雑用水を利用する際の給水引込径

こんにちは。

普段設計を行う際には、上水のみを利用して計画を行うことが多い。
しかし、最近では水資源の有効利用を図るため、雨水や排水を再利用し、便所洗浄水等に用いられることが多い。
雨水や排水の再利用を一般的に雑用水というが、この雑用水を利用する際に、いまいち給水の配管径の考え方がわからなくなる方も多いだろう。

今回は、雑用水を利用する場合の口径の算定方法を紹介する。

雑用水を利用する場合の給水方式

雑用水を利用する場合の上水側の給水方式は、多くの場合、下図に示す受水槽+加圧給水ポンプ方式となる。
雑用水を積極的に利用する多くの施設は官庁施設であり、災害時やBCP対応のために、インフラ途絶時にも給水機能を確保する事が多い。
なお、一部地域では積極的な雑用水利用促進のため、ある程度の建物規模からは雑用水利用を条例で義務つけていることもある。
また、中水管がインフラとして整備されていることもある。

時間平均給水量

受水槽方式において、給水引込部の給水配管径を算出するためには、時間平均給水量を算出する必要がある。
時間平均給水量を算出するためには、人員種別と人員数から1日の給水量を把握する必要がある。
1日の給水量から人員の建物利用時間で除して、時間平均給水量を求める。
1日の給水量の算定方法について、詳しくは以下の記事で紹介している。
興味がある方は確認いただければと思う。

上水と雑用水の割合

建築設備設計基準では、建物用途毎に上水と雑用水の使用割合が記載されている。
そのため、下表を参考に、上水と雑用水の時間平均給水量を算出しよう。

建物用途上水 [%]雑用水 [%]
一般建築30 ~ 4060 ~ 70
住宅65 ~ 8020 ~ 35
病院60 ~ 6634 ~ 40
デパート4555
学校40 ~ 5050 ~ 60

給水管径の算定方法

給水管引込部の配管径

雑用水の水源は基本的に雨水や排水を水源とする。
しかし、雨水や排水を常に活用できるかは、保証されていない。
そのため、給水管引込部の配管径は、上水受水槽と雑用水槽へ同時に給水が可能な管径とする必要がある。

上水受水槽1次側の給水管径

上水受水槽1次側の給水管径は上水の時間平均給水量から算出可能である。

雑用水槽1次側の給水管径

雑用水槽1次側の給水管径は雑用水の時間平均給水量から算出可能である。

計算例

以下に事務所で職員数500人の場合における「上水引込管」「受水槽1次側」「雑用水槽1次側」の配管径を算定する。
なお、建築設備設計基準より事務所用途の場合、職員一人あたりの単位給水量は60L/人・日である。
また、給水管の材質は塩ビライニング鋼管を使用することとする。

与条件
建物用途事務所
人員数職員500人
単位給水量60L/人・日

事務所の上水・雑用水割合はそれぞれ35%、65%である。
そのため、上水と雑用水の単位給水量はそれぞれ、60L/人・日 x 35% = 21L/人・日、60L/人・日 x 65% = 39L/人・日となる。
職員数が500人であるため、上水と雑用水の日給水量は
それぞれ、500人 x 21L/人・日 = 10,500L/日、500人 x 39L/人・日 = 19,500L/日となる。

建築設備設計基準より、事務所用途で職員の一日の平均使用時間は8時間である。
そのため、上水と雑用水の時間平均給水量はそれぞれ、10,500L/日 ÷ 8h/日 = 1,312.5L/h (= 21.9L/min)、
19,500L/日 ÷ 8h/日 = 2,437.5L/h (= 40.7L/min)となる。

時間平均給水量の算定
項目上水雑用水
上水・雑用水割合35%65%
単位給水量21L/人・日39L/人・日
日給水量10,500L/日19,500L/日
時間平均給水量1,312.5L/h(21.9L/min)2,437.5L/h(40.7L/min)
3,750.0L/h(62.5L/min)

上表の計算結果に基づき、給水管経を算定する。
①の上水引込管は上水+雑用水の時間平均給水量より給水管径は40Aとなる。
②の受水槽1次側配管径は上水の時間平均給水量より給水管径は25Aとなる。
③の雑用水槽1次側配管径は雑用水の時間平均給水量より給水管径は32Aとなる。

まとめ

今回は、雑用水を利用する場合の口径の算定方法を紹介した。
上水と雑用水の使用水量をそれぞれ整理することで、給水管径を計算することが可能となる。
そのため、考え方さえ理解すれば計算自体は難しくないだろう。

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