こんにちは。
建物の省エネ化がより一層求められる中、建物の外皮性能を少しでも高めるために東西面に縦ルーバーを用いることがある。
しかし、縦ルーバーの効果が一体どれほどのものであるかが理解できていない方も多いだろう。
また、一般的に南面に対しては水平ルーバー、東西面に対しては縦ルーバーと言われるが、その理由について深く考えていない方も多いかもしれない。
今回は水平ルーバーと縦ルーバーの使い分けならびに縦ルーバーによる日照面積率の低減の量について紹介する。
ルーバーとは


外皮負荷を抑制するために用いられるルーバーとは左の写真のようなイメージを示す。
外部にルーバーを設けることで直達日射が室内に入ることを防止する役割がある。
特に、直達日射が室内に入ることで、夏期の冷房負荷が増大する。
冷房負荷の増加に伴い、結果として空調設備の運転が増えてしまうため、エネルギーが増大する。
室内で発生する熱負荷の割合については、室の形状や使用方法によって異なるが、外皮負荷の割合は決して少なくない。
こちらの記事で熱負荷の構成割合について一例をケーススタディしたので興味がある方は参考にされたい。
水平ルーバーと縦ルーバー
次に水平ルーバーと縦ルーバーの特徴について紹介する。

建物にルーバーがない場合を左図に示す。
ルーバーがない場合は、日射を遮るものが一切ないため、ガラス面から日射が侵入する。

太陽高度が高い時間帯であれば、水平ルーバーを設置することにより日射を水平ルーバーの面で受けることが可能となる。
結果として、日射の侵入を効率的に防止することが可能となる。

一方で、太陽高度が低いときは、水平ルーバーでは、日射を面で受けることが難しい。
そのため、日射を遮ることができず、日射が室内へ侵入する。

太陽高度が低いときは縦ルーバーを使用し、建物の方位と日射の方位の差を利用することで、日射をルーバーの面で受けることが可能となる。
結果として日射遮蔽を行うことが可能となる。

一方で太陽高度が高いときに縦ルーバーを用いると日射をルーバーの面で受けることができない。
そのため、日射が室内へ侵入する。

1日の太陽の動きを左図に示す。
日中は比較的太陽高度が高く、早朝と夕方に太陽高度が低くなる特徴がある。
特に太陽高度が高い間は水平ルーバーを設置することで、日射を庇の面で受けることが可能となるため、結果として建物内への日射の侵入を防止することが可能である。
一方で、太陽高度が低い時間帯においては、時間帯によって、太陽(日射)の方角が大きく変化する。
そのため、縦ルーバーを設置することで、日射抑制が可能となる時間が増加する。
ルーバーによる日照面積率の計算方法
ルーバー1スパンあたりの日射が当たる長さを求める


次にルーバーによる日照面積率(直達日射が窓面積に対してどの程度侵入するかの割合)の計算方法について紹介する。
ルーバーは実際に複数設置されることが多いが、計算ではルーバー1スパン分に絞って考えることで計算が容易となる。
ルーバー1スパン分に対し、平面的に直達日射に当たる可能性がある長さ(以降長さで統一する)はルーバーの間隔の長さと同一である(左図のl(エル))。
ルーバーの間隔から、実際にルーバーによる日射遮蔽の長さを差分することで直達日射が当たる長さを算出することができる。
計算式では以下のとおりとなる。
計算式 |
---|
直達日射が当たる長さ = ルーバーの長さ – ルーバーが日射を遮蔽する長さ |
= l(エル) – w – (d x |tanγ|) |


ここで普段見慣れない数式|tanγ|を使用している。
タンジェントといえば、過去に学習した方も多いかもしれない。
日射遮蔽をしている部分であるルーバーの横幅wは窓面と平行であるため、日射を遮蔽する長さと等しい。
しかし、ルーバーの奥行方向dは窓面と垂直である。
そのため、タンジェントを用いて窓面の日射遮蔽の長さを計算する必要がある。
具体的には、ルーバー奥行方向のdの線分を延長することで、図に示すような三角形を作るとイメージしやすいだろう。

三角形が作れれば、左図のように、窓面の日射遮蔽の長さを計算することが可能となる。
日照面積率を求める

日照面積率はルーバー1スパンあたりに日射が当たる長さの割合を求めることで算出が可能である。
(水平ルーバーではないので、日射が当たる長さの割合が日照面積割合(日照面積率)となる。)
日照面積率は下表の式のとおり、算出ができる。
なお、表中の計算式に記載している0.85は直達日射がルーバーで反射することで、多少は室内へ日射が侵入することによる係数である。
(出典:建築設備設計基準)
計算式 |
---|
日照面積率 = 直達日射が当たる長さ |
= (w + 0.85 x (d x |tanγ|) ) ÷ l |
水平ルーバーと縦ルーバーの日照面積率
次に水平ルーバーと縦ルーバーの日照面積率の比較について紹介する。
検討ケースとしては下図に示すとおり、奥行き1000mmの水平ルーバーの場合とルーバー横幅100mm、奥行き300mm、ルーバー間隔500mmの縦ルーバーの日照面積率とする。
また、ルーバーを設置しない場合の日照面積率についても記載する。
なお、地域は東京とし、太陽高度は建築設備設計基準に記載の数値に準じることとする。


水平ルーバーを用いることで、12時の日照面積率を大幅に低減できていることが確認できる。
一方で東西面の日照面積率の低減については水平ルーバーは寄与していない。
縦ルーバーに着目すると、東西面の日照面積率の低減には寄与する一方で、南面の12時の日照面積率を大きく低減はできていない。
水平ルーバーの場合 | ||||
---|---|---|---|---|
方位 | 時刻別日照面積率 | |||
9時 | 12時 | 14時 | 16時 | |
北 | 0% | 0% | 0% | 0% |
東 | 100% | 0% | 0% | 0% |
南 | 0% | 4% | 0% | 0% |
西 | 0% | 0% | 94% | 100% |
縦ルーバーの場合 | ||||
---|---|---|---|---|
方位 | 時刻別日照面積率 | |||
9時 | 12時 | 14時 | 16時 | |
北 | 0% | 0% | 0% | 0% |
東 | 67% | 0% | 0% | 0% |
南 | 0% | 71% | 0% | 0% |
西 | 0% | 0% | 60% | 79% |
ルーバー無の場合 | ||||
---|---|---|---|---|
方位 | 時刻別日照面積率 | |||
9時 | 12時 | 14時 | 16時 | |
北 | 0% | 0% | 0% | 100% |
東 | 100% | 0% | 0% | 0% |
南 | 100% | 100% | 100% | 0% |
西 | 0% | 100% | 100% | 100% |
まとめ
今回は水平ルーバーと縦ルーバーの使い分けならびに縦ルーバーによる日照面積率の低減の量について紹介した。
水平ルーバーと縦ルーバーの特性を理解することで、外皮膚科を低減することが可能となり、より脱炭素化を目指した建築を計画することができるはずである。
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