こんにちは。
通気管は建物に必要不可欠な配管だ。
それだけ重要な配管だが、つい適当に通気管の選定をすることが多いことも実情だ。
通気管は通気方式こそ様々な書籍で紹介されているが、通気管の配管径の算定方法までは言及していないことがほとんどだ。
つまり、何となく決めた配管径で実際に竣工を迎えることも少なくない。
必要な配管径よりも小さいと運用時に封水が切れることがある。
封水が切れると室内へ悪臭が蔓延する。
こういったことを未然に防ぐためには通気管の適切な配管径を把握することが重要だ。
今回は通気管の配管径の計算方法を紹介する。
(参考)通気が設置されていないとどのようなことが起こるか以下の記事で紹介している。
興味がある方は参考にしていただければと思う。
建築設備設計基準では、通気管の管径の算定方法として以下の表が紹介されている。
汚水管又は雑排水管の近似管径 | 排水単位 | 通気管の近似管径[A] | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
30 | 40 | 50 | 65 | 75 | 100 | 125 | ||
通気管の最長距離[m] | ||||||||
30 | 2 | 9 | ||||||
40 | 8 | 15 | 45 | |||||
40 | 10 | 9 | 30 | |||||
50 | 12 | 9 | 22.5 | 60 | ||||
50 | 20 | 7.8 | 15 | 45 | ||||
65 | 42 | – | 9 | 30 | 90 | |||
75 | 10 | – | 9 | 30 | 60 | 180 | ||
75 | 30 | – | – | 18 | 60 | 150 | ||
75 | 60 | – | – | 15 | 24 | 120 | ||
100 | 100 | – | – | 10.5 | 30 | 78 | 300 | |
100 | 200 | – | – | 9 | 27 | 75 | 270 | |
100 | 500 | – | – | 6 | 21 | 54 | 210 | |
125 | 200 | – | – | – | 10.5 | 24 | 105 | 300 |
125 | 500 | – | – | – | 9 | 21 | 90 | 270 |
125 | 1,100 | – | – | – | 6 | 15 | 60 | 210 |
150 | 350 | – | – | – | 7.5 | 15 | 60 | 120 |
150 | 620 | – | – | – | 4.5 | 9 | 37.5 | 90 |
150 | 960 | – | – | – | – | 7.2 | 30 | 75 |
150 | 1,900 | – | – | – | – | 6 | 21 | 60 |
通気管径早見表の読み方
以下に早見表の読み方を紹介する。
例えばある通気管が受け持つ最大の排水管径が100Aで排水負荷単位が300、通気管の長さが20mだとする。
まずは表内一番左の排水管径100Aに着目する。
汚水管又は雑排水管の近似管径 | 排水単位 | 通気管の近似管径[A] | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
30 | 40 | 50 | 65 | 75 | 100 | 125 | ||
通気管の最長距離[m] | ||||||||
100 | 100 | – | – | 10.5 | 30 | 78 | 300 | |
100 | 200 | – | – | 9 | 27 | 75 | 270 | |
100 | 500 | – | – | 6 | 21 | 54 | 210 |
次に排水負荷単位300を抱えることができる最小の排水負荷単位を確認する。
今回の場合だと排水負荷単位500に着目することとなる。
汚水管又は雑排水管の近似管径 | 排水単位 | 通気管の近似管径[A] | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
30 | 40 | 50 | 65 | 75 | 100 | 125 | ||
通気管の最長距離[m] | ||||||||
100 | 100 | – | – | 10.5 | 30 | 78 | 300 | |
100 | 200 | – | – | 9 | 27 | 75 | 270 | |
100 | 500 | – | – | 6 | 21 | 54 | 210 |
通気管の長さは20mであるため、20m以上かつ20mに最も近しい21mに着目する。
