排水管内の勾配と流速 -0.6m/s~1.5m/sの間で選定しよう 2024.03.30 こんにちは。排水管の計画を行う際に、よく排水勾配は何分の一までであれば計画してもよいかと悩むことがある。建築設備設計基準や公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)には最小勾配の基準しかない。そのため、一見すると急勾配にする分には特段問題がないとも読み取れる。しかし、急勾配と緩勾配のいずれにおいても排水が上手く機能しない。今回は、文献ごとの排水勾配と推奨流速について紹介する。 コンテンツ 排水勾配の基準建築設備設計基準と公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)空気調和衛生工学便覧流速上限(1.5m/s)から求められる勾配の上限排水管径毎の排水勾配の下限と上限まとめ 排水勾配の基準 建築設備設計基準と公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編) 建築設備設計基準および公共建築工事標準仕様書によれば、以下の通り排水管径と排水勾配が決められている。つまり、排水勾配の下限のみ記載されていることとなる。 排水管径 排水勾配 排水管 呼び径65以下 1/50以上 呼び径75および100 1/100以上 呼び径125 1/150以上 呼び径150以上 1/200以上 ドレン管 すべての径 1/100~1/150以上 排水横枝管と排水横主管の排水負荷単位ごとの排水勾配はこちらの記事で紹介しているため、是非参考にされたい。 【排水管】排水横主管、排水横枝管、排水たて管、屋外排水管の範囲こんにちは。排水管の負荷単位から排水管径を確認する際にいつも迷うこと。それはどこまでの範囲が排水横主管で、排水横管の範囲は一体どこなのかといったことだろう。排水負荷単位から排水管径を求める際はこれらの範囲をしっかりと把握しておく必要がある。... 空気調和衛生工学便覧 空気調和衛生工学便覧では排水横管の配管径毎の勾配について以下の通り記載されている。つまり、建築設備設計基準および公共建築工事標準仕様書のいずれの基準とも合致していることになる。但し、空気調和衛生工学便覧では排水流速についても記載がある。空気調和衛生工学便覧では「下限流速を0.6m/sとしてマニングの流量公式から導いた」勾配であるため、流速の下限については、呼び径と勾配から求められる。一方で流速上限については流速から別途配管径毎の勾配上限を求める必要がある。なお、排水勾配の上限について空気調和衛生工学便覧では「流速が大きくなることによる管路の破壊防止などを考慮して」と記載がある。それ以外にも、急勾配の場合、排水だけが配管内を先行して通過することにより、汚物が配管内に置き去りとなることも理由の一つだ。 排水管径 排水勾配 排水管 呼び径65以下 1/50以上 呼び径75および100 1/100以上 呼び径125 1/150以上 呼び径150以上 1/200以上 排水流速下限 排水流速上限 0.6m/s 1.5m/s 流速上限(1.5m/s)から求められる勾配の上限 空気調和衛生工学便覧によれば流速下限はマニングの公式から算定されていた。そのため、流速上限についても同様にマニングの公式から算定する。マニングの公式による、配管径と勾配による流速と流量一覧表を以下で公開している。 【必見】排水勾配と排水量がわかる-マニングの公式-はいこんにちは。普段排水の計算をしていて行政などからマニングの公式やクッターの公式を用いて計算するよう指導された経験はないだろうか。そのように指導された場合建築設備設計基準に記載の計算方法と異なるため困ってしまう方も多いかと思う。また純粋に... 上表中の黄色着色部分が流速0.6m/sから1.5m/sの範囲となる。なお、画面表示の都合上2%(1/50)勾配までしか掲載していないが、配管径毎の勾配上限は以下の通りとなる。 排水管径排水勾配上限排水管呼び径655.4%以下 (1/19以下)呼び径754.5%以下 (1/23以下)呼び径1003.0%以下 (1/33以下)呼び径1252.2%以下 (1/46以下)呼び径1501.7%以下 (1/59以下)呼び径2001.2%以下 (1/83以下)呼び径2500.9%以下 (1/111以下)呼び径3000.7%以下 (1/142以下) 排水管径毎の排水勾配の下限と上限 配管径毎の排水勾配の下限と上限を総括すると下表の通りとなる。 排水管径排水勾配下限排水勾配上限呼び径651/501/19呼び径751/1001/23呼び径1001/1001/33呼び径1251/1501/46呼び径1501/2001/59呼び径2001/2001/83呼び径2501/2001/111呼び径3001/2001/142 まとめ 今回は、文献ごとの排水勾配と推奨流速について紹介した。排水勾配の上限を考慮する場面としては主に、排水管の合流部だろう。急勾配で接続するべきか、ドロップさせるべきかといった選択を行うこととなるはずだ。その際の一つの判断指標として、頭の片隅においていただければと思う。
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