ガラス面日射負荷を抑えより省エネに -方位や庇の重要性-

こんにちは。

最近では、建物の省エネ化を図ることがより一層求められている。
特に、省エネ基準値の引き上げにより、困惑されている方も多いはずだ。
機械設備の努力だけで省エネ基準をクリアできればまだよいが、実は意匠側の配慮も必要不可欠なものとなっている。
意匠上のデザインや配置計画は建物の省エネ性に大きな影響を与える。
その中でも特にガラス面日射負荷による影響は比較的大きい。

今回はガラス面の方位や庇の有無によるガラス面日射負荷への影響について紹介する。

 

熱負荷は大きく、室内負荷と外気負荷に大別できる。
ガラス面負荷は室内負荷の中に分類される。
ガラスに関しての負荷はさらに、「ガラス面通過熱負荷」と「ガラス面日射負荷」に細分化される。

熱負荷の種類 冷房 暖房
構造体負荷 室内負荷
ガラス面負荷
室内発生負荷 照明負荷
人体負荷
その他内部発熱負荷
すきま風負荷
間欠空調による畜熱負荷
送風機による負荷
ダクトにおける負荷
再熱負荷
外気負荷
(凡例)○:考慮する、△:必要に応じ考慮する 出典:建築設備設計基準

熱負荷原単位概略

建築設備手帖(出典元:設備と管理1989年12月号)によれば、3,000m2クラス以上の事務所ビルの場合かつ、東西面に窓面がある場合における、一般的な冷房負荷は以下の通りである。

項目概略値
冷房負荷全体150~200 W/m2
ペリメーター(東西面)190~200 W/m2
インテリア120~150 W/m2

ペリメーターを窓際から5mとしたときかつ全体の冷房負荷が175W/m2であるときの、ペリメーターとインテリアの面積割合は2:1となる。
つまり、左図の通りの寸法となる。

検討モデルケース

平面・立面

検討する平面・断面イメージは以下の通りとした。
なお、前項で紹介した建築設備手帖による熱負荷は1989年に紹介された資料である。
そのため、窓は単板ガラス6mmとする。
また、西面にペリメーターがある場合においてペリメーター部分の冷房負荷は195W/m2であるとする。
また、場所は東京とする。

外気温湿度、室内温湿度条件

室内温度[℃]
室内湿度[%]
外気温度[℃]/室内湿度[%]
9時12時14時16時
26.0℃ / 50%32.0℃ / 67.1%34.3℃ / 59.2%34.8℃ / 58.0%33.7℃ / 60.1%

概略熱負荷

項目概略値
冷房負荷全体175 W/m211,812.5 W
ペリメーター(西面)195 W/m28,775.0 W
インテリア135 W/m23,037.5 W

外気負荷

事務室想定とし、人員密度は0.15人/m2とする。
また、単位外気量は30m3/(h・人)とする。
外気は熱交換器により50%処理されることとする。

外気負荷換気量
[CMH]
熱負荷[W]
9時12時14時16時
ペリメーター2101,0891,1801,2111,124
インテリア110570618634589
合計3201,6591,7981,8451,713

※9時の熱負荷に対して間欠運転係数1.05を見込んだ数値。

ガラス面の熱負荷

種類熱通過率[W/m2・K]熱負荷[W]
9時12時14時16時
ガラス面熱通過負荷6.3385508539471
ガラス面日射負荷3924673,7325,682
合計7779754,2716,153

※9時の熱負荷に対して間欠運転係数1.05を見込んだ数値。

その他の熱負荷

その他の熱負荷は常に一定であると仮定する。

熱負荷集計

前項までの条件を積み上げるとペリメーターとインテリアの各熱負荷は以下の通りとなる。
本熱負荷集計結果をモデルケースとする。

検討パターン① 方位を変えた場合

まずは以下の4種類の通り、方位を変えた場合の熱負荷の推移を紹介する。

ペリメーターを南とした場合

ペリメーターを東とした場合

ペリメーターを北とした場合

ペリメーターを西とした場合

検討パターン① 検討結果

ペリメーターの方角によって最大熱負荷が大きく異なる。
特に南北面をペリメーターとした場合は熱負荷の減少量が大きいことがわかる。

項目ペリメーターの方角
西(モデルケース)
最大熱負荷[W]11,8137,93310,5736.723
モデルケース比67.2%89.5%56.9%

検討パターン② Low-Eガラスに変えた場合

続いて方位毎に単板ガラスからLow-Eガラスに変更した場合における熱負荷低減の量について紹介する。

ペリメーター -南-

ペリメーター -東-

ペリメーター -北-

ペリメーター -西-

検討パターン② 検討結果

単板ガラスからLow-Eガラスへ変更した場合におけるペリメーターの方角毎の熱負荷を下表に示す。
Low-Eガラスへ変更することにより熱負荷の低減が確認できる。
一方で、外皮負荷の割合が比較的小さな南面と北面についてはLow-Eガラスの変更に伴う熱負荷の低減率が小さい。

項目ペリメーターの方角
西(モデルケース)
最大熱負荷[W]単板ガラス6mm11,8137,93310,5736.723
Low-Eガラス6mm8,8746,8478,2006,223
Low-E ÷ 単板ガラス75.1%86.3%77.6%92.6%

検討パターン③ 庇を設けた場合その1

次に以下の条件で庇を設けた場合における熱負荷低減量を紹介する。(オレンジ部分が庇)

ペリメーター -南-

ペリメーター -東-

ペリメーター -北-

ペリメーター -西-

検討パターン③ 検討結果

南面については庇を設けることで外皮負荷の低減が期待できる。
しかし、500mm程度の庇だとほとんど効果がないことがわかる。

項目ペリメーターの方角
西(モデルケース)
最大熱負荷[W]庇なし8,8746,8478,2006,223
庇あり8,8746,6578,2006,223
庇あり / 庇なし100%97.2%100%100%

検討パターン④ 庇を設けた場合その2

次に以下の条件で庇を設けた場合における熱負荷低減量を紹介する。(オレンジ部分が庇)

ペリメーター -南-

ペリメーター -東-

ペリメーター -北-

ペリメーター -西-

検討パターン④ 検討結果

2mの庇により、南面だけでなく東面の外皮負荷低減にも寄与する。
庇が長いほど外皮負荷を低減することが可能であるとわかる。
一方で西面については2mの庇でも熱負荷が低減できていない。
本稿では紹介を割愛するが、2m以上の長さの庇から徐々に熱負荷を低減することができる。

項目ペリメーターの方角
西(モデルケース)
最大熱負荷[W]庇あり-18,8746,6578,2006,223
庇あり-28,8746,2236,7766,223
庇あり / 庇なし100%93.5%82.6%100%

まとめ

今回はガラス面の方位や庇の有無によるガラス面日射負荷への影響について紹介した。
以下に条件ごとの最大熱負荷集計結果を示す。
最大熱負荷は方位やガラス種別、庇の有無によって、大きく異なることがわかる。
つまり、機械設備でできる省エネ手法も重要ではあるが、それと同じくらい配置計画や意匠的な配慮が省エネに対しては重要だ。

項目ペリメーターの方角
西(モデルケース)
最大熱負荷[W]単板ガラス6mm11,8137,93310,5736,723
Low-Eガラス6mm8,8746,8478,2006,223
庇あり 500mm8,8746,6578,2006,223
庇あり2,000mm8,8746,2236,7766,223

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