建築設備 -換気設備の概要について紹介

こんにちは。

近年では、建物の気密性がより高まっており、換気設備の重要性が高まっている。
適切な換気計画により、CO2濃度上昇の抑制や結露の抑制といった効果がある。
しかし、「令和7年度 ビル衛生管理講習会資料」で記載されている換気の不具合について確認すると、まだまだ換気の重要性の認知は、決して高くないといえよう。

今回は、換気設備の概要について紹介する。

建物と換気設備

昔の建物と換気

かつての日本の住宅は、木造構造が主流であり、現代の住宅と比べて気密性が低く、隙間の多い「スカスカ」な造りであった。
このような構造は、一見すると断熱性や防音性に劣るように見えるが、実際には自然換気を促進するという利点があった。
風は建物の隙間を通じて室内に入り、こもった空気を外へと押し出すことで、屋内の空気が常に入れ替わる仕組みになっていた。

技術の進歩

近年、建物の構造体は大きく変化している。
かつて主流であった木造に代わり、鉄骨造や鉄筋コンクリート造といった耐久性・耐火性に優れた構造が普及してきた。
これに伴い、建物の気密性や断熱性も大きく向上している。
断熱性能の向上は、冬の寒さや夏の暑さといった外気の影響を抑え、室内の快適性を高める目的で導入されたものである。
実際、断熱化によって冷暖房の効率が上がり、住環境の質は大きく改善された。
しかしその一方で、断熱化による気密性の向上は、新たな課題を生んでいる。
通気性が低下したことで、ホルムアルデヒドなどの有害物質が建物内に滞留しやすくなっている。

建物内で発生する有害物質

現代の建築において使用される多くの建材からは、揮発性有機化合物(VOC)と呼ばれる有害物質が常に発生している。
VOCは接着剤、塗料、合板、ビニルクロスなどに含まれており、建物の完成後も長期間にわたり微量ながら空気中に放出され続ける性質を持つ。
VOCの種類としては「トルエン」や「キシレン」、「エチルベンゼン」、「スチレン」、「ホルムアルデヒド」等が挙げられる。
VOCにより、近年では、シックハウス症候群と呼ばれる健康障害を引き起こすケースも報告されている。

シックハウス症候群

現代の住宅や建築物より発生するVOCは、完成後の建物内にも長期間にわたり放出されることが知られている。
シックハウス症候群とは、室内空気中の有害物質によって引き起こされる健康障害であり、目や喉の刺激、頭痛、吐き気、倦怠感などの症状が現れる。
特に子どもや高齢者、化学物質に敏感な人にとっては深刻な影響を及ぼす可能性がある。
建物の断熱性や気密性の向上により、エネルギー効率が高まる一方で、空気の流れが制限され、これらの有害物質が室内に滞留しやすい環境となっている。
そのため、建材の選定に加え、定期的かつ計画的な換気を行うことが、健康的な室内環境を維持する上で極めて重要である。

現在の建物

2003年の建築基準法改正により、シックハウス症候群の原因となる有害物質への対策が強化された。
これに伴い、住宅などの居室には、機械換気設備の設置が原則として義務付けられている。
現在では、建築基準法により24時間換気システムの導入が一般的となり、住まいの健康への意識が高まった。

換気の目的

しかし、換気の目的は有害物質の除去だけにはとどまらない。
主には、以下に示す有害物質の除去が換気の目的となる。

臭気 生活臭や建材臭、調理によるにおいなどが滞留すると、不快な空間となり、生活の質を損なう。
ガス 調理や暖房によって発生する二酸化炭素や一酸化炭素などの排出ガスを外へ逃がす目的がある。
室内にこもった熱を排出することで、冷房効果を高め、快適な室温を保つことができる。
湿気 湿度が高くなると、カビやダニの発生につながり、これもまた健康被害の要因となるため、湿気を効率よく排出する換気は重要である。

換気の種類

建築物における換気方式は、用途や目的に応じて、「第一種機械換気」「第二種機械換気」「第三種機械換気」の3種類に分類される。
第一種機械換気 給気と排気の両方を機械で行う方式。
第二種機械換気 給気を機械で行い、排気は自然に任せる方式。
第三種機械換気 排気を機械で行い、給気は自然に任せる方式。

