EHPとGHPの省エネ性能の比較

こんにちは。

省エネ法の改正に伴い、省エネ性能を常に意識しながら空調方式を検討する必要がある。
また、昨今世界中で求められている脱炭素化の観点からも空調方式を検討することが重要である。
中小ビルの場合は主に電気式ヒートポンプ(EHP)とガス式ヒートポンプ(GHP)のいずれかを採用する場合が多い。

今回は、EHPとGHPの省エネ性能の比較について紹介する。

計算条件

共通条件

使用するモデル

標準入力法による省エネ計算にあたって、サンプルとして予め用意されているIBEC事務所を使用する(以降サンプルモデルという)。
サンプルモデルにおいては22馬力と36馬力のビル用マルチパッケージが予め1台ずつ入力されている。

そのため、サンプルモデルの利用にあたっては予め入力されている能力と同等の能力を用いて比較する。
具体的にはメーカーカタログに記載されている仕様を使用し、比較検討を行う。

また、省エネ法上では計画地域ごとに1地域から8地域まで用意されている。
地域ごとの省エネ性能やCO2排出量を算出する際には空調機器の能力は変更しないこととする。

CO2排出係数

CO2排出量の算定にあたっては、地域区分ごとに下表の電力会社のCO2排出係数を用いることとした。
またガスのCO2排出係数は2.05kg-CO2/m3とした。

地域区分 電力会社 排出係数
kg-CO2/kWh
1,2地域 北海道電力 0.532
3地域 東北電力 0.385
4地域 北陸電力 0.481
5,6地域 東京電力 0.408
7地域 九州電力 0.402
8地域 沖縄電力 0.638

EHP

ダイキン工業のカタログに掲載されている機器を比較対象とする。
また高効率仕様(Xシリーズ)と標準仕様(Aシリーズ)の2種類を検討する。

共通Xシリーズ
入力方法馬力台数定格能力定格消費電力定格COP
冷房時暖房時冷房時暖房時冷房時暖房時
[馬力][台][kW][kW][kW][kW][-][-]
分けて入力22馬力10馬力128.0031.507.156.943.924.54
12馬力133.5037.508.077.914.154.74
合計1セット61.5069.0015.2214.854.044.65
36馬力12馬力333.5037.508.077.914.154.74
合計1セット100.50112.5024.2123.734.154.74
共通 Aシリーズ
台数制御 馬力 台数 定格能力 定格消費電力 定格COP
冷房時 暖房時 冷房時 暖房時 冷房時 暖房時
[馬力] [台] [kW] [kW] [kW] [kW] [-] [-]
22馬力 10馬力 0
12馬力 0
合計 1セット 61.50 69.00 20.30 23.20 3.03 2.97
36馬力 16馬力 1 45.00 50.00 12.90 15.10 3.49 3.31
20馬力 1 56.00 63.00 15.70 19.10 3.57 3.30
合計 1セット 101.00 113.00 28.60 34.20 3.53 3.30

GHP

ダイキン工業のカタログに掲載されている機器(ヤンマーのOEM)を比較対象とする。

共通 GHPエグゼア
台数制御 馬力 台数 定格能力 定格消費電力 ガス消費量
冷房時 暖房時 冷房時 暖房時 冷房時 暖房時
[馬力] [台] [kW] [kW] [kW] [kW] [kW] [kW]
22馬力 10馬力 0
12馬力 0
合計 1セット 56.00 63.00 0.998 0.602 49.4 44.6
36馬力 16馬力 0
20馬力 2 56.00 63.00 0.998 0.602 49.4 44.6
合計 1セット 102.00 126.00 1.996 1.204 98.8 89.2

比較検討結果

省エネ性能(BEI/AC)

省エネ法上の地域別かつ機種べつに省エネ性能(BEI/AC)を比較した結果、EHPの方が全体的に省エネ性能が高い結果となった。
(BEI/ACの値が小さいほど省エネ性能が高い)
また、1地域から8地域はそれぞれ北海道から沖縄までを示しているが、地域別に熱源容量に変更を加えていないため、BEI/ACの数値が全体的に上昇している。

BEI/AC EHP(Xシリーズ) EHP(Aシリーズ) GHP
1地域 0.63 0.87 1.01
2地域 0.60 0.83 0.95
3地域 0.48 0.64 0.78
4地域 0.44 0.59 0.72
5地域 0.36 0.49 0.62
6地域 0.36 0.49 0.60
7地域 0.33 0.45 0.56
8地域 0.33 0.40 0.46

CO2排出量

CO2排出量を地域別かつ機種別に比較した。
いずれの地域においても、EHPの高効率機器(Xシリーズ)が最もCO2排出量が少なくなった。
また、地域によっては、EHPの標準機器(Aシリーズ)はGHPよりもCO2排出量が大きくなった。

CO2排出量
kg-CO2
EHP(Xシリーズ) EHP(Aシリーズ) GHP
1地域 26,515 39,724 39,710
2地域 24,983 37,405 37,390
3地域 12,116 18,045 26,694
4地域 13,694 20,601 25,213
5地域 9,196 14,933 22,188
6地域 10,498 16,361 23,631
7地域 8,780 14,424 21,719
8地域 20,390 26,598 22,972

まとめ

今回は、EHPとGHPの省エネ性能の比較について紹介した。
いずれの地域においてもGHPよりもEHPのほうが省エネ性能が高かった一方で、CO2排出量は地域によって異なる。
これらの特徴を踏まえたうえで、空調方式を選定することが重要であろう。

コメント