こんにちは。
現在では建物の新築時や増築時においては省エネ計算がほぼ必須となっている。
省エネ計算結果によっては設計の手戻りが発生し、設計者の頭を悩ませることが多い。
しかし、省エネ計算の評価方法も少しずつ拡大している。
たとえば、ビル用マルチパッケージにおいては、台数制御を適用できるようになった。
具体的にはある程度大きい馬力数を持ったビル用マルチパッケージにおいては、小さな容量の複数台のビル用マルチパッケージにより構成される。
今まではこのようなケースにおいては、台数制御を評価することができなかった。
しかし、現在においては台数制御有として評価することが可能となった。
今回は、ビル用マルチパッケージの台数制御によるBEI(省エネ性能)の推移について紹介する。
前述のとおりであるが、ある程度大きい馬力数を持ったビル用マルチパッケージにおいては、小さな容量の複数台のビル用マルチパッケージにより構成される。
具体的には下図に示すとおりではあるが、8馬力は1台で構成されることに対し、22・24馬力は複数台で構成される。
(22馬力は10馬力と12馬力の2台構成であり24馬力は12馬力が2台で構成される。)
台数制御を行うことで、機器の効率が極力高い状態で年間を通じて運転することが可能となる。
ケーススタディ
使用するモデル
使用するモデルは標準入力法による省エネ計算時に、サンプルとして予め用意されているIBEC事務所とする(以降サンプルモデルという)。
なお、サンプルモデルにおいては22馬力と36馬力のビル用マルチパッケージが1台ずつ入力されている。
そのため、22馬力と36馬力に対して、台数制御による省エネ効果を試算する。
検討ケース
検討ケースとして、従来どおりビル用マルチパッケージを構成する機器を1台にまとめて入力する方法とビル用マルチパッケージを構成する機器ごとに入力する方法に大別した。
また、ダイキン工業の機器をベースに標準仕様と高効率仕様の2種類に細分化して検討した。
| 検討ケース | |||
|---|---|---|---|
| ケース1-1 | まとめて入力 | 標準仕様 | 台数制御無 |
| ケース1-2 | まとめて入力 | 高効率仕様 | 台数制御無 |
| ケース2-1 | まとめて入力 | 標準仕様 | 台数制御有 |
| ケース2-2 | まとめて入力 | 高効率仕様 | 台数制御有 |
| ケース3-1 | 分けて入力 | 標準仕様 | 台数制御無 |
| ケース3-2 | 分けて入力 | 高効率仕様 | 台数制御無 |
| ケース4-1 | 分けて入力 | 標準仕様 | 台数制御有 |
| ケース4-2 | 分けて入力 | 高効率仕様 | 台数制御有 |
機器の仕様
機器の仕様は一般的な標準仕様と高効率仕様の2種類を用意した。
標準仕様の22馬力については複数台数による機器構成ではなかった。
| 共通 | Xシリーズ | ||||||||
| 入力方法 | 馬力 | 台数 | 定格能力 | 定格消費電力 | 定格COP | ||||
| 冷房時 | 暖房時 | 冷房時 | 暖房時 | 冷房時 | 暖房時 | ||||
| [馬力] | [台] | [kW] | [kW] | [kW] | [kW] | [-] | [-] | ||
| 分けて入力 | 22馬力 | 10馬力 | 1 | 28.00 | 31.50 | 7.15 | 6.94 | 3.92 | 4.54 |
| 12馬力 | 1 | 33.50 | 37.50 | 8.07 | 7.91 | 4.15 | 4.74 | ||
| 合計 | 1セット | 61.50 | 69.00 | 15.22 | 14.85 | 4.04 | 4.65 | ||
| 36馬力 | 12馬力 | 3 | 33.50 | 37.50 | 8.07 | 7.91 | 4.15 | 4.74 | |
| 合計 | 1セット | 100.50 | 112.50 | 24.21 | 23.73 | 4.15 | 4.74 | ||
| まとめて入力 | 22馬力 | 1 | 61.50 | 69.00 | 15.30 | 14.90 | 4.02 | 4.63 | |
| 36馬力 | 1 | 100.00 | 112.00 | 24.10 | 23.70 | 4.15 | 4.73 | ||
| 共通 | Aシリーズ | ||||||||
| 入力方法 | 馬力 | 台数 | 定格能力 | 定格消費電力 | 定格COP | ||||
| 冷房時 | 暖房時 | 冷房時 | 暖房時 | 冷房時 | 暖房時 | ||||
| [馬力] | [台] | [kW] | [kW] | [kW] | [kW] | [-] | [-] | ||
| 分けて入力 | 22馬力 | 10馬力 | 0 | – | – | – | – | – | – |
| 12馬力 | 0 | – | – | – | – | – | – | ||
| 合計 | 1セット | 61.50 | 69.00 | 20.30 | 23.20 | 3.03 | 2.97 | ||
| 36馬力 | 16馬力 | 1 | 45.00 | 50.00 | 12.90 | 15.10 | 3.49 | 3.31 | |
| 20馬力 | 1 | 56.00 | 63.00 | 15.70 | 19.10 | 3.57 | 3.30 | ||
| 合計 | 1セット | 101.00 | 113.00 | 28.60 | 34.20 | 3.53 | 3.30 | ||
| まとめて入力 | 22馬力 | 1 | 61.50 | 69.00 | 20.30 | 23.20 | 3.03 | 2.97 | |
| 36馬力 | 1 | 100.00 | 112.00 | 28.10 | 33.60 | 3.56 | 3.33 | ||
試算結果
| ケース | BEI-AC |
|---|---|
| ケース1-1 | 0.57 |
| ケース1-2 | 0.47 |
| ケース2-1 | 0.57 |
| ケース2-2 | 0.47 |
| ケース3-1 | 0.58 |
| ケース3-2 | 0.47 |
| ケース4-1 | 0.49 |
| ケース4-2 | 0.36 |
ケースごとのBEI-AC(空調設備の省エネ性能)試算結果を紹介する。
台数制御を行うことで、おおよそBEI-ACが0.1程度向上する結果となった。
空調系統の細分化をした場合
前項までは22馬力と36馬力がそれぞれ1台設置される場合における省エネ性能を検討した。
一方で、22馬力ならびに36馬力を例えば、22馬力と16馬力、20馬力に細分化した場合における省エネ性能を確認する。
標準仕様(ケース5-1)と高効率仕様(ケース5-2)の2パターンを検討する。
なお高効率仕様については16馬力(8馬力x2台),20馬力(8馬力+12馬力)においても台数制御が有として試算する。
試算結果
| ケース | BEI-AC |
|---|---|
| ケース5-1 | 0.57 |
| ケース5-2 | 0.37 |
ケース5-1については、結果として台数制御無となったため、BEIはケース1-1,2-1,3-1と同等となった。
一方でケース5-2については、台数制御有のためケース4-2と同等となった。
まとめ
今回は、ビル用マルチパッケージの台数制御によるBEI(省エネ性能)の推移について紹介した。
台数制御有となる機器を導入することで、BEI(省エネルギー性能)がおおよそ0.1程度向上する結果となった。
実際の建物用途や形状等によりBEIの低減率は大きく異なるかと思われるが、傾向としてはBEIは向上すると示唆される。
現在検討されている建物の省エネ性が目標に届いていない場合は、是非参考にしていただきたい。

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