こんにちは。
近年徐々に外気温湿度が悪化しており、様々な場所での結露の発生が顕著である。
結露が発生する要因としては、外気絶対湿度が比較的高い状態で、外気を室内に導入する場合であることが多い。
特に、生外気を直接室内導入する方法では、結露の発生がより顕著となるわけだが、近年では、全熱交換器を用いても結露が発生することが増えている。
全熱交換器で熱交換をしても、絶対湿度が比較的高い状態であることが理由である。
今回は、熱交換器の熱交換効率や、外気の温湿度の推移と全熱交換器の出口温湿度の推移ならびに、確実に外気を処理する方法について紹介する。
全熱交換器とは、外気と室内の空気を熱交換して、少しでも室内の空気に近づけた状態で、外気を室内へ供給する機器である。
全熱交換器の仕組み上、機器の中には給気側と還気側それぞれにファンを設置する必要がある。
熱交換器内のエレメントと呼ばれる部分で、温度と湿度をそれぞれ熱交換する。
例えば、温度の変化に着目する。
屋外の空気が35℃で室内の空気が26℃だとする。
この時全熱交換器を用いない場合は35℃の空気を室内へそのまま供給することとなるわけだが、熱交換を行うことで、例えば外気が35℃から30℃になり、室内からの排気が26℃から31℃となる。
全熱交換器について詳しくは以下の記事で紹介しているため参照されたい。
全熱交換器の熱交換効率
全熱交換器には熱交換効率が設定されている。
熱交換効率とは、全熱交換器がどの程度の割合で熱交換が可能であるかを示したものであり、熱交換効率が高いほど、外気負荷が低減される。
つまり、熱交換効率が高いほど、結果として結露が発生しづらくなることに繋がる。
熱交換効率は以下の式で示される。
(以下はエンタルピーより熱交換効率を算定しているが、温度や絶対湿度を用いた場合においても、同様に計算が可能である。)
熱交換効率[%]の算定式 |
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(全熱交換器OAエンタルピー – 全熱交換器SAエンタルピー) ÷ (全熱交換器OAエンタルピー – 全熱交換器RAエンタルピー) |
熱交換効率[%]の計算例① | ||
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境界条件 | 全熱交換器OAエンタルピー | 80kJ/kg |
全熱交換器SAエンタルピー | 70kJ/kg | |
全熱交換器RAエンタルピー | 50kJ/kg | |
計算結果 | (80-70) ÷ (80-50) = 10 ÷ 30 = 33.3% |
熱交換効率[%]の計算例② | ||
---|---|---|
境界条件 | 全熱交換器OAエンタルピー | 90kJ/kg |
全熱交換器SAエンタルピー | 60kJ/kg | |
全熱交換器RAエンタルピー | 50kJ/kg | |
計算結果 | (90-60) ÷ (90-50) = 30 ÷ 40 = 75% |
近年の外気絶対湿度の推移
下図に東京における、2000年から2020年の月別平均温湿度を空気線図上で示す。
年々徐々に、線図が図内左上側に推移していることがわかるかと思う。
また、2020年度では、絶対湿度も上昇していることがわかる。
近年では日本各地で異常気象がよくニュースになっていることを踏まえると、今後さらに外気条件は悪化するものだと思われる。
年度別の月別最大平均エンタルピーにおける外気温湿度の露点温度を以下に紹介する。
年 | 外気温度 | 外気相対湿度 | 外気エンタルピー | 露点温度 |
---|---|---|---|---|
2000年 | 28.3℃ | 69% | 71.2kJ/kg | 22.1℃ |
2005年 | 28.1℃ | 68% | 69.9kJ/kg | 21.6℃ |
2010年 | 29.6℃ | 67% | 74.6kJ/kg | 22.8℃ |
2015年 | 26.7℃ | 78% | 70.9kJ/kg | 22.6℃ |
2020年 | 29.1℃ | 76% | 78.8kJ/kg | 24.4℃ |
下図に東京における、2019年から2023年の月別平均温湿度を空気線図上で示す。
2020年度の外気温湿度が特別に外気条件が悪いわけではないことがわかるだろう。
年度別の月別最大平均エンタルピーにおける外気温湿度の露点温度を以下に紹介する。
