建築設備 -熱源設備について紹介-

【↓機械設備入門一覧↓】(プルダウン)

こんにちは。

設備計画の初期で設計方針に大きく悩む内容が熱源設備である。
特に、各設備機器の特性を理解しておかないと、意図しない空調設備となってしまう。

今回は、熱源設備について紹介する。

空調でいう「熱源」とは、部屋を冷やしたり温めたりするための熱をつくり出すしくみや装置のことを示す。
冷房のときには冷たい熱(冷熱)を、暖房のときには温かい熱(温熱)を精製する。
また、熱源の役割は、人が快適に過ごせるように室内の温度や湿度をちょうどよく保つために必要な冷水や温水を作ることである。
例えば、夏に暑くなった部屋を冷やしたり、冬に寒い部屋を暖めたりするために、空調設備側から冷水や温水の要求がある。
空調設備側からの要求により熱源が冷水や温水を供給する。

熱源の概要
定義 部屋を冷やしたり温めたりするための熱をつくり出すしくみや装置のこと。
役割 熱源の役割は、人が快適に過ごせるように室内の温度や湿度をちょうどよく保つために必要な冷水や温水を作ることである。

熱源の方式と構成

熱源の方式

熱源方式は大きく「中央熱源方式」と「個別熱源方式」に大別できる。
中央熱源方式は「1次側機器」や「1次側補機」、「2次側機器等」に分類され、それぞれを組み合わせることで空調設備を構成する。
一方で個別熱源方式は業務用であれば「パッケージエアコン」や「ビルマルチエアコン」、家庭用であれば「ルームエアコン」により空調を行う。
(なお、個別熱源方式は個別空調方式ともいい、熱源設備ではなく空調設備に分類されることも多い)

大きな違いは一括空調か個別空調!

中央熱源方式とは、一つの大きな熱源システムで建物全体の空調を行う方式である。
熱源機で冷水や温水をつくり、それを各空調機に供給する。
空調機ではその冷温水と空気を熱交換させることで、室内を冷却または加熱する。
一方、個別熱源方式とは、建物内に複数の熱源を設置して空調を行う方式である。
代表例としては家庭でも使用されるエアコンがあり、必要な場所ごとに設置して室内を冷却または加熱する。

中央熱源と個別熱源の違い
中央熱源 一つの空調システムで建物全体の空調を行う方式
個別熱源 複数の熱源を設置し、建物全体の空調を行う方式

中央熱源の構成

中央熱源の場合は様々な機器を使用して熱源システムを構成する。
熱源機で冷たい水(冷水)や温かい水(温水)を発生させる。
熱源機で作られた冷水や温水を空調2次ポンプが各空調機器(空調機やファンコイルユニット(FCU)へ供給する。
空調機器では熱源側から供給された冷水や温水と室内側の空気を熱交換させる。
結果冷却、加熱された空気を室内へ供給し冷房、暖房を行う。

熱源機(1次側機器)

熱源機器には大きく分けて空冷式と水冷式がある。
まず、空冷式の代表的なものとして「一般形」があり、空気を熱源として利用する熱源機である。
一方、水冷式にはいくつかの種類がある。
「吸収式冷温水発生機」はガスや油を熱源として利用し、冷水や温水を供給する熱源機である。
「真空式温水発生機」は同じくガスや油を熱源とするが、暖房専用として用いられる熱源機である。
また、「ターボ冷凍機」は冷房に特化した熱源機であり、大規模施設で利用されることが多い。

熱源機器の種類
空冷式 一般形 空気を熱源とする熱源機
モジュール形 空気を熱源としモジュール単位で台数制御を行う熱源機
水冷式 吸収式冷温水発生機 ガスや油を熱源とする熱源機
真空式温水発生機 ガスや油を熱源とし暖房専用として用いられる熱源機
ターボ冷凍機 冷房に特化した熱源機

空冷式モジュールチラー

モジュール形熱源機とは、複数台(モジュール)を組み合わせて一つの熱源機として運転する方式である。
室内側の負荷に応じて、モジュール単位で稼働台数を選択できるため、必要な能力に合わせた柔軟な運転が可能となる。
これにより、省エネルギー性や運転効率の向上が期待できる。
また、万が一一部のモジュールが停止した場合でも、残りのモジュールで運転を継続できるため、信頼性の高いシステムである。
さらに、電気で駆動することが特徴であり、設置や運用において比較的扱いやすい熱源機である。

吸収式冷温水発生機

吸収式冷温水発生機とは、都市ガスや油を燃料として冷水と温水を発生させる装置である。
災害時やインフラの途絶に備え、電気と都市ガスなど複数の熱源を組み合わせる多重化システムにおいてもよく採用される。
また、官庁施設において採用事例が多いことも特徴である。
その理由として、経年劣化によって機器全体を更新する必要がなく、部品の交換のみで長期間にわたり運転を継続できる点が挙げられる。

