ガラリにかかる圧損 -静圧計算に必要な圧損を紹介-

こんにちは。

静圧計算を行う際に戸惑うことの一つ。
それはガラリに対する圧損をどのように見込むかだろう。
ガラリの圧損については静圧計算上特に基準があるわけではない。
そのためにガラリの圧損の見込み方に戸惑いが生じてしまう。

今回は静圧計算時に必要なガラリに係る圧損について紹介する。

左図にファン、ダクトおよびガラリ廻りの断面イメージを示す。
ガラリとは主に外壁に設置される。
ガラリにはガラリチャンバーが接続され、またダクトが接続される。
空気を押し込むためにファンが設置され、
室内と屋外の空気をやり取りするために制気口が設置される。

ガラリに関してより詳しく知りたい方は以下のリンクからご確認頂ければと思う。

風速と動圧

風速[m/s] 動圧[Pa]
1.0 0.60
1.5 1.35
2.0 2.40
2.5 3.75
3.0 5.40
3.5 7.35
4.0 9.60

ガラリの抵抗を求めるためにはまず動圧を求める必要がある。

動圧は以下の式から求められる。

動圧[Pa] = 風速[m/s]の二乗 x 空気密度 ÷ 2
動圧[Pa] = 風速[m/s]の二乗 x 1.2 ÷ 2

上記式より求めた風速毎の動圧は左表となる。

風速が大きいほど動圧も大きくなる。

局部抵抗係数を用いた圧損の求め方

ガラリやダンパーなどのダクト附属品の圧損は通常局部抵抗係数と動圧を用いて計算を行う。
圧損は以下の式から求められる。

圧損[Pa] = 局部抵抗係数 x 動圧[Pa]

つまり局部抵抗係数および動圧が大きいほど圧損も大きくなる。

ガラリの圧損

次に考え得るガラリの圧損の見込み方について紹介する。

①建築設備設計基準

■ルーバーの局部抵抗係数
自由面積比 局部抵抗係数
0.5 4.5
0.6 3.0
0.7 2.1
0.8 1.4
0.9 1.0
出典:建築設備設計基準

建築設備設計基準ではルーバーに対しての局部抵抗係数が記載されている。
だが自由面積比は0.5が最小だ。
自由面積比とはルーバーの開口率を示す。

■自由面積比0.5の時の圧損
(局部抵抗係数 4.5)
風速[m/s] 動圧[Pa] 圧損[Pa]
1.0 0.60 2.70
1.5 1.35 6.08
2.0 2.40 10.8
2.5 3.75 16.88
3.0 5.40 24.30
3.5 7.35 33.08
4.0 9.60 43.20

ルーバーの自由面積比0.5の時の圧損を計算する。
ルーバーの自由面積比0.5の時の曲抵抗係数は4.5だ。
そのため風速毎の圧損は左表通りとなる。

上記で自由面積比0.5の時の圧損を計算した。
だが実際に用いるガラリは多くの場合自由面積比0.3~0.35程度だ。
そのため自由面積比0.3の場合における圧損を算出する。

左図に自由面積比と局部抵抗係数相関図を示す。
建築設備設計基準で得られた自由面積比0.5~0.9に対する局部抵抗係数をプロットした。
近似曲線より自由面積比 x と局部抵抗係数 y の関係は以下であることが示唆される。

y = 17.143×2 – 32.6x + 16.477

 
自由面積比 局部抵抗係数
0.3 8.24
0.4 6.18

自由面積比0.3および0.4の時の局部抵抗係数を左表に示す。
自由面積比0.3のときの局部抵抗係数は8.24となった。

■自由面積比0.3の時の圧損
(局部抵抗係数 8.24)

風速[m/s]動圧[Pa]圧損[Pa]
1.00.604.95
1.51.3511.13
2.02.4019.78
2.53.7530.90
3.05.4044.50
3.57.3560.57
4.09.6079.11

ルーバーの自由面積比0.3の時の圧損を計算する。
ルーバーの自由面積比0.3の時の曲抵抗係数は8.24だ。
そのため風速毎の圧損は左表通りとなる。

②メーカーカタログ

出典:空研工業カタログ

ガラリの圧損を求めるもう一つの方法がメーカーカタログによる場合だ。

例えば空研工業のカタログでは開口率約42%~45%のガラリに対して局部抵抗係数が給気の場合11.5、排気の場合は8.8と記載がある。
この値を使用しガラリの圧損を求めることも可能だ。

以下に給気と排気別かつ風速別の圧損を記す。

■給気(局部抵抗係数 11.5)

風速[m/s]動圧[Pa]圧損[Pa]
1.00.606.90
1.51.3515.53
2.02.4027.60
2.53.7543.13
3.05.4062.10
3.57.3584.53
4.09.60110.4

■排気(局部抵抗係数 8.8)

風速[m/s]動圧[Pa]圧損[Pa]
1.00.605.28
1.51.3511.88
2.02.4021.12
2.53.7533.00
3.05.4047.52
3.57.3564.88
4.09.6084.48

建築設備設計基準とメーカーカタログの比較

建築設備設計基準を基に求めたガラリの圧損ととメーカーカタログによるガラリの圧損の比較をを行う。

■給気

建築設備設計基準ベース(局部抵抗係数 = 8.24)メーカーカタログベース(局部抵抗係数 = 11.5)
風速[m/s]動圧[Pa]圧損[Pa]風速[m/s]動圧[Pa]圧損[Pa]
1.00.604.951.00.606.90
1.51.3511.131.51.3515.53
2.02.4019.782.02.4027.60
2.53.7530.902.53.7543.13
3.05.4044.503.05.4062.10
3.57.3560.573.57.3584.53
4.09.6079.114.09.60110.40

■排気

建築設備設計基準ベース(局部抵抗係数 = 8.24)メーカーカタログベース(局部抵抗係数 = 8.8)
風速[m/s]動圧[Pa]圧損[Pa]風速[m/s]動圧[Pa]圧損[Pa]
1.00.604.951.00.605.28
1.51.3511.131.51.3511.88
2.02.4019.782.02.4021.12
2.53.7530.902.53.7533.00
3.05.4044.503.05.4047.52
3.57.3560.573.57.3564.88
4.09.6079.114.09.6084.48

定義がはっきりしていないガラリの圧損としては最も不利側となるガラリの圧損を使用することが望ましいだろう。
つまり給気および排気のいずれの場合もメーカーカタログに記載の局部抵抗係数によりもとめたガラリの圧損を使用することが望ましい。

まとめ

今回は静圧計算時に必要なガラリに係る圧損について紹介した。

ガラリの圧損は建築設備設計基準上特に定義がない。
そのためより不利側で計算することとなるメーカーカタログに記載の局部抵抗係数により求めたガラリの圧損を使用することが望ましいだろう。

本稿を通じてガラリの圧損のみならず計算ロジックを少しでも理解いただくと静圧計算をより理解できるようになるはずだ。

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