第一種機械換気

第一種機械換気は、給気と排気の両方を機械(ファン)によって強制的に行う換気方式である。
外部からの新鮮な空気を機械で室内に取り込み、同時に室内の汚れた空気を機械で屋外に排出するため、室内を等圧に保つことが可能であることが最大の特徴である。

第二種機械換気

第二種機械換気は、給気を機械(ファン)、排気を自然排気によって強制的に行う換気方式である。
外部からの新鮮な空気を機械で室内に取り込み、室内に排気用の開口部を設け、自然に排気する。
室内を正圧(陽圧)に保つことが可能であることが最大の特徴である。
非住宅建物では主に居室に用いられることが多い。

第三種機械換気

第三種機械換気は、給気を自然給気、排気を機械(ファン)によって強制的に行う換気方式である。
外部からの新鮮な空気を開口部を通じて自然に室内に取り込み、室内に設置しているファンを用いて強制的に排気する。
室内を負圧(陰圧)に保つことが可能であることが最大の特徴である。
臭気やガス、熱等が発生する室に用いられることが多い。
住宅の居室に対しても用いられることが多い。

換気の方式

建築物における換気の方式は、大きく「全体換気方式」と「局所換気方式」の2種類に分類される。
全体換気方式 建物全体や各居室全体の空気を計画的に入れ替える方式。
シックハウス対策やCO₂濃度の抑制、温湿度管理などの目的で採用される。
局所換気方式 特定の場所に発生する臭気・蒸気・有害物質などを、直接外部へ排出する方式。
代表例としては、キッチンのレンジフードやトイレの換気設備などが挙げられる。
局所換気は、一時的に発生する空気汚染を即座に取り除くのに効果的である。

換気量の算定方法

建築物における適切な換気量を確保するためには、使用目的や室内環境に応じた算定が必要であり、その方法はいくつかに分類される。
主な換気量の算定基準としては、シックハウス対策、人員数、換気回数、発熱量などが挙げられる。

シックハウスより算出する方法

シックハウス対策としては、主に有害物質の濃度を一定以下に抑えることを目的としており、その換気量は必要最小限に設定されている。
建築基準法において住宅の場合は0.5回/h、すなわち1時間あたりに室内の空気を半分入れ替えることが求められている。非住宅においては、これよりさらに少ない0.3回/時が目安とされている。
これらの基準は、ホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC)の濃度上昇を抑制することに重点が置かれており、CO2の除去や臭気対策、熱・湿気の制御といった他の換気目的には十分とはいえない場合もある。

人員数により算出する方法

人員数による換気は主に「建築基準法」「ビル管法」「茶本」の大きく3種類の基準に基づき決定することが多い。
建築基準法 20m3/(h・人) V = 20Af/N
V = 換気量[m3/h]
Af = 居室の床面積[m2]
N = 専有面積[m2/人]
ビル管法 25m3/(h・人) V = 25N
V = 換気量[m3/h]
N = 人員数[人]
茶本 30m3/(h・人) V = 30N
V = 換気量[m3/h]
N = 人員数[人]
ビル管法・・・建築物における衛生的環境の確保に関する法律
茶本・・・建築設備設計基準

人員数の算出方法

換気量算定のための人員数を算定する方法としては、人員密度もしくは席数から算出することが一般的である。
人員密度から算出する方法としては室用途からある程度類推することとなる。
一方で人員数は席数から算出することが多い。

人員密度
事務室 0.1~0.2 (0.15) 人/m2
会議室 0.3~0.6 (0.5) 人/m2
講堂 0.3~1.0 (0.7) 人/m2
食堂 0.5~1.0 (0.8) 人/m2
人員数
席数 平面等から読み取る
計算例①床面積100m2の事務室、人員密度0.15人/m2
>人員数:100m2 x 0.15人/m2 = 15人 (小数点以下は切上げ)
>換気量:30m3/(h・人) x 15人 = 450m3/h

換気回数より算出する方法

室内で大量の熱や臭気、蒸気などが発生する用途の部屋については、一般的な人員基準ではなく、換気回数を基準として換気量を決定することが多い。
たとえば、厨房、機械室、トイレ、シャワー室、実験室などは、その使用中に継続的に熱・湿気・臭気・有害ガスなどが発生する。
このような空間では、「1時間あたりに室内の空気を何回入れ替えるか」という換気回数(回/h)が重要な指標となる。