汚水管又は雑排水管の近似管径 | 排水単位 | 通気管の近似管径[A] | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
30 | 40 | 50 | 65 | 75 | 100 | 125 | ||
通気管の最長距離[m] | ||||||||
100 | 100 | – | – | 10.5 | 30 | 78 | 300 | |
100 | 200 | – | – | 9 | 27 | 75 | 270 | |
100 | 500 | – | – | 6 | 21 | 54 | 210 |
通気管の最長距離21mの部分から通気管の管径を算出する。
表内21mの表上部を確認すると65Aと記載されている。
そのため今回のケースでは通気管径は65Aとなる。
汚水管又は雑排水管の近似管径 | 排水単位 | 通気管の近似管径[A] | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
30 | 40 | 50 | 65 | 75 | 100 | 125 | ||
通気管の最長距離[m] | ||||||||
100 | 100 | – | – | 10.5 | 30 | 78 | 300 | |
100 | 200 | – | – | 9 | 27 | 75 | 270 | |
100 | 500 | – | – | 6 | 21 | 54 | 210 |
次項以降で実例を交えながら、通気管の具体的な算定方法を紹介する。
使用するモデル
今回の通気管算定にあたってのモデルは以下の通りとする。
建物は4F建ての事務所ビルを想定する。
各階同じ位置に水廻りがある。
自然流下による排水が難しいため、排水槽をピットに設置した。
(排水槽に貯留後公共下水道へ排水)
通気管は1Fの排水系統、2Fから4Fの排水系統、排水槽系統の3系統とした。
各通気管は4F天井部を経由し屋外で開放される。
1Fから4Fの水廻りは上の平面図の通りとする。
男子便所には大便器、小便器、洗面器がそれぞれ3個ずつ設置される。
また女子便所には大便器が3個、洗面器が2個設置される。
排水管の管径と排水負荷単位を整理
通気管の管径を算定する前に、まず、排水管の管径と排水負荷単位を整理する必要がある。
先ほどの平面図より以下の通り整理できる。
排水管に排水管径と排水負荷単位を付記した。
大便器はフラッシュバルブを想定した。
また小便器は壁掛型とした。
結果、男子便所の排水負荷単位は39単位、女子便所の排水負荷単位は29単位となった。
つまり各階男子便所、女子便所を合計すると68単位となる。
1Fの排水は合計で68単位となり、排水管の配管径は100Aとなった。
2Fから4Fの排水は68単位/階 x 3層 = 204単位となり、排水管の配管径は125Aとなった。
通気管径の算定
前項では排水管径と排水負荷単位を整理した。
本項では通気管の管径を算定する。
通気管の管径の算定はある領域ごとに確認を行う必要がある。
その領域は大きく以下の3か所に分類される。
通気管の算定箇所 | ||
---|---|---|
①水廻りが発生する箇所 | ②通気のたて管 | ③伸頂通気 |
今回の例でいえば具体的に左図に示す領域に部類される。
以下に順に領域ごとの通気管の算定方法を紹介する。
領域1 水廻りの通気管
まずは水廻りの通気管を整理する。
上図に通気管をそれぞれ色分けした平面図を示す。
女子便所の通気管は赤色、男子便所の通気管は系統ごとにそれぞれオレンジと水色で記載した。
通気管の長さ
まずは着色部について各通気管の配管長さを図る。
長さを図る際に通気管が床下から天井へ立ち上がる部分についても計上する。
なお赤色、オレンジ、水色が合流しPS内で立ち上がる通気たて管並びに最上階で大気に開放するために発生する通気横引き管の長さは含めない。
(あくまでも平面図に着色した部分のみを拾う)
通気管の長さ | ||
---|---|---|
室名称 | 通気管の色 | 通気管の長さ |
女子便所 | 赤色 | 11.4m |
男子便所 | オレンジ | 水色合流前まで:9.6m 水色合流後:0.9m 合計:10.5m |
男子便所 | 水色 | オレンジ合流前まで:14.7m オレンジ合流後:0.9m 合計:15.6m |
女子便所の通気管径
女子便所の通気管径を算定する。
女子便所に設置されている通気管が受け持つ排水管は以下の緑色の排水管だ。
緑色部分の排水管は前項より100Aで29単位だ。
通気管の長さは11.4mのため冒頭に紹介した通気管径早見表より通気管径は65Aとなる。
