電気設備の概要 -受変電設備や動力設備等各種設備について紹介-

こんにちは。

電気設備といえば、強電や弱電を始め、様々な設備がある。
これらの各種設備の全体像を把握しておかないと、各設備のつながりがわからず、全体的にちぐはぐした計画となってしまう可能性がある。

今回は電気設備の各種設備について紹介する。

電気設備は大きく強電設備と弱電設備に大別される。
強電設備は受変電設備、動力設備、電灯設備、非常照明・誘導灯設備、コンセント設備、雷保護設備に細分化される。
弱電設備は弱電設備、呼び出し表示・インターホン設備、ITV設備放送設備、入退管理設備、自火報設備に細分化される。

電気設備 強電設備 受変電設備
動力設備
電灯設備
非常照明・誘導灯設備
コンセント設備
雷保護設備
弱電設備 弱電設備
呼び出し表示・インターホン設備
ITV設備
放送設備
入退管理設備
自火報設備

強電設備

受変電設備

受変電設備とは、電力会社から送電される高電圧の電気(通常6,600V)を、建物や施設で使用可能な100Vまたは200Vなどに変圧する設備である。
受変電設備は大きく「オープン型」と「キュービクル型」に大別される。
オープン型は主に屋内に設置される開放式構造である。
キュービクル型は機器を金属製の箱に収めたコンパクトな構造で、屋外設置も可能である。
さらに設置環境に応じて、塩害対策を施した「屋外型(塩害仕様)」も存在する。
主な構成機器には、送電を遮断・接続する断路器(DS)、過電流を遮断する真空遮断器(VCB)、負荷を持った状態で開閉可能な高圧交流負荷開閉器(LBS)、電圧を変換する変圧器(トランス)、力率改善のための高圧進相コンデンサ(SC)、および高調波抑制のための直列リアクトル(SR)などがある。
これらの機器が連携して、安全かつ効率的に電力を供給する重要な役割を果たす。

幹線設備

幹線設備とは、受変電設備から建物内の各分電盤や動力盤へ電力を供給するための主要な配線経路を構成する設備である。
電力を安定して各所に届けるため、幹線には使用するケーブルの種類や太さ、配線距離(ケーブル亘長)に応じて適切な設計が求められる。
幹線設備を計画する際は一般的に「電路計算書」が用いられ、使用する機器の容量や負荷の種類に基づいて、許容電流値(ケーブルが安全に流せる最大電流)や許容電圧降下(配線距離に応じた電圧低下の限度)などを算出する。
適切な幹線設計を行わないと、過熱による火災リスクや電圧不足による機器の誤作動を招く可能性がある。

動力設備

動力設備とは、エレベーター、ポンプ、空調機などの三相電源を必要とする機器に対して、電源を供給し制御するための設備である。
動力設備では、動力盤を中心に各機器に対して適切な配線と保護装置(ブレーカ)を設ける。
動力盤を計画する際は、機器が起動時や運転時に必要とする「最大電流値」や、長時間の運転を想定した「規約電流値(定格電流)」に基づき、適切なブレーカサイズを選定することが重要である。
ブレーカが小さすぎると頻繁なトリップを引き起こす。
一方でブレーカーが大きすぎると過電流時の保護が不十分となる。
動力設備は高出力機器が多く接続される。
そのため、負荷バランスや電圧降下にも注意が必要である。

電灯設備

電灯設備とは、作業場所や通路、居室などに照明器具を設置し、必要な明るさ(照度)を確保するための設備である。
電灯設備では、使用目的に応じた「照度計算書」を作成し、目標とする照度(単位:ルクス[Lx])を達成するために、照明器具の明るさ(光束:ルーメン[lm])や配置を検討する。
現在の主流は省エネ性・長寿命に優れたLED照明だが、、一部では高周波点灯形蛍光灯(Hf)も使用されている。
また、照明の制御には「人感センサー」を利用して省エネを図ることが多い。
配線方式としては、スイッチから電源線がそのまま器具に行く「フル2線式」や、従来の「片切り」・「両切り」スイッチ方式が使われる。

非常照明・誘導灯設備

非常照明・誘導灯設備とは、停電時や火災などの災害時に、建物内の人々が安全に避難できるように設けられる設備である。
非常照明は、停電時にも一定時間点灯し続ける照明器具で、通路や階段など避難経路の明るさを確保する。
一方、誘導灯は避難口や避難方向を示す表示灯である。
その表示灯により避難者を適切な方向へ導く役割を持つ。
これらの設備は、建築基準法および消防法により設置が義務づけられている。
各種法律では、建物の用途や規模、階数に応じて設置基準や照度、点灯時間などが細かく規定されている。
また、定期的な点検や非常用電源(内蔵バッテリーなど)の確認も必要である。
非常照明・誘導灯設備は、災害時に人命を守るための重要な安全対策の一つである。
そのため、法令に準拠した確実な設計・施工・維持管理が求められる。

コンセント設備

コンセント設備とは、パソコンや家電、OA機器などの単相電源を必要とする機器に対して電源を供給するための設備である。
建物内の各所に設置されたコンセントを通じて電力を供給し、利便性と安全性を両立する設計が求められる。
ブレーカには、過電流を遮断するMCCB(配線用遮断器)や、漏電を検出して遮断するELCB(漏電遮断器)が使用され、安全対策として重要な役割を果たす。
特に電子レンジやエアコンなど、比較的消費電力の大きい機器には、他の負荷と共有しない「単独回路(専用回路)」として設けることが一般的である。
これにより、過負荷や電圧降下の防止、回路の安定性が確保される。