年 | 外気温度 | 外気相対湿度 | 外気エンタルピー | 露点温度 |
---|---|---|---|---|
2019年 | 28.4℃ | 80% | 78.7kJ/kg | 24.6℃ |
2020年 | 29.1℃ | 76% | 78.8kJ/kg | 24.4℃ |
2021年 | 27.4℃ | 80% | 74.7kJ/kg | 23.7℃ |
2022年 | 27.5℃ | 79% | 74.5kJ/kg | 23.5℃ |
2023年 | 29.2℃ | 78% | 80.6kJ/kg | 25.0℃ |
以下に2024年8月の日別日平均外気温度、相対湿度のプロット図を示す。
日別に確認すると、外気温度が30℃を超えており、比較的高湿度である日数が多い。
2024年8月日平均の最大エンタルピーであった2024/8/18における外気温湿度の露点温度を以下に紹介する。
年月日 | 外気温度 | 外気相対湿度 | 外気エンタルピー | 露点温度 |
---|---|---|---|---|
2024/8/18 | 29.7℃ | 82% | 85.5kJ/kg | 26.3℃ |
露点温度とは
露点温度とは、ある空気が結露が発生する温度のことを示す。
つまり、露点温度以下となると、空気が水分を保持しきれずに水滴となって、壁面や、床面、ガラス面等に発生する。
露点温度と結露
下記に室内の空調を行うと、エアコンや空調機からの吹き出し温度は13〜16℃程度であることが多い。
また、外気処理パッケージや外調機を用いる場合は、室内温湿度と等エンタルピーでの吹き出しであることが多く、20℃90%程度(露点温度:18.3℃)であることが多い。
すなわち、エアコンや外気処理パッケージ、外調機を介さずに外気を室内に取り入れる場合は、露点温度が18.3℃よりも高い空気であるほど結露が発生する可能性がある。
具体的には、外気の湿度が高いため、その空気が室内空気や空調機、エアコン等により冷却されると、外気取入れ空気が露点温度以下となることが想定される。
全熱交換器の出口露点温度
室内空気を26℃50%とし、熱交換効率を50%としたときの全熱交換器の出口露点温度を以下に紹介する。
年々、外気温湿度が上昇していることに伴い、全熱交換器の出口露点温度も上昇している傾向にある。
また、2024/8/18においては露点温度が21.4℃と2020年の露点温度を上回る結果となった。
つまり、20℃を大きく上回る結果となり、結露発生のリスクが増加していることが示唆された。
年月日 | 乾球温度 | 相対湿度 | エンタルピー | 露点温度 |
---|---|---|---|---|
2000年 | 27.2℃ | 60% | 61.9kJ/kg | 18.7℃ |
2005年 | 27.1℃ | 59% | 61.0kJ/kg | 18.4℃ |
2010年 | 27.8℃ | 60% | 63.9kJ/kg | 19.3℃ |
2015年 | 26.4℃ | 64% | 61.7kJ/kg | 19.0℃ |
2020年 | 27.6℃ | 65% | 66.1kJ/kg | 20.4℃ |
2024/8/18 | 27.9℃ | 68% | 69.2kJ/kg | 21.4℃ |
確実に湿度を処理するために
確実に湿度を処理するためには、外気処理パッケージによりあらかじめ外気を冷却したうえで室内へ供給する方法が挙げられる。
概ね、20℃90%(露点温度:18.3℃)程度で吹き出すため、結露が発生するリスクが低減する。
中央熱源方式を採用する場合は、外調機を使用することも考えられる。
外調機も外気処理パッケージ同様にある程度除湿したうえで吹き出すことが可能である。
(なお、設計者により、室内と等エンタルピーで吹き出すか、15度程度まで過冷却を行うかが分かれる部分でもある。)
外気処理パッケージと外調機については、以下の記事で詳しく紹介しているため、是非確認いただければと思う。
まとめ
今回は、熱交換器の熱交換効率や、外気の温湿度の推移と全熱交換器の出口温湿度の推移ならびに、確実に外気を処理する方法について紹介した。
近年では、結露に対するクレームが増えていることがあり、結露というワードに敏感になっている方も多い。
そのため、結露が発生するメカニズムを理解したうえで設計を行うことがより重要となるだろう。
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