汚水管又は雑排水管の近似管径 | 排水単位 | 通気管の近似管径[A] | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
30 | 40 | 50 | 65 | 75 | 100 | 125 | ||
通気管の最長距離[m] | ||||||||
100 | 100 | – | – | 10.5 | 30 | 78 | 300 | |
100 | 200 | – | – | 9 | 27 | 75 | 270 | |
100 | 500 | – | – | 6 | 21 | 54 | 210 |
通気管の長さ | |||||
---|---|---|---|---|---|
室名称 | 通気管の色 | 通気管の長さ | 排水管径 | 排水負荷単位 | 通気管径 |
女子便所 | 赤色 | 11.4m | 100A | 29単位 | 65A |
男子便所(オレンジ部分、水色合流前)の通気管径
続いて男子便所(オレンジ部分、水色合流前)の通気管径を算出する。
オレンジの通気管が受け持つ排水管は緑色の範囲だ。
緑色の最大排水管径は50で排水負荷単位は3単位だ。
通気管の長さは9.6mのため冒頭に紹介した通気管径早見表より通気管径は40Aとなる。
汚水管又は雑排水管の近似管径 | 排水単位 | 通気管の近似管径[A] | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
30 | 40 | 50 | 65 | 75 | 100 | 125 | ||
通気管の最長距離[m] | ||||||||
50 | 12 | 9 | 22.5 | 60 | ||||
50 | 20 | 7.8 | 15 | 45 |
通気管の長さ | |||||
---|---|---|---|---|---|
室名称 | 通気管の色 | 通気管の長さ | 排水管径 | 排水負荷単位 | 通気管径 |
男子便所 | オレンジ | 9.6m | 50A | 3単位 | 40A |
男子便所(水色部分、オレンジ合流前)の通気管径
続いて男子便所(水色部分、オレンジ合流前)の通気管径を算出する。
水色の通気管が受け持つ排水管は緑色の範囲だ。
緑色の最大排水管径は100で排水負荷単位は36単位だ。
通気管の長さは14.7mのため冒頭に紹介した通気管径早見表より通気管径は65Aとなる。
汚水管又は雑排水管の近似管径 | 排水単位 | 通気管の近似管径[A] | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
30 | 40 | 50 | 65 | 75 | 100 | 125 | ||
通気管の最長距離[m] | ||||||||
100 | 100 | – | – | 10.5 | 30 | 78 | 300 | |
100 | 200 | – | – | 9 | 27 | 75 | 270 | |
100 | 500 | – | – | 6 | 21 | 54 | 210 |
通気管の長さ | |||||
---|---|---|---|---|---|
室名称 | 通気管の色 | 通気管の長さ | 排水管径 | 排水負荷単位 | 通気管径 |
男子便所 | 水色 | 14.7m | 100A | 36単位 | 65A |
男子便所(水色+オレンジ部分合流後)の通気管径
男子便所(水色+オレンジ部分合流後)の通気管径を算出する。
水色およびオレンジの通気管が受け持つ排水管は緑色の範囲だ。
緑色の最大排水管径は100で排水負荷単位は39単位だ。
通気管の長さはオレンジと水色の長い方を採用する。
オレンジは10.5mで水色は15.6mであるため計算に用いる通気管の長さは15.6mとなる。
通気管径早見表より通気管径は65Aとなる。
汚水管又は雑排水管の近似管径 | 排水単位 | 通気管の近似管径[A] | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
30 | 40 | 50 | 65 | 75 | 100 | 125 | ||
通気管の最長距離[m] | ||||||||
100 | 100 | – | – | 10.5 | 30 | 78 | 300 | |
100 | 200 | – | – | 9 | 27 | 75 | 270 | |
100 | 500 | – | – | 6 | 21 | 54 | 210 |
通気管の長さ | |||||
---|---|---|---|---|---|
室名称 | 通気管の色 | 通気管の長さ | 排水管径 | 排水負荷単位 | 通気管径 |
男子便所 | 水色+オレンジ | 15.6m | 100A | 39単位 | 65A |