雷保護設備

雷保護設備とは、落雷による電気的被害から建物や内部機器、人命を守るために設けられる設備である。
建物への直撃雷や誘導雷による過電圧から保護するため、避雷針(受雷部)、引下げ導体、接地極などを用いて雷電流を安全に大地へ逃がす。
日本では、建築基準法に基づき、高さが一定以上の建築物などには雷保護設備の設置が義務付けられている。
雷保護設備の設計や施工に関しては、かつては「旧JIS(C 1401)」が用いられていた。
しかし、現在は国際規格に準拠した「新JIS(JIS A 4201)」が適用されている。
新JISでは、雷保護レベルの区分や保護範囲の数値的評価が明確になっている。
一方でリスク評価に基づく設置判断が求められる。

弱電設備

弱電設備

弱電設備(TEL、LAN、TV設備)は、電話回線やインターネット接続、テレビ放送など、情報通信に関わる信号を建物内で適切に分配・伝送するための設備である。
電話・LAN設備では、空配管を用いた配線計画が基本である。
そのため、将来の配線変更にも柔軟に対応可能することが求められる。

LAN配線には通信速度とノイズ耐性に優れたCAT6ケーブルが主流である。
HUBやルーター、光成端箱(光回線の引込先)などと組み合わせてネットワークを構築する。

TV設備では、UHFアンテナで受信した地上デジタル放送や4K放送を、分配器・分岐器を用いて各室へ均等に送信する
受信レベルを安定させるためにはブースター(増幅器)の設置も必要である。

入退管理・インターホン設備

入退管理・インターホン設備は、建物や各室への入退室を制御し、安全性と利便性を確保するための設備である。
入退管理設備として、認証装置(カードリーダー、テンキー、指紋・顔認証)が設置される。
認証装置によって、許可された人物だけが特定エリアに立ち入れるよう制御する。
これにより、情報漏洩や不正侵入のリスクを低減することが可能となる。
また、オフィスや重要施設のセキュリティを確保できる。

一方、インターホン設備は、外部からの来訪者と建物内部の利用者との間で通話を行い、必要に応じて入館を許可するためのシステムである。
形式としては、全ての端末で双方向通話が可能な「相互通話型」や、親機と子機に分かれた「親子型」があり、用途や建物規模に応じて選定される。
インターホンはセキュリティのみならず、施設内の連絡手段としても機能する。
そのため、集合住宅やオフィスビル、病院など幅広い場面で活用される。

放送設備

放送設備とは、建物内で音声による情報伝達を行うための設備で、日常的な案内や緊急時の避難誘導などに使用される。
大きく分けて「一般放送」と「非常放送」に分類され、一般放送では館内BGMや業務案内、呼び出し放送などが行われる。
一方、非常放送は火災や災害時に自動または手動で起動し、避難誘導などの緊急情報を明確に伝達する役割を担う。
非常放送設備は消防法に基づき、火災報知設備と連動することが求められ、火災時には一般放送を強制的に停止して非常放送を優先させる仕組みが必要である。
この切り替えに使用されるのが「カットリレー」と呼ばれる装置で、非常時に一般放送回路を遮断し、確実に非常放送の音声を流す制御を行う。

ITV設備

ITV設備(監視カメラ設備)とは、建物内や敷地境界、出入口などを常時監視・記録し、防犯や安全管理を目的とした映像監視システムである。
近年では、アナログカメラから高画質・高機能な「ネットワークカメラ(IPカメラ)」への移行が進んでおり、映像はLAN配線を通じて録画装置やモニターに送信される。
既存のアナログ配線を活かす場合には、「同軸変換器」を用いて、アナログ信号をネットワーク対応に変換することも可能である。

録画映像は、ハードディスクを内蔵した録画装置(NVRなど)に保存され、保存期間は「録画容量」と録画設定(解像度、フレーム数、録画モードなど)により決定される。
多くの現場では、1〜4週間程度の録画保存が一般的です。ITV設備は、不審者の早期発見やトラブル発生時の映像記録として有効であり、近年はAIによる動体検知や人物識別機能を備えたシステムも増えている。

自動火災報知設備

自動火災報知設備とは、火災の発生をいち早く検知し、建物内外に警報を発することで、被害の拡大を防ぐための設備である。
感知器(煙感知器や熱感知器)が煙や熱を検知すると、受信機を介してベルや音声による警報が発信され、関係者に火災発生を即時に知らせる。
また、消防署へ自動通報する機能を備えたものもある。

この設備は消防法により、建物の用途・規模・階数に応じて設置が義務付けられており、特に不特定多数の人が利用する施設(病院、学校、商業施設など)では必須です。設計にあたっては、感知器の種類や設置間隔、配線方式(主に多重伝送方式やリレー方式)などの技術的基準に加え、定期的な点検や報告も求められる。
自動火災報知設備は、火災初期段階での迅速な対応を可能にし、人命と財産を守るための最も基本的かつ重要な防災設備である。

まとめ

今回は電気設備の各種設備について紹介した。
電気設備の全体像を意識したうえで、各種設備の計画を行うことで、一貫した計画を行うことができるだろう。

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