熱源機の送水温度 -送水温度による省エネ効果を紹介- 2022.04.192024.01.07 こんにちは。近年では省エネルギー策として様々な省エネルギー技術が確立されており当たり前のように行われている。熱源廻りについても標準大温度差送水とすることが近年では当たり前だ。今まではメーカー側が大温度差送水に対し対応しておらず特集仕様の熱源機が必要だった。ただそれも現在では大温度差送水に対応した形で各メーカーも標準大温度差仕様の熱源機をラインナップしている。空調設計屋さんとして熱源廻りの設計を行っていると当たり前のように大温度差送水としその送水温度が7℃と設定されている。通常建築設備設計基準等においても送水温度が7℃と記載されているがもしこの送水温度を変化させるとどうなるだろうか。建物運用後によくある事例が送水温度を7℃から8℃へ変化させて少しでも省エネを図ろうとする取り組みだ。今回は送水温度を変更するときの注意点とその効果について紹介する。 コンテンツ 送水温度が7℃である理由送水温度を変更した場合の電力量の試算まとめ 送水温度が7℃である理由 生データのダウンロードはこちらから。 中央熱源におけるシステム構成図を示す。熱源機があり冷水循環用にポンプが設置されている。循環している冷水は空調機まで供給されている。一方で熱源機から冷水を供給するために冷却塔を構えたシステムとしている。 前項でも紹介したが熱源機からの送水温度は7℃で還り温度は14℃とした。いわゆる標準大温度差と呼ばれる送水システムだ。簡単に紹介をしておくと送水温度が高くなると配管廻りでの熱ロスが小さくなりCOPが上昇し熱源機の能力も上昇する。また一方で送水温度が低くなると配管廻りでの熱ロスが大きくなりCOPが低下し熱源機の能力も低下する。送水温度とCOPの関係だが送水温度を1℃変更するとCOPは0.1程度変化する。(某メーカー) 一方で空調機について室内の空気を26℃50%にするためには空調吹出温度を13℃~16℃とする必要がある。ここでは最も不利側の13℃を空調吹出温度とする。 なお空気線図の読み方について詳しく知りたい方はこちらから。 ☆空気線図特集☆空気線図の基本的な使い方や様々な計算例、事例集を以下に紹介。空気線図の読み方が苦手な方や空気線図についてより幅広い使い方を学びたい方におすすめ。 1.空気線図の基本 空気線図の基本1 除湿量の計算方法 飽和効率とは 空気線図の基本2 相対湿... 7℃の冷水と空気が触れ合い空調吹出温度が13℃になるわけだ。ここの7℃と13℃というところがポイントで熱交換を行う際には最低でも冷水温度と空調吹出温度に6℃程度は必要という点だ。6℃程度ない場合空調の吹出空気が設計通りにならない恐れがあるため注意が必要だ。(実際には5℃程度までであれば問題ないことが多い)上記理由により送水温度が7℃とされている。 続いては例えば20℃50%の室が要求されるような特殊な室の場合。理由は病院であったり研究施設であったり様々だ。一例として例えばSHF=0.9程度であった場合を紹介する。空気線図上線を描いてみると10℃で空調吹き出しを行う必要がある。一方で冷水供給温度は空調吹出温度よりも6℃低くあるべきなので4℃となる。室条件により必要な冷水温度が異なることに注意が必要だ。 送水温度を変更した場合の電力量の試算 熱源容量を2,000kW、定格COPを3.5(送水温度7℃時)とした場合における年間の電力量について触れることとする。現実味がないものも含めて全部で4ケース(送水温度4℃,7℃,10℃,20℃)とした。送水温度によりCOPが変化する。消費電力は熱源容量/COPで算出した。また年間相当運転時間は1日8時間を240日平均負荷率40%で推移した時間とした。結果として送水温度が高いほど電力量および電気代も少なくなることが示唆された。ここには記載していないが熱源容量が高くなるうえでCOPが高くなるということは必要な機器のスペックが小さくなるということにつながる。従って通常は考え難いが20℃送水の場合等送水温度が高くなるほど機器の大きさそのものが小さくなることにつながる。(イニシャルコストが下がる) まとめ 今回は送水温度を変更するときの注意点とその効果について紹介した。送水温度を考えることは結果として省エネにもつながることが理解されたかと思う。
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