領域2 たて管の通気管
1F便所の通気管
1F便所の通気管径を算出する。
1F男子便所と1F女子便所の最大排水管径は100Aで排水負荷単位は68単位だ。
また、通気管の長さは排水たて管から通気が開放される場所までの配管長さを図る。
左図に示す通りたて管長さが15mとなる。
また4F天井横引き通気管長さは40mとした。
たて管と4F天井横引きの合計で55mとなる。
つまり通気管たて管および4F天井横引き管の配管径は75Aとなる。
汚水管又は雑排水管の近似管径 | 排水単位 | 通気管の近似管径[A] | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
30 | 40 | 50 | 65 | 75 | 100 | 125 | ||
通気管の最長距離[m] | ||||||||
100 | 100 | – | – | 10.5 | 30 | 78 | 300 | |
100 | 200 | – | – | 9 | 27 | 75 | 270 | |
100 | 500 | – | – | 6 | 21 | 54 | 210 |
排水槽の通気
建築設備設計基準によれば排水槽の通気は50A以上と記載されている。
そのため排水槽の通気は通気管の長さによらず一律50Aとする。
(参考)排水槽からの通気を単独とする必要がある理由を以下の記事で紹介している。
興味がある方は参考にしていただければと思う。
2Fから4Fの通気(たて管)
2Fから4Fの通気たて管には排水たて管からの伸頂通気が接続される。
そのため2Fから4Fの通気たて管と伸頂通気接続後の通気管の径は分けて計算を行う必要がある。
2F-4F男子便所と2F-4F女子便所の最大排水管径は125Aで排水負荷単位は204単位だ。
また、通気管の長さは排水たて管の長さとする。
左図に示す通りたて管長さが15mとなる。
つまり通気管たて管の配管径は75Aとなる。
汚水管又は雑排水管の近似管径 | 排水単位 | 通気管の近似管径[A] | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
30 | 40 | 50 | 65 | 75 | 100 | 125 | ||
通気管の最長距離[m] | ||||||||
125 | 200 | – | – | – | 10.5 | 24 | 105 | 300 |
125 | 500 | – | – | – | 9 | 21 | 90 | 270 |
125 | 1,100 | – | – | – | 6 | 15 | 60 | 210 |
2Fから4Fの通気(伸頂通気合流後)
伸頂通気合流後の通気管は伸頂通気の配管径もしくは2Fから4Fの通気管長、排水負荷単位、排水管径により求められる通気管径のいずれか大きい方とする必要がある。
ひとまず2Fから4Fの通気管長さより通気管径を算定する。
2Fから4Fの通気管長さは合計で55m(4F横引き40m + たて管15m)となる。
また排水管径は125A、排水負荷単位は204のため、通気管径は100Aとなる。
汚水管又は雑排水管の近似管径 | 排水単位 | 通気管の近似管径[A] | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
30 | 40 | 50 | 65 | 75 | 100 | 125 | ||
通気管の最長距離[m] | ||||||||
125 | 200 | – | – | – | 10.5 | 24 | 105 | 300 |
125 | 500 | – | – | – | 9 | 21 | 90 | 270 |
125 | 1,100 | – | – | – | 6 | 15 | 60 | 210 |
伸頂通気
建築設備設計基準によれば伸頂通気は排水たて管と同径とする必要がある。
2F-4Fの排水たて管は125Aのため伸頂通気の配管径も125Aとする。
2Fから4Fの通気管(伸頂通気合流後)
伸頂通気合流後の通気管は伸頂通気の配管径もしくは2Fから4Fの通気管長、排水負荷単位、排水管径により求められる通気管径のいずれか大きい方とする必要がある。
2Fから4Fの通気管長、排水負荷単位、排水管径により求められる通気管径は100Aであり、伸頂通気の配管径は125Aだ。
そのため伸頂通気合流後の通気管径は125Aとなる。
まとめ
今回は通気管の配管径の計算方法を紹介した。
通気管の配管径の計算はやや複雑だが、計算を繰り返し行うことで徐々に慣れていくはずだ。
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