空調負荷計算で用いる人体発熱量について紹介

こんにちは。

普段何気なく使用している空調負荷計算(熱負荷計算)で使用している人体発熱量だが、深く考えたことはあるだろうか。
実は、人体発熱量は人の作業量により変動する。
また、人体発熱量の総量は変わらないが、着衣量によっても人体発熱量の顕熱と潜熱比が変動する。

実際に熱負荷計算を行う際には、建築設備設計基準に記載のあるとおりに計算を行うことが多いだろう。
しかし、作業量や着衣量によっても人体発熱量が変わることを知っておけば、空調設備設計の役に立つこともあるだろう。

今回は人体発熱量について紹介する。

建築設備設計基準

建築設備設計基準で使用されている人体発熱量を室用途別、室内温度別に示す。
同じ室用途であれば、室内温度が26℃、28℃のいずれの場合のおいても人体発熱量(全熱)はほぼ変動しないことが確認できる。
しかし、室内温度が低いほうが、顕熱の割合が高くなる(潜熱の割合が低くなる)傾向にあることが確認できる。

人体発熱量と作業量

本来、人の作業量によって人体発熱量が大きく変わるはずである。
空気調和設備計画設計の実務の知識では、作業量別の人体発熱量は以下のとおり記載されている。
つまり、本来であれば、室用途に応じて、人体の発熱量を設定することが望ましいと言えるだろう。

作業状態 発熱量 潜熱 顕熱
軽度 劇場 98W/人 34W/人 64W/人
軽作業 学校 116W/人 49W/人 67W/人
事務所業務 事務所 121W/人 53W/人 68W/人
立ったり座ったり歩いたり 銀行 139W/人 68W/人 71W/人
座業 レストラン 146W/人 67W/人 79W/人
着席作業 工場の軽作業 208W/人 121W/人 87W/人
普通のダンス ダンスホール 230W/人 132W/人 98W/人
歩行 工場の重作業 277W/人 169W/人 108W/人
ボーリング ボーリング 400W/人 274W/人 126W/人
※建築設備設計基準を引用し加工

人体発熱量と着衣量

出典:人体発熱負荷の推定に関する研究

左図に1990年の人体発熱負荷の推定に関する研究に記載されている、着衣量と顕熱放熱量比を示す。
人体発熱量の顕熱、潜熱の割合は着衣量によって変動がある。
例えば、暑い室内でたくさんの服を着るほど汗(潜熱)をかくためである。
つまり、着衣量が少ないほど、顕熱の割合が大きくなる。

人の代謝と発熱量

人が一日に消費するカロリー(消費カロリー)は一般的に2,000kcal/日程度である。
2,000kcal/日をWhに換算すると2,326Wh/日となる。
1日は24時間であるため、1時間あたり平均消費カロリーは97Wh/hとなる。
実際には、就寝中等は必要最小限消費カロリーとなると想定されるため、上記で紹介した内容とは大きく乖離はしていないだろう。

項目内容
消費カロリー2,000kcal/日
2,326Wh/日
97Wh/h

まとめ

今回は人体発熱量について紹介した。
本稿はコラムのような形となってしまったが、人体発熱量の仕組みをなんとなく理解し、今後の空調設備設計に役立てていただければと思う。

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