地中熱ヒートポンプチラーと省エネ効果

こんにちは。

特に官庁施設においては、設計時に地中熱ヒートポンプや地中熱ヒートポンプチラーの導入検討を行うことが多く、主に採水量制限の観点からクローズドループ方式を前提とした導入検討が一般的である。
地中熱ヒートポンプチラーの導入検討を行う理由としては、地中内の未利用熱エネルギーを利用できることや、省エネ効果が比較的大きいとされるためである。
省エネ効果を試算するにあたっては、省エネ計算プログラム(通称WEBPRO)が使用されることが多いだろう。
省エネ計算プログラムでは、地中熱ヒートポンプチラーについては5段階評価される。
この5段階の評価による省エネ計算結果について検討されていない方も少なくない。

今回は地中熱ヒートポンプチラー(クローズドループ方式)と省エネ効果について紹介する。

省エネ計算プログラムの概要

現在では原則としてすべての新築住宅や非住宅建物で省エネ計算が義務付けられている。
具体的にはある一定の省エネ性能を担保されている建物しか建設することができないことを意味する。
非住宅建物においては省エネ計算プログラムとしては2種類用意されている。
一つ目がモデル建物法で、比較的簡易的な入力方法により省エネ計算を行う方法である。
もう一つが標準入力法(通称WEBPRO)では、建物の情報を詳細に入力することで省エネ計算を行う方法である。
詳細に計算を行うことで、より細かな省エネ技術を評価することができる点が標準入力法の大きな特徴である。

省エネ計算
モデル建物法比較的簡易的な入力で省エネ計算を行うことが可能
標準入力法より詳細に省エネ技術を評価することが可能

省エネ計算と地中熱ヒートポンプチラー

省エネ計算における地中熱ヒートポンプチラーの評価方法としては大きく下表に示すとおりである。
モデル建物法においてはウォータチリングユニットのタイプ1~5とパッケージエアコンディショナのタイプ1~5が選択できる。
一方で、標準入力法ではウォータチリングユニットのタイプ1~5とパッケージエアコンディショナのタイプ1~5に加えて、ウォータチリングユニットのタイプA~FとパッケージエアコンディショナのタイプA~Fが選択可能である。

なお、タイプ1~5はクローズドループ方式であり、タイプA~Fはオープンループ方式方式を示している。
(詳細は割愛する)

なお、今回は標準入力法での検討を前提とし、タイプ1~5を対象とて検討する。

モデル建物法
1 ウォータチリングユニット(水冷式地中熱タイプ1)
2 ウォータチリングユニット(水冷式地中熱タイプ2)
3 ウォータチリングユニット(水冷式地中熱タイプ3)
4 ウォータチリングユニット(水冷式地中熱タイプ4)
5 ウォータチリングユニット(水冷式地中熱タイプ5)
6 パッケージエアコンディショナ(水冷式地中熱タイプ1)
7 パッケージエアコンディショナ(水冷式地中熱タイプ2)
8 パッケージエアコンディショナ(水冷式地中熱タイプ3)
9 パッケージエアコンディショナ(水冷式地中熱タイプ4)
10 パッケージエアコンディショナ(水冷式地中熱タイプ5)
標準入力法
1 ウォータチリングユニット(水冷式地中熱タイプ1)
2 ウォータチリングユニット(水冷式地中熱タイプ2)
3 ウォータチリングユニット(水冷式地中熱タイプ3)
4 ウォータチリングユニット(水冷式地中熱タイプ4)
5 ウォータチリングユニット(水冷式地中熱タイプ5)
6 ウォータチリングユニット(水冷式地中熱タイプA)
7 ウォータチリングユニット(水冷式地中熱タイプB)
8 ウォータチリングユニット(水冷式地中熱タイプC)
9 ウォータチリングユニット(水冷式地中熱タイプD)
10 ウォータチリングユニット(水冷式地中熱タイプE)
11 ウォータチリングユニット(水冷式地中熱タイプF)
12 パッケージエアコンディショナ(水冷式地中熱タイプ1)
13 パッケージエアコンディショナ(水冷式地中熱タイプ2)
14 パッケージエアコンディショナ(水冷式地中熱タイプ3)
15 パッケージエアコンディショナ(水冷式地中熱タイプ4)
16 パッケージエアコンディショナ(水冷式地中熱タイプ5)
17 パッケージエアコンディショナ(水冷式地中熱タイプA)
18 パッケージエアコンディショナ(水冷式地中熱タイプB)
19 パッケージエアコンディショナ(水冷式地中熱タイプC)
20 パッケージエアコンディショナ(水冷式地中熱タイプD)
21 パッケージエアコンディショナ(水冷式地中熱タイプE)
22 パッケージエアコンディショナ(水冷式地中熱タイプF)

ウォータチリングユニット(水冷式地中熱タイプ1~5)

水冷式地中熱タイプ1~5は下表に示すとおりに判定される。
相当最大熱交換能力の値が小さいほど熱交換効率が高いことを意味し、タイプ1が熱交換効率が高いことを意味する。

タイプ1~5の判定
タイプ1 相当最大熱交換能力30未満[W/m]
タイプ2 相当最大熱交換能力30以上50未満[W/m]
タイプ3 相当最大熱交換能力50以上70未満[W/m]
タイプ4 相当最大熱交換能力70以上90未満[W/m]
タイプ5 相当最大熱交換能力90以上[W/m]

地中熱ヒートポンプチラー(クローズドループ方式)と省エネ効果試算

境界条件

地中熱ヒートポンプチラー(クローズドループ方式)の省エネ効果について、ケーススタディを行う。
省エネ計算ツールである標準入力法で紹介されているサンプルモデル「事務所モデル(標準入力法)」を用いて検討を行った。
また、官庁施設における地中熱利用システム導入ガイドライン(案)(出典:国交省)より冷房時と暖房時のCOPを設定した。
熱源水循環ポンプと冷温水一次ポンプの消費電力は筆者の経験から決定した。

地中熱ヒートポンプチラー計算条件
冷房時COP5
暖房時COP3.5
熱源水循環ポンプ22kW
冷温水一次ポンプ15kW

省エネ効果試算

サンプルモデルを基準値とし、地中熱ヒートポンプチラータイプ1~5の省エネ効果について試算を行った。
また、参考として、空冷モジュールチラー(ウォータチリングユニット)空冷式モジュール形))とした場合の省エネ効果も併記した。
空冷モジュールチラーについてはD社のCOP(冷房時:3.26、暖房時:3.66)を採用した。
結果、基準に対して地中熱ヒートポンプチラーのいずれのタイプも一定の省エネ効果が見込まれる結果となった。
ただし、地中熱ヒートポンプチラータイプ3と空冷モジュールチラーの省エネ効果はおおむね同等であることから、より省エネを見込むためには地中熱ヒートポンプチラータイプ1もしくはタイプ2とすることで、地中熱ヒートポンプチラーの強みを生かせる結果となった。

まとめ

今回は地中熱ヒートポンプチラー(クローズドループ方式)と省エネ効果について紹介した。
地中熱は未利用エネルギーの一つであり、まだまだポテンシャルが高いエネルギー源である。
また、省エネ効果も比較的高いため、省エネ効果に特化する際には地中熱ヒートポンプチラーは選択肢の一つとなりうるだろう。

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