W/人] 顕熱[W/人] 潜熱[W/人] 顕熱[W/人]
事務室 0.15 66 55 53 69
会議室 0.5 62 55 49 67
講堂 0.7 47 51 34 64
食堂 0.8 81 65 67 79
出典:建築設備設計基準

什器負荷

什器負荷といえば、身近のところでは例えばパソコンだろう。
パソコンは電気を使用しているため使用中は常に発熱する。
その他にも事務所ではコピー機も置かれているはずだ。
コピー機からも同様に発熱がある。
特殊施設等では精密機器や専用機器などからの発熱も空調計算(熱負荷計算)に見込む必要がある。

室用途 発熱量[W/m2] 負荷率
事務室 15~30 0.6
会議室 10~15 0.6

間欠空調による蓄熱負荷

間欠空調による畜熱負荷とは非空調の時間から空調を行う時間に移行するときに見込む負荷である。
非空調運転の時間が長いほど建物の躯体に熱が蓄積される。
これも加味して空調容量を決定するべきだといった主旨から間欠空調による畜熱負荷を見込むことがある。
通常、9時に日射を受けている構造体負荷およびガラス面熱通過負荷に係数1.1程度を乗じて計算を行う。
なお、24時間連続で空調を行う室は間欠空調による畜熱負荷は発生しない。

送風機による負荷

送風機による負荷とは空調を導入する際に必ず空調機内にファンから発生する熱負荷である。
空調機には一般的にファンが導入されるが、そのファンも電気で駆動するためファン自体が発熱をしている。
そのファンの発熱も加味した空調容量を決めるために送風機による負荷も考慮する必要がある。
具体的には室内冷房負荷に係数1.05を乗じて計算を行う。

ダクトによる負荷

ダクトによる負荷とはダクトを通じて室内に快適な空気を供給する場合に発生する負荷のことである。
例えば壁掛けのルームエアコンではダクトがないためダクトによる負荷は発生しない。
一方でセントラル空調にあるような床置きの空調機を用いた場合はダクトで各空調対象室へ空調空気を供給する。
そのためダクトによる負荷を見込む。

再熱負荷

再熱負荷とは空気をいったん冷やした後に再度空気を暖めてから供給するために発生する負荷を示す。
再度空気を暖めるため単純に暖める分だけの負荷が発生する。
主に病院や研究施設等、比較的室内の温湿度に対しデリケートな室に再熱負荷が発生することが多い。

外気負荷

外気負荷とは、空調システムに外気を導入する際に発生する熱的な負荷のことである。
例えば、室内温度が26℃に保たれている場合を考える。このとき、35℃の高温な外気を室内に取り込むと、外気の熱が流入し、室内温度は上昇する傾向を示す。
これにより、空調機は室温を維持するために追加の冷房エネルギーを必要とする。
このように、外気を導入する際に発生する熱負荷を外気負荷という。

外気負荷の算定式
外気負荷[W]=(空気比熱x空気密度x比エンタルピー差[kJ/kg]x風量[m3/h])÷3.6[kJ/h・W]
空気比熱=1.0、空気密度=1.2

外気負荷 -算定例-

以下の空気の状態において、風量が500m3/hの場合の外気負荷を算定する。
まず、室内条件より室内外の比エンタルピー差は27.9kJ/kgとなる。
そのため、外気負荷は27.9kg/kgおよび風量500m3/h、その他にも空気比熱と空気密度を乗じ、3.6で除することで外気負荷4,650Wを求めることができる。

空気条件 乾球温度[℃] 相対湿度[%] 比エンタルピー[kJ/kg]
室内 26 50 52.9
室外 35 50 80.8
差分 9 27.9
外気負荷の算定式
外気負荷[W]=(空気比熱x空気密度x比エンタルピー差[kJ/kg]x風量[m3/h])÷3.6[kJ/h・W]
外気負荷[W]=(1.0×1.2×27.9[kJ/kg]x500[m3/h])÷3.6[kJ/h・W]=4,650[W]
空気比熱=1.0、空気密度=1.2

熱負荷計算書作成例

㈱国際テクノロジーセンターが提供しているAPACを利用することで、熱負荷計算を容易に行うことが可能である。
本システムは建築設備設計基準に準拠したプログラムであるため、官庁案件においても一般的に使用されるソフトウェアである。
さらに、熱負荷計算において重要となる外気負荷、透過日射負荷、内部発熱など、多岐にわたる要素を考慮した正確な計算を行うことができる。
また、ユーザーインターフェースが分かりやすく設計されており、入力条件の設定や計算結果の確認をスムーズに行える点も特徴である。
加えて、算定結果は詳細な帳票として出力できるため、設計検討や施主への説明資料としても活用可能である。

熱負荷計算の注意点

熱負荷計算の際には以下の点を確認し、重大な問題の発生を予防することが重要である。

熱負荷計算にあたっての注意事項
室内温湿度 各室の室内温湿度を必ず確認すること。
例えば2℃間違えると、空調機能力の増大だけでなく、空調機風量が20%異なることがある。
ペリメーターの熱負荷 ペリメーター部分の熱負荷を分けて計算する場合、ペリメーターの熱負荷とする範囲がするかが設計者の意図によって異なる。
カスケード換気 パスダクト等により隣室からの空気を二次利用する場合は、室内に流入する温湿度を考慮して熱負荷計算を行うことが望ましい。
外気温湿度 年々外気温湿度の上昇が顕著である。
そのため、建築設備設計基準に記載の外気温湿度では空調容量が満足しない可能性がある。
また、24時間空調を行う場合は夜間の外気温湿度も確認が必要。
室面積 熱負荷計算において面積を使用して熱負荷を算定している項目も多い。
(例えば照明負荷や什器負荷等)
室面積を確認することが望ましい。

目安となる熱負荷原単位

熱負荷と機器容量の目安を把握しておくことで重大な間違いを防ぐことができる。
一般的な目安として、室内の熱負荷は150W/m² 程度であるとされる。
これに対応する空調機器の容量は、200W/m² 程度となる。
特に熱負荷計算を行う際には、これらの数値を意識して、計算結果を確認することが望ましい。

まとめ

今回は熱負荷計算について紹介した。
熱負荷計算の要素とその傾向を把握しておくことで、熱負荷計算ができるようになるだけでなく、導入する空調機容量が適切であるかどうか等も判断できるようになるだろう。

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