ターボ冷凍機

ターボ冷凍機とは、冷媒を用いて冷水を発生させる熱源機である。
冷房専用の機器であり、冷水のみを発生させることができる点が特徴である。
また、電気によって駆動されるため、環境負荷が比較的少なく、安定した運転が可能である。
ターボ冷凍機は遠心式の圧縮機を採用しており、大量の冷水を効率よく製造できることから、大規模なオフィスビルや病院、商業施設、工場などで広く利用されている。
さらに、部分負荷運転時においても効率が高く、省エネルギー性に優れる点も利点である。

熱源補機(1次側補機)

水冷式の熱源機を使用する場合、熱源補機を別途設置する必要がある。
熱源補機とは冷却塔を指すことが多い。
冷却塔は、熱源機に冷却水を供給するための装置であり、冷却水は大気と直接あるいは間接的に熱交換することで冷却される。
このとき、水が蒸発する際に熱を奪う気化熱の原理を利用して効率的に冷却を行う。
冷却塔には大きく分けて開放式と密閉式があり、一般的には開放式が多く使用される。

冷却塔の種類と特徴
開放式 外気と空調用循環水を直接熱交換する方法。
空調用循環水は大気へ開放されるため水質悪化の恐れがある。
密閉式 外気と空調用循環水を間接的に熱交換する方法。
空調用循環水として水以外に寒冷地で用いられるブライン(不凍液)を使用することも可能。

空調用2次ポンプ(二次側補機)

空調二次ポンプとは、熱源機で作られた冷水や温水を空調機器(空調機やファンコイルユニット)まで供給するためのポンプである。
空調二次ポンプは、室内側の冷房や暖房の需要に応じて運転を制御することが多く、必要な量の冷温水を効率的に供給する役割を持つ。
このポンプにより、建物内の各空調機器に均等かつ安定した冷温水が届けられ、室内温度の精密な制御が可能となる。
また、負荷の変動に応じてポンプの運転を調整することで、省エネルギー運転にも寄与する重要な装置である。

空調機(二次側機器)

空調機とは、室内の空気を循環させながら、温度や湿度を調整する機械である。
空気を循環させる過程で、冷水や温水、または冷媒を用いて空気を冷やしたり暖めたりし、快適な室内環境を作り出す。
さらに、空調機は単に温度を調整するだけでなく、空気の清浄化や湿度の制御、換気も同時に行うことが多い。
(室内環境の精度が個別空調とは大きく異なる部分である。)
また、空調機を適切に運転することで、室内の気流を均一に保ち、快適性と省エネルギーの両立が可能となる。

空調機の役割
室内の空気をぐるぐると循環させる。
循環させる過程で空気を冷やしたり暖めたりして空調を行う機械。

ファンコイルユニット(二次側機器)

セントラル空調側の機器は、建物全体の空調システムと接続されており、室内の空気を冷却または加熱する際に冷水や温水を熱媒体として利用する。
これにより、複数の室内ユニットに効率的に熱を供給することが可能である。
これに対して、一般的な家庭用エアコンは冷媒を直接用いて室内の空気を冷却・加熱する方式であり、冷温水を介して熱を伝達するセントラル空調とは運転原理が異なる。
したがって、セントラル空調は冷温水を使用して熱交換を行う点で、個別空調であるエアコンと区別される。

ファンコイルユニットの役割
・セントラル空調側の機器と接続される。
・熱のやり取りに冷水、温水が用いられる。

個別熱源の構成

個別熱源は主に室外機と室内機で構成される。
室外機と室内機は冷媒で接続される。
冷媒とは冷却や空調に使われる「物質」で、多くの場合は気体(ガス)や液体になる物質である。
室外機で冷媒を圧縮・膨張もしくは空気と熱交換させることで冷却・加熱させる。
室内機で室内の空気と冷媒を熱交換させ室内の冷房、暖房を行う。

個別熱源の種類
家庭用 ルームエアコン 家庭用のエアコン。業務用と比べ耐用年数が短い。
業務用 パッケージエアコン 家庭用に比べ大規模な空間の空調を行うことが可能。
ビルマルチエアコン 室外機1台に対し複数台の室内機を設置することが可能。
比較的大規模な建物でも使用されることが多い。

ルームエアコン

ルームエアコンは、一般家庭の居室や寝室などで広く使用されている空調機器である。
室外機は通常、ベランダや屋外壁面など建物の近くに設置され、室内機とは冷媒管を通じて接続される。
ルームエアコンは、1台ごとに独立して温度や運転モードを設定できるため、部屋ごとに快適な環境を作りやすい点が特徴である。
また、設置やメンテナンスが比較的容易で、一般的な住宅構造に対応しやすい点も家庭用としての利点である。

パッケージエアコン

ルームエアコンと比べると、パッケージエアコンは比較的冷暖房能力が大きい。
また、室内機の種類も豊富である点が特徴である。
さらに、設置に関する制約のひとつである冷媒管の最大長さも異なるため、パッケージエアコンの方が室外機の設置位置を比較的自由に設定しやすい。

