省エネを最大限に図る -モジュールチラーの省エネ効果- 2025.04.12 こんにちは。昨今では建物の省エネ化がより一層求められている。一般的に建物の消費エネルギーの約40%は空調設備に起因する。(実際には、建物用途や運用方法によっても異なる)空調設備の中でも空調用の冷熱や温熱を発生させる熱源機器の省エネ化は、空調設備全体への高効率化へつながる。そのため、高効率熱源機器の採用はは省エネへの効果が大きい。特に最近では、高効率な熱源機器であるモジュールチラーに関して、建築設備設計基準においても記述されるようになった。今回はモジュールチラーと省エネ効果について紹介する。 コンテンツ モジュールチラーの概要モジュールチラーとは低負荷時においても高効率な運転が可能モジュールチラーの仕様モジュールチラーの省エネ効果計算条件一次エネルギー使用量比較まとめ モジュールチラーの概要 モジュールチラーとは 出典:https://www.ac.daikin.co.jp/central/chiller モジュールチラーとは複数の熱源機器を連結させて、1台の大きな能力を持った熱源機器として運用可能な熱源機器である。イメージとしては、左の写真に示すとおりである。 低負荷時においても高効率な運転が可能 一般的なヒートポンプにおいては、おおよそ定格出力の40%で最大効率点となることが多い。(機器にもよる)すなわち、ヒートポンプにおいては負荷率40%以外の部分で運転を行うほど効率の低下を招くこととなる。また、ヒートポンプに限らず、どのような熱源機器においても、部分負荷率に対する最高効率点がある。そのため、機器1台のみでは、高効率な運転計画が難しい。 一方でモジュールチラーの場合は、小さな能力を持った熱源機の集合体である。そのため、熱負荷に応じて、運転台数を可変することが可能となり、高効率な運転を行うことが可能となる。 モジュールチラーの仕様 建築設備設計基準によれば、モジュールチラーの仕様は下表のとおりとなる。全体的にモジュールチラーの本体の能力が上昇するほど、COPが低下する傾向となる。 空冷式モジュールチラー 能力 冷凍時[kW] 85kW 118kW 150kW 180kW 200kW 加熱時[kW] 85kW 118kW 150kW 180kW 200kW 消費電力 冷凍時[kW] 21.2kW 34.7kW 46.9kW 57.4kW 70.7kW 加熱時[kW] 23.0kW 34.4kW 48.0kW 55.4kW 62.5kW COP 冷凍時 4.01 3.40 3.20 3.14 2.83 加熱時 3.70 3.43 3.13 3.25 3.20 ※冷凍能力、冷凍時消費電力は7℃-14℃の値を記載した。 ※加熱能力、加熱時消費電力は45℃-38℃の値を記載した。 モジュールチラーの省エネ効果 モジュールチラーの省エネ効果試算のため、省エネ基準のサンプルモデルとして使用される事務所用途を基準として試算を行うこととする。モデルの詳細についてはこちらの記事で紹介しているため、興味がある方は参照されたい。 事務所用途の省エネ施策とBEI値の推移こんにちは。近年、省エネ法の改正により、省エネ基準がより厳格化された。省エネ基準の引き上げに伴い、より省エネに考慮した設備計画を行う必要がある。しかし、どの程度の省エネ化を図ればどの程度BEI(省エネ法上の年間エネルギー消費量基準値に対する... 計算条件 比較検討のケースとしては以下に示すとおりとする。 ケーススタディケース台数[台]能力[kW/台]消費電力[kW/台]冷凍時加熱時冷凍時加熱時ケース0標準モデルURLを参照(基準モデル)ケース1-1冷温水発生機2738522567.1567.1ケース1-2冷温水発生機(高効率)2738484529.1529.1ケース2-1モジュールチラー85kW18858521.223.0ケース2-2モジュールチラー118kW1211811834.734.4ケース2-3モジュールチラー150kW1015015046.948.0ケース2-4モジュールチラー180kW818018057.455.4ケース2-5モジュールチラー200kW820020070.762.5 一次エネルギー使用量比較 下図にケース別の一次エネルギー消費量を示す。モジュールチラーを用いることで一次エネルギー消費量を大きく低減することができる。しかし、モジュールチラーの1台あたりの容量が大きくなるほど、一次エネルギー消費量が増大する。 まとめ 今回はモジュールチラーと省エネ効果について紹介した。モジュールチラーを用いることで大きな省エネ効果が得られる。また、1台あたりのモジュールチラーの能力が大きくなるほど省エネ効果は低減する。ただし、モジュールチラーの台数が増えるほど、導入コストやメンテナンスコストの増大ならびに、機器設置スペースが増大する。メリットやデメリットを踏まえて、熱源計画を行うことが望ましい。
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