室内許容音値とNC値について紹介

こんにちは。

室内の空調方式や制気口を計画する際に室内の許容騒音値を考慮しながら計画する必要がある。
建築設備設計基準では、許容騒音値についてNC値での記載があるが、いまいちよく理解ができない方が少なくないだろう。

今回は、NC値と室内許容騒音値について紹介する。

NC値

NC値とは

NC値は、空間内の騒音レベルを示すな指標であり、室内の快適性や利用環境に大きく影響を与える。
騒音値とは一般的に単一の値ではなく、周波数ごとに音圧レベルが異なる。
そのため、NC値は複数の周波数帯域における音圧レベルの分布を総合的に評価する形で決定される。

具体的には、騒音は63Hzから8,000Hzまでのオクターブバンドに分けられ、それぞれの帯域での音圧レベルを測定する。
測定した音圧レベルは、NC曲線と呼ばれる基準曲線(左図)と比較され、すべての周波数帯域が曲線以下であれば、その曲線が示すNC値が空間の騒音レベルとなる。

例えば、空間内で低音の騒音が多く発生している場合、63Hzや125Hzといった低い周波数帯域での音圧レベルが高くなる。(左図)
低周波数帯の騒音値が大きいと、空間内で「うなり」や「振動」を感じやすくなる。

一方で、高音の騒音が大きい場合は、4,000Hzや8,000Hzといった高い周波数帯域で音圧レベルが大きくなる。(右図)
結果、「耳障りな音」として認識されることが多い。

周波数ごとの音圧レベルとNC値

周波数ごとの音圧レベル(騒音値)をした表に示す。
NC値を計算するにあたっては、すべての周波数帯であるNC値を満足することが求められる。
例えば、事務室等では一般的にNC-40程度が求められることが多い。
NC-40を満足するためには、例えば、63Hzでは64dB、1,000Hzでは41dBといった値をすべて満足する必要がある。

NC値周波数別音圧レベル(騒音値)[dB]
631252505001k2k4k8K
NC-708379757371706968
NC-658075716866646362
NC-607771676361595857
NC-557467625856545352
NC-507164595451494847
NC-456760544946444342
NC-406457514541393837
NC-356053464036343332
NC-305748413531292827
NC-255445383127242221
NC-205140332622191716
NC-154736292217141211

NC値の算出方法

確認例①

左図の例であれば、125Hz帯以外の音圧レベルはいずれも、NC-40を満足しているが、125Hz帯はNC-50である。
そのため、現状では空間の評価としては、NC-50となる。
NC-50をNC-40とするためには、125Hzの音圧レベルが57dB以下となるように消音装置等の検討を行う必要がある。

確認例②

左図の例であれば、1,000Hz帯以下の音圧レベルはいずれも、NC-35を満足しているが、2,000Hz帯以上はNC-40である。
そのため、現状では空間の評価としては、NC-40となる。

室内許容騒音値

下表に、建物種別室別の室内許容騒音値(NC値)を示す。

一般的な庁舎や事務所ビルの場合は、事務室用途でNC-40と設定することが多い。
また、会議室についてはNC-35と設定することが多い。

その他の用途についても、それぞれの空間の特性や利用目的に応じたNC値が設定されている。
たとえば、病院では患者の快適性や治療環境を考慮し、病室はNC-35程度が求められることが一般的である。

学校教室についても、生徒が集中しやすい環境を整えるために、NC-35前後に設定されるケースが一般的である。

劇場やホールなどの音響施設では、演奏や講演の品質を確保するためにNC-20〜25程度といった低い値が求められることが多い。
また、特に劇場やホールといった施設では、別途音響については音響を専門に考えるコンサルが設計段階から参画するケースがある。

また、研究所や生産施設といった特殊施設においては、一般的にドラフトチャンバーなどの局所排気装置が設置されることが多い。
室内で騒音が発生する機器があるため、許容騒音値の設定自体が難しい傾向があるが、実験や検査に対して騒音に関する配慮が不要かどうかを確認する必要がある。

室名NC値
平均
庁舎大臣室、次官室253035
会議室(高級)、応接室253035
高級室303540
会議室(一般)303540
事務室、製図室354045
ホール、廊下354045
資料室、計算室404550
事務所重役室、会議室(高級)253035
高級室、応接室303540
事務室354045
公共建築公共図書館、裁判所3540
音楽堂3540
銀行、郵便局3540
病院病室、手術室、診療室3540
待合、廊下、検査室4045
ホール、ロビー4550
学校教室、図書室303540
研究室354045
ホール、廊下354550
劇場録音スタジオ2025
コンサートホール2025
舞台劇場2530
ロビー303540
住宅個人住宅(郊外)202530
個人住宅(都市)253035
アパート303540
食堂レストラン354045
食堂404550
体育館大演技場(アリーナ)3045
体育館354045

まとめ

今回は、NC値と室内許容騒音値について紹介した。

許容騒音値内となるように設計を進めることで、建物利用者が快適に過ごすことが可能な施設ができる。
そのため、NC値を常に意識しながら空調設備を計画することが大切である。

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