ホーム > 機械設備一般 CO2削減量要素分解時の注意点 -CO2排出係数と省エネ効果- 2025.10.03 こんにちは。2050年までにカーボンニュートラルが求められており、建物の脱炭素化にむけて、各年度のCO2排出量を管理している事業者は少なくない。各年度のCO2排出量を算定するためには、電気やガスなどの光熱費を積み上げることとなる。積み上げた情報を基にCO2排出量を毎年比較すると、CO2排出量の増減が確認できる。そのCO2排出量の増減の要因としては省エネ効果や使用量の削減のほか、CO2排出係数が挙げられる。CO2排出量の増減の分析にあたってCO2排出係数によるCO2排出量の増減とその他の要因によるCO2排出量の増減の分別が難しい。今回はCO2削減量のうち、CO2排出係数と省エネ効果の要素分解のパターンについて紹介する。 コンテンツ CO2排出係数の概要CO2排出係数とはCO2排出係数の性質電力のCO2排出係数の推移CO2排出量と削減効果の要因大きな枠組みで見るCO2削減量CO2排出係数のみ変動した場合のCO2削減量電力量のみ変動した場合のCO2削減量排出係数と省エネで重複するCO2削減量全体のCO2削減量を整合させるために(参考)細かな方法については環境省等では公開されていないまとめ CO2排出係数の概要 CO2排出係数とは CO2排出係数とは、ある燃料や電気を1単位(例:1kWh、1L、1㎥など)使用したときに排出される二酸化炭素の量を示す係数のことである。一般的に単位は「kg-CO2/燃料の単位」で示される。 CO2排出係数 用語の意味 CO2排出係数とは、ある燃料や電気を1単位(例:1kWh、1L、1㎥など)使用したときに排出される二酸化炭素の量を示す係数のこと。 単位 kg-CO2/燃料の単位 CO2排出係数の性質 ガスや油などは燃焼により熱を発生させているため、CO2排出係数は一定である。 一方で、火力発電所による化石燃料や、原子力発電所などから電気が作られているため、電力会社および年度によりCO2排出係数が変動する性質がある。 例えば太陽光発電の場合は物質を燃焼させて電気を生み出しているわけではなく、自然由来の太陽光より電気を発生させているため、CO2排出係数はゼロとなる。 (太陽光発電そのものの製造や破棄などにより厳密にはCO2が排出されている。) CO2排出係数の性質ガスや油CO2排出係数は一定電気電力会社や年度により異なる 電力のCO2排出係数の推移 2013年度から2022年度までの各電力会社のCO2排出係数推移を下図に示す。関西電力のCO2排出係数が比較的小さく、沖縄電力のCO2排出量が大きいことがわかる。また、2013年度と2022年度のCO2排出係数を比較すると、いずれの電力会社もCO2排出係数が低下している。詳細はこちらの記事より参照いただければと思う。 CO2排出量の算定方法 -建物からのCO2排出量算定ツールも紹介-こんにちは。近年、建物の脱炭素化がより積極的に図られることもあり、建物からのCO2排出量を算定することが多々ある。そのため、建物の消費電力量やガス使用量からCO2排出量を求める必要がある。しかし、普段からCO2排出量の算定していないと算定方... CO2排出量と削減効果の要因 大きな枠組みで見るCO2削減量 各年度のCO2排出量を見比べる場合、一般的には左図に示すとおり、全体のCO2排出量のみを比較し削減量を確認することとなる。左図の例でいえば、CO2削減前が0.5kg-CO2/kWhに100kWhを乗じて50kg-CO2であることに対し、CO2削減後が0.4kg-CO2/kWhに80kWhを乗じて32kg-CO2となる。結果、18kg-CO2の削減となる。 CO2排出係数のみ変動した場合のCO2削減量 先ほどの例を要素分解する。具体的にはCO2排出係数のみ変動した場合におけるCO2削減量を確認する。CO2削減前が0.5kg-CO2/kWhに100kWhを乗じて50kg-CO2であることに対し、CO2削減後が0.4kg-CO2/kWhに100kWhを乗じて40kg-CO2となる。結果、10kg-CO2の削減となる。 電力量のみ変動した場合のCO2削減量 次に電力量のCO2削減量のみを抽出する。CO2削減前が0.5kg-CO2/kWhに100kWhを乗じて50kg-CO2であることに対し、CO2削減後が0.5kg-CO2/kWhに80kWhを乗じて40kg-CO2となる。結果、10kg-CO2の削減となる。 排出係数と省エネで重複するCO2削減量 前項で紹介した通りCO2排出係数および電力量によるCO2削減量を要素分解すると、それぞれのCO2削減量は10kg-CO2となり、合計で20kg-CO2となる。しかし、総量としてのCO2削減量は18kg-CO2である。つまり、要素分解した際に一部のCO2削減量(2kg-CO2)が重複していることとなる。 全体のCO2削減量を整合させるために CO2排出係数によるCO2削減量および電力量によるCO2削減量と全体のCO2削減量を整合させるためには、大きく三種類の方法が考えられる。一つ目はCO2排出係数によるCO2削減量を優先する方法である。全体のCO2削減量18kg-CO2のうち、CO2排出係数によるCO2削減量が10kg-CO2の場合、結果として電力量によるCO2削減量は8kg-CO2となる。二つ目は電力量によるCO2削減量を優先する方法である。全体のCO2削減量18kg-CO2のうち、電力量によるCO2削減量が10kg-CO2の場合、結果としてCO2排出係数によるCO2削減量は8kg-CO2となる。三つ目はCO2排出係数によるCO2削減量および電力量によるCO2削減量より割合で案分する方法である。全体のCO2削減量が18kg-CO2であり、CO2排出係数によるCO2削減量および電力量によるCO2削減量が1:1の場合はそれぞれのCO2削減量は9kg-CO2となる。 全体のCO2削減量を整合させるための方法方法①CO2排出係数の見直しによるCO2削減量を優先方法②電力量低減によるCO2削減量を優先方法③CO2排出係数と電力量の低減によるCO2削減量よりCO2削減量を按分 (参考)細かな方法については環境省等では公開されていない 全体のCO2削減量を整合させるために考えられる手法について、環境省・温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(温対法:SHK制度)では、明確には定義されていない。そのため、CO2排出係数によるCO2削減量を優先するかもしくは省エネによるCO2削減量を優先するかは、各事業者により委ねられるものと考えられる。 まとめ 今回はCO2削減量のうち、CO2排出係数と省エネ効果の要素分解のパターンについて紹介した。用途や重要視する内容により、CO2排出係数と省エネ効果の要素分解の方法を決定することが重要だろう。
コメント