室名 換気の要因 機械換気種別 換気回数
臭気 燃焼ガス 湿気 有毒ガス 一種 二種 三種 回/h
便所 5~15
更衣室 5
倉庫・機械室 5
印刷室 10
シャワー室 5
浴室 5~10
脱衣室 5
受水槽室 4

(参考)換気回数とは

換気回数とは、理論上、1時間あたりに室内の空気がすべて入れ替わる回数を指す指標である。
たとえば「換気回数2回/h」とは、1時間に室内の空気が2回分、すべて新しい空気と入れ替わることを意味する。
この値は、室内容積と実際に供給・排出される換気量から算出される。

発熱量等による換気

例えば厨房等の発熱量が発生する室による換気については、発生する熱量や燃焼ガスの有無など、空気環境への影響が大きく異なる。
厨房排気については換気回数による算定と、排気フードによる算定の大きい方を採用する。
これは、ガスの燃焼によって発生する水蒸気・二酸化炭素・一酸化炭素・熱などを十分に排出し、作業環境の安全性と快適性を確保するためである。

室名 換気の要因 機械換気種別 換気回数
臭気 燃焼ガス 湿気 有毒ガス 一種 二種 三種 回/h
湯沸室 5
厨房(ガス) 40~60
厨房(電気)

静圧とP-Q線図

動圧と静圧

空気の流れに関する圧力は大きく分けて「動圧」と「静圧」の2つに分類される。
動圧とは、空気が運動することによって生じる圧力であり、風速に比例して増加する。これは風の勢いそのものを表すエネルギーであり、例えばダクト内を高速で流れる空気が衝突したときの力に相当する。
一方、静圧は空気が壁や物体に静かに押し付けるような圧力であり、空気の流れとは関係なく作用する圧力である。換気やダクト設計においては、この静圧が空気を押し出す・吸い込むための「駆動力」として機能する。
そして、換気量やダクト設計などの換気計算においては、基本的に静圧のみを扱う。これは、ファンやダンパー、フィルターなどの抵抗要素における圧力損失の評価において、動圧よりも静圧が直接的に関係するためである。
動圧は風速の測定や風害対策などで考慮されることはあるが、換気計算という観点では、静圧を中心に設計・評価が行われるのが一般的である。

静圧

静圧とは、ダクト内を移動する空気に対してかかる圧力損失のことである。空気が流れる際、ダクトの形状や長さ、曲がり具合によって生じる抵抗により、圧力が低下する。この圧力の損失分を静圧として計算する。
具体的には、以下の要素が静圧損失に影響を与える。

ダクトの長さ 長くなればなるほど摩擦抵抗が増加し、静圧損失は大きくなる。
ダクトの断面寸法(大きさ) 小さな断面では空気の速度が上がり、静圧損失も大きくなる。
ダクトの曲がり(エルボ)や分岐 空気が乱れやすくなり、局所的な抵抗が増え、静圧損失が顕著となる。

静圧が大きいと

静圧が大きくなると、ダクト内の空気の流れに対する抵抗が増加するため、同じファンを使用していても風量が小さくなる傾向がある。
これは、空気を押し出す力に対して抵抗が強くなることで、実際に送れる空気の量が減少するためである。
したがって、静圧が大きい場合には、必要な換気量を確保するためにファンの能力を上げる必要がある。
ファンの性能を向上させることで、増加した静圧に打ち勝ち、十分な風量を維持することが可能となる。

P-Q線図

P-Q線図とは、ファンの性能を示す線図であり、風量(Q)と静圧(P)の関係をグラフ化したものである。
この図は、換気計画において必要な風量と静圧に対応するファンを適切に選定する際に用いられる。
一般的に、横軸に風量(m³/h や m³/min)、縦軸に静圧(Pa)をとり、ファンの能力曲線が描かれている。
この能力曲線は、あるファンが発揮できる風量と静圧の組み合わせを示している。

まとめ

今回は、換気設備の概要について紹介した。
建物の気密性がより高まっており、換気設備の重要性が高まっている。
そのため、換気を適切に計画することは今後より重要になるだろう。

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