項目 ルームエアコン パッケージエアコン
能力 2.2-5.6kW 3.6-25.0kW
室内機種類 少ない 多い
電源の種類 1φ100V,1φ200V 1φ200V,3φ200V
電源供給先 室内機or室外機 室外機
最大冷媒管長 10-20m 50-100m
最大冷媒管高 15-20mH 30mH
法定耐用年数 6年 13-15年

ビルマルチエアコン

ビルマルチエアコンとは、室外機1台に対して複数の室内機を接続できる空調機器である。
室外機の能力によって異なるが、一般的には1台の室外機に最大で60台程度の室内機を接続することが可能である。
この構造により、大規模なオフィスや商業施設など、複数の部屋やゾーンを個別に制御しながら効率的に空調することができる点が大きな特徴である。
ビルマルチエアコンには、冷房と暖房を同時に運転できる「冷暖フリー方式」と、冷房と暖房を切り替えて運転する「冷暖切り替え方式」の2種類がある。
冷暖フリー方式では、複数の室内機が同時に冷房・暖房を行える、一方、冷暖切り替え方式では室外機全体が冷房か暖房のどちらかに統一されるため、運用時に注意が必要である。

ビルマルチエアコンの役割
冷暖切り替え 室外機に接続されている系統全体が、冷房もしくは暖房のみ運転可能。
冷暖フリー 室内機のあるグループ単位で冷房と暖房を切り替えが可能。

中央熱源と個別熱源

中央熱源が必要かどうかは、建物の耐震性や特殊な室用途の有無によって判断されることが多い。
耐震性の観点からは、多重熱源化を行う場合や、停電や災害時にも安定して供給される中圧ガスを利用する場合に、中央熱源の設置が必須となる。
また、高温・高湿やクリーンルームなど、空気環境に対して高い精度が求められる特殊な室用途が建物内に存在する場合も、中央熱源が不可欠である。

室内環境・室用途等 建物種別(例)
恒温恒湿が要求される室 病院・研究所等
建物の耐震性能:甲類 重要施設
BCP対策が求められる建物 重要施設
寒冷地 すべての建物

中央熱源の分類

中央熱源は、その用途や建物の空調需要に応じて分類される。
「冷房専用」や「暖房専用」は、年間を通じて冷房需要もしくは暖房需要がある場合や、冷房と暖房の需要が混在する場合に用いられる。
次に「冷暖兼用」は、冷房需要と暖房需要が混在しない建物で使用されることが多く、オフィスで広く採用されている。

中央熱源の分類
冷房専用 年間を通じて冷房需要がある場合、冷房と暖房需要が混在する場合
冷暖兼用 冷房需要と暖房需要が混在しない場合(一般的なオフィス)
暖房専用 年間を通じて暖房需要がある場合、冷房と暖房需要が混在する場合

冷房専用・暖房専用等の採用例

中央熱源として冷房専用もしくは暖房専用を採用する際には年間の熱負荷を確認することが重要である。
年間の熱負荷のうち冷房需要と暖房需要が混在する場合もしくは、冷房需要もしくは暖房需要しか存在しない場合に冷房専用もしくは暖房専用を採用することが多い。

中央熱源の制御

台数制御

熱源機を2台以上設置して台数制御を行うことで、低負荷時においても高効率で運転することが可能となる。
また、故障時においても故障していない熱源機で運転することが可能となる。

1次ポンプ方式と2次ポンプ方式

中央熱源システムの配管方式には、主に「一次ポンプ方式」と「二次ポンプ方式」がある。
一次ポンプ方式は、熱源機で生成した冷水や温水を一次ポンプでそのまま空調機へ送り出す方式であり、シンプルな構成である一方、負荷の変動に応じた流量制御が難しいという課題がある。
これに対して二次ポンプ方式は、一次ポンプが熱源機への冷温水供給させることに対し、空調機へは二次ポンプを介して供給する仕組みとなっている。
この方式では、空調機の負荷に応じて二次ポンプの流量を柔軟に制御できるため、省エネ効果が高く、建物全体の運転効率を向上させることができる。
そのため、大規模建物や変動負荷が大きい施設では、二次ポンプ方式が採用されることが多い。

ポンプ台数制御と回転数制御

ポンプの運転方法には、大きく「台数制御」と「回転数制御」がある。
台数制御は、負荷に応じて運転するポンプの台数を増減させる方式であり、一定の省エネ効果が得られる。
しかし、運転しているポンプは常に定格回転数で動作するため、部分負荷時には効率が低下するという課題がある。
一方、回転数制御(インバータ制御)を導入すると、ポンプを台数で切り替えるだけでなく、負荷に応じて回転数そのものを最適化することが可能になる。
これにより、必要最小限の動力で流量を確保でき、大幅な省エネ効果が期待できる。

まとめ

今回は、熱源設備について紹介した。
熱源方式や熱源機器の特徴を理解すると、適切に設計することができるだろう。

コメント