【空調設計に携わる方必見】熱負荷の要素を紹介 – 各種室内負荷や外気負荷を解説- 2023.08.122023.08.15 こんにちは。空調設備設計初心者の方。これから空調設備の学習を始められる方。空調設備の基本といえば熱負荷を理解することからスタートする。なぜなら必要な空調容量を決めるために必要な情報が熱負荷だからだ。その熱負荷特性によりどんな空調設備を導入するべきか判断する。つまり熱負荷を知らないと空調設備ができないも同然というわけだ。今回は空調設備の基本となる熱負荷の要素を紹介する。 コンテンツ 熱負荷の構成要素①構造体負荷②ガラス面負荷③照明負荷④人体負荷⑤その他の内部負荷⑥すきま風負荷⑦間欠空調による蓄熱負荷⑧送風機による負荷⑨ダクトによる負荷⑩再熱負荷⑪外気負荷まとめ 熱負荷の構成要素 建築設備設計基準によれば熱負荷の構成要素は以下の通り大別される。今回はこの中でも比較的よく使用することが多い構造体負荷から外気負荷の項目までそれぞれ紹介する。 熱負荷の種類 冷房 暖房 構造体負荷 室内負荷 空調機負荷 熱源負荷 ○ ○ ガラス面負荷 ○ ○ 室内発生負荷 照明負荷 ○ △ 人体負荷 ○ △ その他内部発熱負荷 ○ △ すきま風負荷 △ △ 間欠空調による畜熱負荷 ○ ○ 送風機による負荷 ○ – ダクトにおける負荷 ○ ○ 再熱負荷 ○ – 外気負荷 ○ ○ ポンプによる負荷 ○ – 配管の負荷 ○ ○ 装置負荷 ○ △ (凡例)○:考慮する、△:必要に応じ考慮する 出典:建築設備設計基準 ①構造体負荷 構造体負荷とは例えば壁面を通じて外部から室内へ侵入してくる熱負荷を言う。例えば外気温度が35℃で外部側の壁面温度も同様に35℃であったとする。コンクリートの厚さで35℃の熱を多少は吸収してくれる。だがそれでも内側の壁面温度が30℃となったとする。室内温度が26℃の場合、壁面温度が26℃よりも高いと室内温度が上昇する。これが構造体負荷だ。構造体負荷は壁面だけではない。外壁や隣室に面する内壁、天井や屋根、床も含まれる。つまり室を構成する全ての構造体が対象となる。 ②ガラス面負荷 ガラス面負荷は主に窓を通じて外部から内部へ発生する熱負荷を示す。そのガラス面負荷はさらに「ガラス面通過負荷」と「ガラス面日射負荷」に細分化される。ガラス面通過負荷は前項の構造体負荷と似たような考え方だ。一方でガラス面日射負荷は太陽からの直接的な日射取得だ。そのため窓面積と方位に応じてある一定の熱負荷が発生する。ガラス面日射負荷を小さくする方法としては以下が考えられる。 ガラス面日射負荷を小さくする方法 方法① 日射遮蔽形の窓の採用 方法② 窓面積の縮小 方法③ 庇の設置 【日射遮蔽形の窓の採用】ガラス面日射負荷を少しでも小さくする方法としては日射遮蔽形の窓を採用することが考えられる。窓の性能を少しでも上げることで日射負荷を抑制する方法だ。【窓面積の縮小】そもそも窓がなければ日射負荷は発生しないため非常に有効な方法だ。【庇の設置】庇を設置し窓面が日に当たらないようにすることで日射負荷を抑制することが可能だ。 ③照明負荷 照明負荷とは照明からの発熱を指す。室内で発生する発熱のため室内発熱に分類される。建築設備設計基準では照明器具ごとに照明からの発熱量が設定されている。 設計照度[lx]室の例LED照明蛍光灯下面開放形[W]ルーバー有[W]下面開放形[W]ルーバー有[W]アクリルカバー付[W]750事務室等911161825500会議室等68111217300受付357710200設備諸室23557150階段室23445100廊下1233475車庫12223出典:建築設備設計基準 ④人体負荷 人体負荷とは人からの発熱を示す。我々人は常に発熱をしている。平均体温は36.5℃程度だろう。つまり室内温度を36.5℃以下にしようと思った時点で人体からの発熱が熱負荷として計上される。 室名 人員密度[人/m2] 室内温度が28℃の場合 室内温度が26℃の場合 潜熱[W/人] 顕熱[W/人] 潜熱[W/人] 顕熱[W/人] 事務室 0.15 66 55 53 69 会議室 0.5 62 55 49 67 講堂 0.7 47 51 34 64 食堂 0.8 81 65 67 79 出典:建築設備設計基準 ⑤その他の内部負荷 その他の発熱とは主に什器からの発熱を示す。身近のところでは例えばパソコンだろう。パソコンは電気を使用しているため使用中は常に発熱する。その他にも事務所ではコピー機も置かれているはずだ。コピー機からも同様に発熱がある。特殊施設等では精密機器や専用機器などからの発熱も空調計算(熱負荷計算)に見込む必要がある。 ⑥すきま風負荷 建物の構造体の隙間から室内へ流入する負荷をすきま風負荷という。最近では気密性が比較的高いことや空調方式として居室は2種換気を採用することも多い。そのためすきま風負荷を見込まないことが多い。 ⑦間欠空調による蓄熱負荷 間欠空調による畜熱負荷とは非空調の時間から空調を行う時間に移行するときに見込む負荷だ。非空調運転の時間が長いほど建物の躯体に熱が蓄積される。これも加味して空調容量を決定するべきだといった主旨から間欠空調による畜熱負荷を見込むことがある。通常室内冷房負荷に係数1.0から1.1程度を乗じて計算を行う。なお24時間連続で空調を行う室は間欠空調による畜熱負荷は発生しない。 ⑧送風機による負荷 送風機による負荷とは空調を導入する際に必ず空調機内にファンも併設される。そのファンを用いて室内へ快適な空気が供給される。ただそのファンも電気で駆動するためファン自体が発熱をしている。そのファンの発熱も加味した空調容量を決めるために送風機による負荷も考慮する必要がある。具体的には室内冷房負荷に係数1.0から1.1程度を乗じて計算を行う。 ⑨ダクトによる負荷 ダクトによる負荷とはダクトを通じて室内に快適な空気を供給する場合に発生する負荷のことだ。例えば壁掛けのルームエアコンではダクトがないためダクトによる負荷は発生しない。一方でセントラル空調にあるような床置きの空調機を用いた場合はダクトで各空調対象室へ空調空気を供給する。そのためダクトによる負荷を見込む。 ⑩再熱負荷 再熱負荷とは空気をいったん冷やした後に再度空気を暖めてから供給するために発生する負荷を示す。再度空気を暖めるため単純に暖める分だけの負荷が発生する。主に病院や研究施設等、比較的室内の温湿度に対しデリケートな室に再熱負荷が発生することが多い。 ⑪外気負荷 外気負荷とは外気の導入に伴い発生する負荷のことだ。例えば室内温度が26℃だとする。そのときに35℃の外気を室内へ導入した場合26℃の室内がどんどんと上昇してしまう。これが外気負荷だ。 まとめ 今回は空調設備の基本となる熱負荷の要素を紹介した。空調負荷といえば様々な熱負荷が存在する。それらを一つずつ整理することで正確な空調設計を行うことができる。そのためまずは各熱負荷について計算式だけではなく要因をしっかりと把握することが大切だ。
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