什器負荷(その他の内部発熱負荷)を見据えた空調機器の選定方法 -消費電力と発熱量の関係-

こんにちは。

普段熱負荷計算を行う際に入力する必要がある項目のひとつである什器負荷。
熱負荷計算書上では、その他の内部発熱負荷と表現される。
この什器負荷をある程度正しく見込まないと、建物運用時に建物利用者から空調が効かない等のクレームにつながる恐れもある。

今回は什器負荷としての発熱量の考え方について紹介する。

熱負荷は大きく、建物側の負荷(室内負荷)と空調を行う際に発生する負荷(空調機負荷、熱源負荷)に大別できる。
その他の内部発熱負荷(什器負荷)は建物側の負荷に分類される。
什器負荷は主に冷房の際に負荷となり、暖房の際には利得となることが多い。

熱負荷の種類冷房暖房
構造体負荷室内負荷空調機負荷熱源負荷
ガラス面負荷
室内発生負荷照明負荷
人体負荷
その他内部発熱負荷
すきま風負荷
間欠空調による畜熱負荷
送風機による負荷
ダクトにおける負荷
再熱負荷
外気負荷
ポンプによる負荷
配管の負荷
装置負荷
(凡例)○:考慮する、△:必要に応じ考慮する 出典:建築設備設計基準

什器負荷とは

什器負荷とは主に機器から発生する負荷を示す。
オフィスであれば、パソコンや、充電器、コピー機などが該当する。
その他、建築分野であれば、プロッターや、3Dプリンターなどといった、特殊な機器が設置されていることも多い。

什器負荷となる対象

什器負荷となるかどうかは、消費電力等が何に変換されているかによって異なる。
例えば、給湯器の場合は、消費電力がお湯に変換される。
お湯は冷める前に飲むか捨てることがほとんどであるため、お湯からの発熱はそれほどないと捉えられるだろう。
つまり、これらのプロセスを考えてお湯を発熱体とみなさない限りは、什器負荷には算入されない。
(実際に建物側で用意することが多い電気温水器の発熱量を什器負荷として見込むことはほとんどないはずだ)

他にもドライヤーを頻繁に使用する施設では、ドライヤーを什器負荷として見込むべきだろう。
ドライヤーの消費電力は空気を暖めて室内へ開放しているためだ。
見合った空調がないとすぐに室内が暑くなってしまう。
結局のところ什器負荷は設計者の判断により、決定されることとなる。

消費電力と発熱量の関係

消費電力と発熱量は基本的に等しい関係となる。
そのため、消費電力が大きいほど、発熱量も大きい。
但し、前項で紹介した通り、電力量が他のエネルギーへ変換される場合においてはその限りではない。

消費電力と発熱量の関係
消費電力[kW] = 発熱量[kW]

建築設備設計基準による什器負荷(その他の内部発熱負荷)

建築設備設計基準によれば、以下の室に対し、什器負荷(その他の内部発熱負荷)を見込むこととなる。
近年では建物のOAフロア化やIoT化が進み、発熱量が大きくなる傾向にある。

建築設備設計基準発熱量
事務室等事務室(OA化)会議室、上級室等
平成30年度版10~15 W/m215~30 W/m2
令和3年度版15~30 W/m210~15 W/m2
※負荷率は0.6とする。

什器負荷(その他の内部発熱負荷)の負荷率

建築設備設計基準によれば、什器負荷(その他の内部発熱負荷)の負荷率は一般に60%とされている。
但し、これは事務室の場合であり、同時使用する機器が概ね60%であると想定されているためだ。
つまり、用途によっては24時間連続して発生する負荷や、同時使用率が100%であると想定される場合には負荷率は100%となる。

什器負荷を冬期の利得してみられるかどうか

建築設備設計基準では什器負荷(その他の内部発熱負荷)を暖房時の利得としては計上しない。
但し、24時間連続で発熱する機器がある場合においては什器負荷を暖房時の利得として見込んでもよいだろう。
(発熱機器にもよるが、発熱機器の性質上、常に100%で発熱するとは限らないので、どの程度什器負荷を見込むかは都度検討が必要だろう。)

まとめ

今回は什器負荷としての発熱量の考え方について紹介した。
室内負荷のうち什器負荷の割合が小さい場合は、大きく問題となることは少ない。
しかし、室内負荷のうち什器負荷の割合が大きい場合は、空調が効かない等といったトラブルにつながる可能性がある。
そのため、什器負荷の計上方法については注意が必要だ。

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