こんにちは。
空調設備設計に携わっていていきなり躓く顕熱と潜熱。
主に熱を媒体として空調設備の設計を行う。
それを踏まえるとその熱の要素構成要素である顕熱と潜熱を理解することは必須だろう。
今回は顕熱と潜熱の違いおよびそれぞれの計算方法について紹介する。
空気調和衛生用語辞典によれば、顕熱は「相変化を伴わない場合の物体の温度を変えるための熱量」であり、潜熱は「相変化のための熱量」と定義されている。
なお、相変化とは「物体の状態が固体から液体へ、または気体へ、またはその逆の状態に変化すること」をいう。
つまり、単純な温度が変化する場合に発生する熱量を顕熱、状態変化を伴う場合に発生する熱量を潜熱という。
顕熱と潜熱の定義 | |
---|---|
顕熱 | 相変化を伴わない場合の物体の温度を変えるための熱量 |
潜熱 | 相変化のための熱量 |
顕熱とは
空調設備でよく使用される顕熱とは、主に乾球温度の変化を示す。
例えば左図のように空気が火で暖まったり逆に冷やされたりするような温度変化のことをいう。
他にも身近な例としては太陽の日射による温度上昇やパソコンからの機器発熱による周囲の空気温度の上昇が挙げられる。
その他にも自動販売機などの機械からの発熱による周囲の温度の上昇や人の呼吸等による温度の上昇も挙げられる。
他にもたくさんの要因はあるがこれらが比較的イメージしやすいだろう。
潜熱とは
続いて潜熱について紹介する。
前述のとおり、潜熱とは一般的に氷→水→空気のように物質の状態が変化する際に発生する熱のこという。
つまり、水から空気への状態変化が起これば、水分が空気中に溶け込むこととなる。
結果として、湿度(絶対湿度)が上昇する。
前項で紹介した顕熱とは異なり潜熱は若干イメージしづらいかもしれない。
これだけだとわかりづらいので先ほどと同様に一例を紹介する。
例えば夏場に室内を冷房し窓面が結露した場合を考えてみる。
この場合は結露は窓の外表面側にできるわけだが温度が低くなるほど空気が持つことができる水分量が少なくなる。
保持可能な水分量(水蒸気)が少ない空気がさらに冷やされるともともと温かかった空気の時に持っていた水分(水蒸気)がオーバーフローする。
実際にはオーバーフローしないのだが、空気中に保持できなくなった水蒸気が、実際に水に変化する。
これを結露というが、この水蒸気→水へ変化するために発生した熱を潜熱という。
他にも人の呼吸にも潜熱が発生している。
冬に手を覆いかぶせてハーッハーッと息をするとだんだんと手が湿ってくるだろう。
呼気に含まれている水蒸気が水へ状態変化しているためである。
顕熱と潜熱が同時に変化することはあるのか
顕熱と潜熱が同時に発生することは十分あり得る。
一般に空調負荷計算では人体負荷の内訳として、顕熱と潜熱の両方が存在している。
顕熱は人からの発熱であり、潜熱は主に人からの汗により発生する。
発熱は単純に温度上昇、温度低下の要因となる一方で、汗は水分から水蒸気への状態変化によって発生する熱量である。
つまり、顕熱(温度変化)と潜熱(状態変化)が同時に発生していることとなる。
顕熱と潜熱の計算方法
風量と温度差、絶対湿度差の3つの要素がわかっている場合における顕熱と潜熱の計算方法を以下に記す。
顕熱[kJ/h] = 空気密度[kg/m3] x 風量[m3/h] x 温度差[℃]
潜熱[kJ/h] = 水蒸発潜熱[kJ/kg] x 空気密度[kg/m3] x 風量[m3/h] x 温度差[kg/kg]
但し
空気密度 = 1.2[kg/m3]
水蒸発潜熱 = 2,500[kJ/kg]
空気線図上の顕熱、潜熱の動き
空気線図上における顕熱、潜熱の動きについて紹介する。
空気線図がよくわからない方はこちらをまず確認されたい。
顕熱が変化すると乾球温度が変化するため空気線図上は水平方向へ空気が動く。
一方潜熱が変化すると絶対湿度が変化することとなるため空気線図上は垂直方向へ空気が動く。
もし顕熱と潜熱が同時に発生する場合は空気は水平垂直のみならず斜めに動くこととなる。
まとめ
今回は顕熱と潜熱の違いおよびそれぞれの計算方法について紹介した。
顕熱と潜熱の考え方は1度慣れてしまえばそんなに難しいものではない。
しかし慣れるまでに時間がかかるので繰り返し学習し定着いただければと思う。
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